実は「西武特集」?~『レイル』125号のご紹介 | 書斎の汽車・電車

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 今回ご紹介する『レイル』125号、1月の末に出た本でして、随分と時間が経ってしまいましたことをまずお詫び申し上げます。しかし、西武鉄道ファンにとっては実に興味深い1冊ですので、遅ればせながら当ブログで取り上げることにしました。

 

 本号の特集は、「保存された鉄道院400形機関車」です。昨年江東区新豊洲の芝浦工大附属中学高等学校に保存された、400形403号蒸気機関車にまつわる記事なのですが、この機関車、西武鉄道4号として、長らく横瀬の車輛基地で保管されていたものですから、西武鉄道ファン諸氏にはすっかりお馴染みと思われます。

 

 メイン記事は「鉄道院403号(西武鉄道4号)機関車の保存」と題し、藤田吾郎氏によってまとめられたこの機関車の来歴です。明治19(1886)年に英国ナスミス・ウィルソンで製造され、鉄道局73号、日本鉄道73号、房総鉄道6号を経て鉄道国有化で鉄道院400形403号となります。大正3(1914)年の川越鉄道への譲渡後は、現在の西武鉄道へと続く各社との長い関わりが始まります。川越鉄道から武蔵水電、帝国電灯、(旧)西武鉄道へという時代、本機は「5号」でした。それが先の大戦中に「4号」に改番されると、戦後の西武鉄道時代は、上武鉄道への貸出時期も含めて4号機でした。廃車は昭和40(1965)年で、ユネスコ村での保存を経て、平成5(1993)年頃から横瀬で保管されてきたようです。

 藤田氏の記事は、この機関車の辿ってきた道のりをわかりやすく解説するとともに、今回の保存に至る過程も詳しく述べられています。記事を補足する形で、保存後の写真や、整備作業中の模様それに現役時代の写真なども多数紹介されています。(西尾克三郎氏の形式写真は相変わらず美しいです)

 

 加えて、レイル編集部所蔵という「昭和12/1937年春 西武鉄道北多磨と川越機関庫」というアルバムも貴重です。現在の多摩川線に貸し出された5号機(当時)のほか、同じくナスミス・ウィルソン製の3号機(現在は保谷で保存)、ブルークス製6号機(休車中)の珍しい写真、川越鉄道以来の2軸客車たちが並んで留置されている写真など、少々状態は悪いのですが、初めて見るものばかりです。

 

 特集記事だけでもお腹いっぱいのところ、「伝説の都市計画と未成線の軌跡 多摩湖鉄道100年の遺産」(ふちい萬麗氏)もまた、西武鉄道ファン必見の記事となっています。現在の西武多摩湖線の前身である多摩湖鉄道について、計画線や未成線も含めて詳しく紹介しています。その内容はいささか著者の推測を含んではいますが、興味深く拝見しました。ナローゲージ時代の山口線も、元をただせば多摩湖鉄道の免許線ということで登場しますし、多摩湖線を彩った赤や黄色の電車たちの写真もふんだんに収録されていますので、西武電車のファンなら満足できるのではないでしょうか。

 

 本号の後半は「ヒギンズ写真の真髄」、カラ-写真で知られるJ.W.ヒギンズ氏ですが、実はモノクロ写真も凄かったんだぞという連載です。今回は静岡県の私鉄を取り上げています。というと、西武とは関係ないかと思いきや、西武ファンとしては油断は出来ません(?)よ。静岡鉄道の清水市内線や、伊豆箱根鉄道軌道線には、(旧)西武鉄道新宿軌道線由来の電車が登場するのですから。

 

 こんな具合に、『レイル』125号、西武鉄道ファンであれば、「頭から尻尾まで」おいしく味わえること請け合いの1冊です。未読の方はぜひお手にとっていただければと思います。