季節外れのサンタと最初のお料理
四国まんなか千年ものがたりそらの郷紀行は琴平を発車しました。
この先時刻表の上では終点の大歩危まで停車しません。
さて、この「そらの郷紀行」ですが、JR四国の公式サイトにはこんな文があります。
徳島県の人々は自分たちの住んでいる地域より高い所を「そら」と言い、徳島県西部の険しい山岳、その山とともにある集落、人々の暮らしがいつしか「そらの郷」と呼ばれるようになりました。このことから、「そらの郷」へと向かう列車の愛称を「そらの郷紀行」と名付けました。
―公式サイトより
ここから列車は四国山地へと分け入り、「そらの郷」へ向けて走っていくのです。
発車したところで記念乗車証をいただきました。
四国まんなか千年ものがたりが吉野川橋梁を走るところを描いています。
「高松車掌区」のスタンプもかわいいですね~
別注文のドリンクも届きました。
今回は「小豆島オリーブサイダー」というご当地サイダーがメニューにあったのでそれにしてみました。
グラスにも四国まんなか千年ものがたりのマークが入っていて特別感がありますね。
飲み物が来た頃、列車は讃岐財田に停車しました。
ここは運転停車。ドアは開きません。
なぜかサンタさんがホームから歓迎しています(笑)
う~ん…350日ほど早い気がします。あわてんぼうすぎですね(笑)
停車中に最初のお料理が届きました。
メニューによると…
こちらは冷製料理。
コース名の「讃岐三畜と地元野菜の洋食プレート」の名の通り、地元産食材をたっぷり使ったいろどりあふれるお料理になっていますね。
それでは、いただきます!
どれも美味しいのですが、私が一番好みだったのは、オリーブ地鶏のコンフィ。
みかんソースとの相性が抜群でした!
ちなみにこの料理を提供しているのは金刀比羅宮の寒椿というお店。
寒椿のお料理は東京銀座にある資生堂パーラーが担当しているようなので…
実質つむつきですね!
【きららキャラット1月号】ちうね先生「紡ぐ乙女と大正の月」では旭のお誘いがきっかけで銀座のソーダファウンテンに行くことに…いわゆる「銀ブラ」ってやつ? 初体験に楽しそうな唯月達だけど、女学生が寄り道というのは時代柄なかなかの大冒険のようで…。次号はセンターカラーです! pic.twitter.com/GBd6RDtcGi
— まんがタイムきらら編集部 (@mangatimekirara) November 28, 2019
↑「紡ぐ乙女と大正の月」資生堂パーラー回
食べ始めたところで讃岐財田を発車。
先ほどのサンタさんと駅隣りのさぬき岡本焼展示場の方が手を振ってお見送りしてくれました!
秘境駅・坪尻
讃岐財田を出た列車は本格的な山越えに入ります。
列車が越えていくのは香川と徳島の県境でもある猪ノ鼻峠。
この峠は四国三大難所のひとつとされていました。
列車はその難所をトンネルで抜けていきます。
県境にある猪鼻トンネル(3845m)です。
トンネルに入ると照明が車内を照らしてより一層いい雰囲気になりますね~
トンネルを出た先はすぐ橋梁。
その橋梁を渡るとき、左側に大きなトンネルとそこから流れ出る滝の姿が見えました。
車内放送でこのトンネルの紹介がありました。
実はこのトンネル、土讃線にはなくてはならない存在なのです。
長さが4km弱のトンネルこそあるものの、それだけではこの峠を越えられなかった土讃線。
三大難所の名の通り周囲は急峻な山ばかり。線路を通せそうな場所なんてありません。
そこで考えられたのがこの峠付近を流れる州津川を利用すること。
新たに導水トンネルを掘り、川の流れを移設して元あった川底を埋め立てることによって線路用地を確保したのです。
導水トンネルはこの付近に3箇所掘られています。
いかに難所だったかわかりますね…
導水トンネルを見てもう一つトンネルを越えると駅のホームが現れました。
少し低い位置にあるようですね…
列車はそのままホームを通り過ぎ、引き上げ線に入って停車しました。
車窓からは滝が見えています。
ここで「運転士が前から一番後ろの運転台に移動するので拍手でお見送りください」という車内放送が流れました。
ほどなくして乗客の拍手に出迎えられて運転士が登場、そのまま後ろの運転台に向かいました。
しばらくすると列車は後ろ向きに発車。
スイッチバックです。
スイッチバックした列車はホームのある線路へと入り、停車。
