485系の特急と旧型客車。如何にも「地方都市の駅」的な佇まいであり光景のように見えますが、実はここ、上野駅。

上野駅全盛の頃を知らない世代からすればおよそ信じられないと思いますが、これが日常でした。

 

上野東京ラインの開業によって完全に “中間駅” と化してしまった上野駅ですが、東北・上越新幹線が開業するまでは文字通り、「北の玄関口」でした。それを如実に表すかのように、東北、上信越、北陸方面に向かう長距離列車が踵を接して行き交っていました。上野駅がどんだけ凄かったのかは、昨年のGWに特集という形でお送りしましたが、特にオンシーズンの13~20番線の地平ホームは旅行客、帰省客、一部通勤客で終日ごった返していました。

 

東北・上越新幹線の工事に伴って20番線は昭和53年10月に、19番線は昭和57年11月にそれぞれ使用停止になりましたが、撮影が昭和51年(確か)ということで、20番線に限って言えば晩年の姿と言えます。

では、写っている列車はそれぞれ何なのか? 時刻表を紐解いて調べましたら、多少時間はかかりましたが判明しました。

485系の方は14時45分に到着した上り「やまびこ2号(34M)」で、20番線の客車列車は上野駅を15時22分に発車する常磐線の平(→いわき)行き普通列車(425レ)です。

客車の貫通扉が開いているということは、尾久からの推進回送で上野駅に入線したばっかのところを撮ったんでしょうね。

 

上野に到着した「やまびこ」はそのまま折り返すのではなくて一旦、尾久か東大宮、もしくは上野駅構内の電留線で引き上げた後、16時12分に再び19番線に入線して下り「やまびこ5号(39M)」として盛岡に向かうものと思われます。15時以降、青森運転所(盛アオ)所管の485系特急は「やまびこ5号」の他、上越・羽越線経由で秋田へ行く下り「いなほ2号(2043M)」しかなく、しかも「いなほ2号」は18番線発車だし、十数分ですが19番線に停車中の「やまびこ2号」とバッティングするし、「いなほ」説は消えます。あと、16時ちょうどに発車する下り「はつかり5号(1M)」は583系を使用するので、これも却下になります。以上の理由で「やまびこ5号」説が有力となります。盛岡着は22時38分。

 

20番線に入線した425レが平に着くのは19時49分。上野-平間を4時間半かけて走ります。

因みに現在、東京方面(品川、上野)発のいわき行きは無くなっちゃったみたいですね。上野東京ラインの関係でしょうか、運転系統が分離されたようで、どんなに頑張っても高萩がリミットのようです。

 

昭和57年11まで上野には客車普通列車も乗り入れており、電車全盛の時代にノスタルジックな空気を醸していましたが、そこは上野駅だけに、 “東北” の雰囲気が伝わってきました。

今の上野駅は高架ホームが賑やかで、地平ホームには昔日ほど列車は入線してきません。

図体(駅の規模)の割にその雰囲気すら醸せない寂しい駅になってしまいました。

 

 

【画像提供】

ヤ様

【参考文献・引用】

鉄道ピクトリアルNo.782 (電気車研究会社 刊)

季刊 j train Vol.6 (イカロス出版社 刊)

国鉄監修・交通公社の時刻表 1978年8月号 (日本交通公社 刊)

JR時刻表2023年3月号(交通新聞社 刊)