2022年の暮れも押し迫った大晦日のこと、この日はお昼過ぎまで札幌に滞在していました

新千歳空港から仙台空港を経由して、仙台駅からは東北新幹線「やまびこ・つばさ」154号に乗り込み、19時48分に上野駅へ降り立ちました

 

上野駅から今回の旅の目的の一つである651系に乗車して高崎駅まで向かい、大晦日の移動を

ちなみに、新千歳空港から直接羽田空港へ向かわずに一旦仙台空港に降り立ったのは、こちらも数年以内に引退が予想されるE2・E3系に乗っておきたかったからに他なりません

 

 

上野駅のコンコースにはJR東日本の新幹線各形式に彩られたポスターがありました

辛うじてE3系の姿は確認できるものの、既にそこにE2系の姿はありません

 

E2系が表記されていないのは、ただ単にスペースの都合なのかもしれませんが、同車の将来を暗示しているような気がしてなりません

E2系が「はやて」として活躍していたのも、ずいぶん昔の話になってしまいましたね

 

 

新幹線と比べて、世代交代のスピードが穏やかな在来線であっても、時の流れに抗うことはできません

1989年3月のダイヤ改正時に「タキシードボディのすごいヤツ」というキャッチコピーを引っ提げて、JR在来線初の130㎞/h運転を実現した651系も今度のダイヤ改正で引退することになりました

 

JR東日本から1月20日に発表された春の臨時列車の運行計画には、どこを探しても651系の文字は見当たらず、ダイヤ改正以降の651系の動きは不透明ですが、JR東日本初の特急形車両ということで、何らかのイベントが企画されてもよさそうなところです

 

なお、4月1・2日に東大宮操車場にて、651系を4編成並べた撮影会は開催されることになっています

詳細は下記URLからどうぞ

https://www.jreast.co.jp/press/2022/omiya/20230309_o01.pdf

 

 

ということで、例によって前置きが長くなってしまいましたが、上野駅14番のりばから旅のスタートです

 

651系のシンボルともいえる先頭車両のLEDヘッドマークですが、引退を前にご機嫌斜めなのか調子が悪く、1号車側のヘッドマークが”回送”表示なっており、7号車側もご覧の通り列車名が表示されるはずのスペースがぽっかり空いています

 

 

上野駅地平ホームに佇むシルキーホワイトの車体は凛としています

常磐線で活躍していた頃から内外装にほとんど手は加えられていませんが、高崎線系統への転用にあたって、窓下にオレンジのラインが追加されています

 

なお、転用に際して、パンタグラフがシングルアーム式に交換されているほか、直流区間のみの走行となることから、交流機器については使用停止とする措置がとられています

このため、従来の同車とは異なり、交流区間を走行することはできないことから、高崎線系統で活躍する651系は1000番台として区分されています

 

ちなみに、651系は交直流電車でありながら、分割民営化後の登場ということもあって、60Hzには対応しておらず、当初から50Hz専用車として誕生しました

 

 

本日お世話になる編成は、1989年(平成元年)に川崎重工で製造されたOM207編成(元K102編成)です

元号が昭和から平成へと移り行く中で登場した651系は、新時代を象徴する役目と常磐線特急の重責を背負っての船出となりました

 

JR東日本初の特急形車両として生を受けた651系の歩みは、即ちJR東日本の歩みと軌を一にするといっても過言ではないでしょう

 

 

ロール幕式の行先表示器も最近ではめっきり数を減らしました

風の噂では、幕を回すモーターの製造が終わったらしく、その多くはLEDへの換装が進んでおり、JR東日本の特急形車両に限れば185系と651系でしか見ることはできません

 

 

E257系の投入により、グリーン車も無くなるので、号車札も記録しておきました

23年春のダイヤ改正では、651系が撤退すると同時に「スワローあかぎ」が「あかぎ」へ統合され、「草津」は「草津・四万」へ愛称が変更となります

 