ドアが空いたので降りてみました。
この駅の名前は坪尻。
徳島県最初の駅です。
その名前に聞き覚えのある方もいるでしょう。
というのもこの駅、なんと秘境駅ランキングで毎回上位に位置する超秘境駅なのです。
こちらはこの駅の駅前。
お店どころか人家さえ全く見えない駅前。
それどころか…
「🐍マムシに注意」
そう、出るのです。あの日本でもっともポピュラーな毒蛇が。
この駅につながる道はマムシの恐怖に怯えながら歩く自動車の入れない山道しかありません。
列車以外での到達が難しいことが秘境駅たる所以です。
行きにくいこともあって利用客は少なく、2019年の1日あたり平均乗降客数は2人。
…むしろこの駅前の光景を見たらなんで2人「も」利用客がいるのか不思議に思えてきます。
利用客数を反映してか一部の普通列車はこの駅を通過するため、時刻表はご覧の通り。
現在11時半くらいですが、まだ本日の大歩危方面の始発がやってきていません。
※四国まんなか千年ものがたりは運転停車扱い。坪尻での乗降はできません。
列車でもそれ以外でも到達が難しい坪尻駅。
でもそんな秘境駅だからこそ鉄道ファンにはかえって人気を博しています。
駅舎の中には駅ノートがありこの駅に降り立った記念に鉄道ファンたちが書き込んでいくようです。
JR四国もこの人気にあやかろうとこうして観光列車を停車させて見学できる時間を設けています。
普通列車で降り立つと待ち時間が悲惨なことになるのでお手軽に坪尻駅に降り立つことができるのはありがたいですね。
四国まんなか千年ものがたりが止まるようになったので列車のロゴマークが掲げられていました。
ちなみにこの坪尻駅がある場所も昔は川底でした。
坪尻駅(当時は信号場)を作るべくここでも川が移設されています。
そろそろ発車時刻が近づいてきたので車内に戻ります。
2号車ではちょうど次の料理の準備ができていました。
自席に戻ると…なにやら大きな紙がテーブルにかぶせてあります。
停車中にホコリが入らないようにとの配慮でしょうか?
細やかな気遣いが嬉しいですね。
笑顔一番。そのとおりです。
11:41、列車は坪尻を発車しました。
メインディッシュとかかし隊
10分の停車を終え、駅員に見送られて阿波池田を発車しました。
犬の駅とたぬき駅
列車は阿波池田の隣、三縄に停車しました。
1分停車、ドアは開きません。
ホームでは犬を抱っこした男性が見送ってくれています。
この犬、実はこの三縄駅の駅長なのだとか。
名前はマロというそうです。
マロ駅長、ちょっと眠そう…?
三縄駅の見どころはもう一つあって、それは貨物用のホームと引込線がそのまま残っていること。
現在では使われていないようですが、国鉄時代の様子を今にとどめています。
三縄駅を出たところで食後のコーヒーとデザートタイム。
デザートは和三盆クッキーとマドレーヌでした。
列車が速度を落とし始めました。
見えてきたのは大きなたぬきのイラスト。
ここは阿波川口駅です。
列車が低速で通過していくなか、ホームではたぬきのきぐるみを来た人々がこちらに手を振っています!
このそらの郷紀行は停車しませんが、復路のしあわせの郷紀行は阿波川口駅に停車します。
たぬき駅、楽しみですね。
大歩危小歩危の景色を眺めて
コーヒーも飲み終わり、購入したグッズやドリンク類の精算をおこなったところで列車はいよいよ旅のハイライト、大歩危小歩危に差し掛かります。
多度津側からは小歩危→大歩危の順に進んでいきます。
さっそく列車の車窓には小歩危峡の渓谷が映し出されました!
大歩危小歩危は約2億年の時をかけて吉野川が四国山地の山々を削ることによって生まれた全長約8kmに及ぶ渓谷です。
その変わった名前は断崖を意味する昔の言葉「歩危(ほけ、ほき。崩壊とも表記)」に由来するそうです。
「大股で歩くと危ない」というのは俗説でしかないようですが、何にせよ歩くのに危険な場所には違いありません。
列車は奇岩・巨岩が連なる小歩危峡の脇を走っていきます。
しばらくするとホテルが見えてきて…
バルコニーからスタッフが手を振っているのが見えました!
さらにその先の道の駅大歩危でも…
道の駅のスタッフ・観光客、そしてなぜかかっぱが手を振っています(笑)
ここまで来るとそらの郷紀行の旅もあと少し。
小歩危と大歩危を通り抜けた列車はついに12:47、終点の大歩危に到着しました!