【東員駅】
西桑名から9.7キロ。穴太との駅間距離は1.7キロ。六把野駅と北大社駅と統合しその中間地点に新設された駅だ。
運転指令室と乗務員宿舎を併設した大きな駅で指令室は全ての駅と信号施設・踏切などの集中監視・列車無線の管理などを行う北勢線運行の中枢である。
駅前ロータリーと駐車場は広く道路向こうには東員消防署がある。
構内は島式ホーム1面の2線構造。この駅で乗務員が交代し時に阿下喜方にある北大社車庫への入庫のため車両交換も行われる。
下り線横には留置線が設けられ交換車両が置かれている。
桑名方。上下線のいずれにも2灯式(YR)の上り出発信号機がある。
下り線側の留置線奥には可愛らしい保線車両も留置され横の空き地にはバラストやレールが置かれ小さいながらも保線基地なのだ。762mmの軽便鉄道線の保線車両は四日市あすなろう鉄道にはなく全長20キロ超で線路沿いに広い道路がない北勢線ならではだ。
西桑名方。安全側線を有し上下列車の同時進入が可能な駅だ。
阿下喜方。下り線にも安全側線を兼ねた留置線が設けられここに交換車両が一旦引き上げられる。下り阿下喜行き列車が到着すると乗客を降ろしそのまま先の北大社車庫に向かう。その後引き上げ線で待機していた列車が下り線に入線し乗客を乗せて出発していくのだ。こちら側にも上下線に3灯式(GYR)の下り出発信号機がある。構内線路の分岐器は全て電気転轍機による。
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≪東員駅ー大泉駅間≫
《北大社駅跡・信号所・車両区》
別稿で記録
≪大木駅跡≫
近鉄時代に廃駅となっている。
桑名方に向かって線路左側の空き地が駅跡だ。
大木駅配線
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北大社車両区の阿下喜寄りに戸上川に架かる立派な茶屋川橋梁がある。
一番阿下喜寄りの橋脚は他の石積み橋脚と異なるコンクリート製で増水により傾いたため新たに作り直されたものだ。
阿下喜行き下り列車前面から。
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≪大泉東駅跡≫
三岐鉄道に事業譲渡後廃止された。かつては交換可能駅で貨物側線もあった。
阿下喜方線路右側の空き地がホーム跡で曲線改良も行われた。廃駅後利用者の便宜を目的に作られた線路沿いの道を進むと大泉駅に至る。
大泉東駅構内のなかなか複雑な配線
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【大泉駅】
西桑名から12.4キロ。東員駅との駅間距離は2・7キロもあるがかつて東員駅との間に北大社駅(現北大社車両区)と大木駅(廃駅)と大泉東駅(廃駅)があった。
この駅も大泉東駅と長宮駅(いずれも廃駅)を統廃合しその中間部に新設された駅だ。
駐車場のある交換可能駅で農産物販売所が隣接している。
島式ホーム1面の交換可能駅。
桑名方。上下線両方に3灯式(GYR)上り出発信号機がある。上り線には安全側線がある。夜間22時37分着の当駅止まりの列車があり折り返し22時41分発の西桑名行き(最終列車・西桑名23時11分着)が設定されている。
阿下喜方。安全側線があり下り出発信号機は2灯式である。この駅も分岐器は電気転轍機による。
下り阿下喜行き列車。その隣には青い花が咲き乱れている(4月)。
ネモフィラという花で沢山の人が撮影や鑑賞に来ていた。
ところで・・
構内の線路を見ると狭軌用枕木が混在していた。さすがに特殊狭軌用PC枕木はないんだろうなあ。
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≪大泉駅―蘇原駅間≫
≪長宮駅跡≫
三岐鉄道へ事業譲渡後廃止された。
駅跡は線路左側で拡幅された道路に取り込まれている。
桑名方を見る。線路右側の空き地が駅跡の一部だ。
そして左側には公園があるのだが・・
隣接する小学校から直接渡れる小さな踏切があり公園内に鳥居が建っているがお社はどこ??