せっかくなので、列車名が変更となる「スワローあかぎ」か、もしくは「草津」に乗りたかったところです

ただ、生憎ながら大晦日は休日ダイヤなので、そもそも「スワローあかぎ」は運行しておらず、温泉へ向かう行楽客が主眼となる「草津」は夜間帯の設定がありません

 

ということで、必然的に「あかぎ」への乗車となりますが、引退前にもう1度651系へ乗れたことに感謝せねばなりません

 

乗降ドア横には、赤字に白抜き文字で”特急 Limited Express”と書かれたステッカーが誇らしげに掲出されています

その色合いは、偉大な先輩である485系のサボを彷彿とさせるものです

 

 

 

651系への最後の乗車ということで、迷わずにグリーン車を選びました

実は、651系への乗車は今回が初めてではなく、19年3月に赤羽から高崎まで「草津」のグリーン車に乗ったことがありますが、ブログで紹介するのをサボっていたので、記事として登場するのは今回が初めてです

 

 

 

それでは、魅惑のグリーン車へ

電球色の照明に彩られた空間に、大型のハイバックシートが3アブレストで並ぶ室内は、思わず息を吞む美しさです

 

直系の後輩であるE657系の「普通車との差異を見つけるのが難しい」グリーン車と比べると、JR東日本は進むべき道をどこで踏み外してしまったのだろうかと思わずにはいられません

 

 

グリーン車のシートピッチは国鉄~JRの車両では標準ともいえる1,160㎜で、これは従来の485系から変わりありませんが、3アブレスト配置の採用により、居住性は大幅に改善されています

 

登場当初は、オーディオパネルが設置されていたほか、アームレスト内には衛星放送を受信できる小型の液晶テレビが格納されていましたが、現在はいずれも撤去されています

 

 

同社のグリーン車にしては珍しく、非常に電球色の強い照明が使われているので、WBの設定を変えて撮影してみました

昼間に乗車した場合は、こちらのイメージに近いかと思われます

 

 

2001年頃に行われた改造の結果、登場当初とは座席のフォルムがずいぶんと変わってしまいましたが、もともとはJR四国の2000系気動車に搭載されていた座席の親戚筋にあたります

2000系気動車はいまも現役バリバリで四国の鉄路を爆走していますが、グリーン車は一足早く姿を消しました

 

 

登場当初からデチューンされたとはいえ、重厚感たっぷりの座り心地は健在で、実際に着座してみると、見た目を裏切らない寛ぎが約束されています

バックレストの形状…特にランバーサポート部分…が優れており、きちんと背中に迫ってきます

 

そして、日除けがブラインドではなく、プリーツカーテンなのも泣けてくるではありませんか

やはり、グリーン車たるもの、こうでなくてはと認識させてくれます

 

グリーン料金を裏切らない完成度の高いアコモデーションで、きっとあなたも虜になるに違いありません

そう書いたところで、おそらくこの座席に乗れる機会はもう無さそうですが…

 

N700系やE5系といった最近の車両と比べても、座面のクッション材をケチっている印象はなく、適度にフカフカで臀部を優しく受け止めてくれます

JR発足直後で、なおかつバブル景気という時代背景があるにせよ、30年以上前に設計された座席でありながら、現代の車両に負けるとも劣らない快適性です

 

651系の引退により、JR東日本の在来線特急列車のグリーン車で3アブレスト配置なのは、「サフィール踊り子」と「いなほ」の2列車をだけになりました

 

 

フットレストは固定式で、角度を変えることはできませんが、靴を脱いでリラックスできるようにきちんとモケット面が用意されています

こちらもE657系やE353系では、貧相なバー型に退化しています

 

 

網棚には読書灯も設置されており、不足しがちな照度を補っています

JR東日本の在来線特急では、2000年代前半に登場したE257系やE751系以降、グリーン車であっても読書灯は省略されているので、付いているだけでも偉大です

 

 

客室内が従来の485系から大幅にグレードアップしている一方で、デッキ周辺はそこはかとなく昭和テイストが漂っています

腐食しているのか、それとも長年の活躍で汚れているのか、ずいぶん床が黒ずんでいます

 

 

デッキにぽっかりと空いたいかにも”らしい”スペースは、かつてカード式公衆電話が鎮座していました

 

 

洗面台は温度調整が可能な自動水栓が採用されています

今では当たり前ですが、デビュー当時は「手をかざせば水が出てくる」は画期的だったことでしょう

 

 

 

651系では、基本編成(7両編成)にトイレ・洗面所が4ヶ所ずつ設置されています

同車のトイレで何と言って特筆されるのは、普通車も含めてすべてのトイレに洋式が採用されていることと、在来線特急列車では初めて男性用小便所が設置されたことではないでしょうか?

 

同世代に当たるキハ85系はグリーン車のみ洋式トイレで、東武100系も半数が和式トイレだった時代背景を考えると、ずいぶん思い切った判断だったといえます

 

ただし、ステンレス製の便器で足踏みペダル式水洗装置の組み合わせに時代を感じずにはいられません

もちろん、ウォシュレットのような気の利いたものは望むべくもなく、便座に座るとひんやりとした感触がダイレクトにお尻に伝わってきます

 

 

グリーン車だけではなく、ここで普通車の車内も紹介しておきます

普通車であっても読書灯が設置されているのは、やはりバブルという時代背景の為せる技でしょうか?

 

上野を発車後、終始乗客が管理人を含めて2名だけだったグリーン車とは違い、普通車は自由席を中心に50%ほどの乗車率でした

 

 

 

常磐道を走るライバルの高速バスを念頭に置き、シートピッチは485系の910㎜から970㎜に大きく拡大されましたが、さすがにフットレストは省略されています

E653系では910㎜に先祖帰りしてしまいましたが、ようやくE657系で960㎜に戻りましたね

 

 

上野駅を出発してから1時間24分で、終点の高崎駅に到着しました

新幹線であれば、上野~高崎間を45分で走り切ってしまう上に、本数も「あかぎ」「スワローあかぎ」と比べ物にならないくらい高頻度に運行されています

 

高崎線に馴染みの薄い関西人からすると、一体どういった人たちが「あかぎ」を利用しているのか気になるところですが、おそらく上野と新幹線の停まらない主要駅間のニッチな需要に支えられているのでしょう

 

それにしても、651系然り、キハ85系然り、管理人と同年代に生まれたの車両が姿を消していくは辛いものです

それどころか、キハ281系やE351系のように、年下の車両も引退していくわけで、JR黎明期を彩った花型車両が姿を消していくことに一抹の寂しさを覚えます

 

ブルトレの廃止がひと段落したかと思えば、今度はJR第一世代特急形車両の引退ラッシュが始まった印象を受けますね

キハ85系が「ひだ」の定期運用から撤退するのと時を同じくして651系の引退であり、奇しくも両車ともにTDOの松本哲夫氏の手により生まれた作品です

 

JR東日本の第一世代在来線特急列車群では、既に251系とE351系は現存せず、253系も内外装を大きく変えた1000番台車が僅かに残るのみです

そして、651系も引退となると、自ずと次に”怪しい”のが255系であることは明白です

 

 

隣のホームには211系の上越線・普通水上行きが停車していました

651系の足回りは211系をベースにしており、界磁添加励磁制御により直流モーターを駆動する方式が採用されています

 

よくよく考えてみれば、「VVVFインバータ制御ではない特急形車両」に揺られるのもずいぶん久しぶりなような気がしました

651系については、現時点でラストランイベントなどは予定されていない上に、春臨でも充当列車が見当たりません

 

もしかしたら、このまま全編成廃車になりそうですが、1両くらいは大宮の鉄博に収蔵されてもいいような気がします