そして線路近くの公園内には「ながみや」駅名標が保存されている。
長宮駅配線
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≪畑新田駅跡≫
近鉄時代に廃止されている。
桑名方を見て左側の空き地が駅跡。
畑新田駅構内配線
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【楚原駅】
西桑名から14.4キロ。大泉から12.4キロで駅間距離は2キロもある。但し大泉との間には廃駅となった長宮駅と畑新田駅があった。
近鉄時代に新築された有人駅で広くはないが駅前広場にはコミュニティーバスの停留場がある。
多くの北勢線駅と同じくこの駅に至るには狭い道路を通らねばならない。
相対式ホーム2面2線の構造である。
阿下喜方。
桑名方。こちら側では下り線側にも2灯式上り出発信号機がある。分岐部には安全側線がなくスプリングポイントである。この楚原駅止まりの列車が多く設定されており阿下喜行きと共に西桑名―蘇原間はほぼ30分に1本の運行がある。
ところで・・
下り線側にはかつて留置側線があったであろう空き地がある。これは1914年(大正3年)北勢鉄道として開業した際の終着駅だったからであろう。
また・・
この駅では大勢の高校生の利用があり下りホーム阿下喜側には簡易な出入り口が残っているが運転士さんの話によれば改札が自動化される前はここも利用されていたらしい。
駅への進入路は狭いながらも乗客用の駐車場が設けられている。
かつての楚原駅構内配線
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蘇原駅で特筆に値するのは・・
桑名方にある33.3‰の急勾配である。北勢線には各所に緩急勾配がありその多くは最大25‰であり路線上最急勾配がこの楚原駅桑名方にある。
蘇原駅手前の急勾配を登る阿下喜行き下り列車。
急勾配を登って楚原駅に侵入する下り阿下喜行き列車。
急勾配を下って西桑名へ向かう上り列車。ここは小さな谷間で上下いずれも一旦急勾配を下りても直ぐに再度33.3‰の勾配を登ることになり急勾配区間は短くちょっとの力行で通過できる。
追記:運転士さんの話によれば・・楚原駅は交換可能配線ながらどちら側にも安全側線がないため同時進入は出来ない。例えば先に上り列車が進入しつつあれば勾配区間にさしかかっている対抗下り列車側の構内信号は「赤」! その後黄色現示で構内に進入しようと上り勾配に臨む下り列車は相当手前で停止現示を確認し上り勾配途中で停車することがないよう充分気を付けるそうだ。確かに編成が1M2Tや1M3Tだからまして超満員だったら(まあそれはないだろうけど・・)相当ヤバイことになるかも。現役運転士さんならではの話だった。
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≪楚原駅―麻生田駅間≫
この区間も見所が多い。
≪めがね橋とねじり橋≫
県道から直ぐに見通せる場所にそれはある。
県道からは農道の様な細い道へ入り神社横の駐車場に車を停める。
やはり勝手気ままに車を停めるふとどき者がいるようだ。
めがね橋を渡る上り西桑名行き(上)と1M3Tの下り阿下喜行き(下)。楚原駅~阿下喜駅区間は日中一時間に上下1本だから撮影は気長に待たねばならない。しかし上り電車は楚原駅で下り電車と交換するから上り列車を撮った後しばらくすれば下り列車がやって来る。
明知川に架かる「明知川拱橋」(きょうきょう:アーチの意)と言うのだそうだ。
大正5年竣工の珍しいコンクリートブロック製で土木学会の土木遺産に登録されている。橋長は19.8m。
阿下喜行き下り列車の前面から見ためがね橋。幅狭いなあ・・。
そしてめがね橋から230m桑名寄りにねじり橋がある。
細い市道から別れる広めの農道みたいな向こうに見てきた!!
川に架かる市道の柵には「めがね橋」の案内板が!
おおおお! これは素晴らしい!!
めがね橋と同様大正5年竣工の六把野井水(いすい)と斜めに交差するコンクリートブロック製で確かにねじれてる!! 六把野井水拱橋と呼ばれ全長9.1m。
土木遺産登録標。
阿下喜行き下り列車前面から見たねじり橋。これも幅が狭いなあ。
ところで・・
ねじり橋~めがね橋を通る築堤は勾配になっている。
下り阿下喜行き列車の横に25‰を表示する勾配標があり結構な急勾配なのだ。
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≪半径80mの急曲線≫
ここも有名な撮影場所だ。
ねじり橋・めがね橋の阿下喜寄りにあるこの急カーブは画面手前にある県道の跨線橋から俯瞰できる。
神社駐車場から踏切に向かって坂を上ると急カーブの様子がよく分かる。
この踏切は下笠田八幡神社専用だが何も祭事のない平日この踏切を渡る人は何人いるのかなあ・・。
踏切へ至る坂道の反対側には階段が設けられており確かにこの踏切は参道のためにあることが分かる。
桑名方を観る。
神社前の踏切から阿下喜方を観る。
西桑名行き電車がやってきた・・。
フランジとレールの軋み音をあげながら低速で通過していく。駐車場には撮り鉄氏たちの車が! ドローンも飛んでましたよ。
ふと曲線部の外側レールの内側を観ると・・
帯状の銀白色の着色が・・。よくよく観察するとなんとこれは鉄粉だった!! 今まで何度もここを訪れているが初めて発見した。これじゃあレールもフランジもすり減るよなあ・・まあそれほどの急曲線なんだ。
ところでこの曲線の半径は・・
ちょうど線路わきに曲線標があったので ”パシャリ!” 帰宅後標示を確認したらなんと一番重要な曲線半径が写ってないじゃないか!! 線路横の小道から撮影したんだけれども半径数値は線路側の面に書かれているのをすっかり忘れていた。
そのため・・
改めて日を変えての出直し!。しかし撮るべき目標は線路側! どうやって撮影出来るかなあ・・線路内に立ち入るなんて絶対出来ないし。よくよく考えた結果神社側から撮れるかもと神社敷地の端っこまで行ってみたら「おおお! 撮れる撮れる!!」
その結果この曲線は半径80m・カント47mm・スラック12mmと判明した。確かに相当な急曲線だわ。
この曲線部を俯瞰できる県道が直ぐそばにありその下を潜るトンネルから線路側を撮影してみたところ・・
「トンネルを抜けるとそこは北勢線だった」