「欧風客車」・・・。
今は誰も口にしない、死語のような列車であり車両。
でも、４０年前はそれまでの常識を打ち破り、時代の寵児となった “ナウい” 列車でした。
その先駆けになったのが「サロンエクスプレス東京」でした。
この車両が登場するまで団体用車両といえば、車内を畳敷きにした「お座敷列車」と呼ばれる和風客車でした。
和風客車は昭和３０年代から存在していましたが、いずれもオハ６１やオハ３５を種車にしており、非冷房だったり乗り心地が悪かったり等、必ずしもサービスが行き届いたとは言えませんでした。そこで、昭和４７年から冷房付きのスロ６２系を種車にした新しい和式客車が登場し、金沢鉄道管理局を皮切りに、全国７鉄道管理局に配備されましたが、老朽化が問題視されたことから、昭和５５年からは１２系を種車にした和式客車が登場し、徐々に置き換えていきます。また、北海道にはキハ２７を種車にしたキロ２９が道内の団体旅行に活躍していました。
そんな中、和式客車のユーザー層が高齢者に偏っていたことを憂いていた国鉄は、そのターゲットを若年層に向け、「ヤングに受けるナウい車両を造ろう」ということで登場したのが「欧風客車」でした。
手始めに、東京南鉄道管理局と大阪鉄道管理局で７両編成１本ずつ製造（改造）することにして、前者を「サロンエクスプレス東京」、後者を「サロンカーなにわ」という愛称を付けました。
共に１４系座席車が種車で、「サロンエクスプレス東京」は、「欧風客車」という名が示すように、室内の殆どをコンパートメントで構成しました。１、７号車にはフリースペースの展望室を設け、７号車にはラウンジも設置しました。
いずれも改造は大宮工場だったと記憶しています。
１号車：スロフ１４ ７０１（スハフ１４ ５３）
２号車： オロ１４ ７０１（ オハ１４ １３３）
３号車： オロ１４ ７０２（ オハ１４ １３７）
４号車： オロ１４ ７０３（ オハ１４ １７１）
５号車： オロ１４ ７０４（ オハ１４ １７２）
６号車： オロ１４ ７０５（ オハ１４ １７５）
７号車：スロフ１４ ７０２（スハフ１４ ５７）
（括弧内は種車）
夏休みも終わりに近づいていた昭和５８年８月に営業運転を開始しましたが、改造スケジュールの兼ね合いで当初は５両編成でのスタートでした。７両全てが出揃うのは同年１０月になってからです。
この構想は大当たりし、翌年鉄道友の会から「ブルーリボン賞」を受賞します。また、各鉄道管理局も挙ってこの手の車両を拵えては鉄路に送り込んでいました。いつしか、この団体用車両を「ジョイフルトレイン」と呼ぶようになりましたが、末期癌状態だった国鉄の経営状況にほんの一瞬ではあるにせよ、カンフル剤になったのは確かです。
私はその当時から捻くれ者でしたので、終焉を間近にして人気が沸騰したＥＦ５８、先頭車改造車、そしてジョイフルトレインが殊の外、大嫌いでしたね。もっとも、撮り鉄をやっててそれがその場にいれば撮るんですけど、わざわざ「○○が△△駅に来るよ」という情報を得てまで撮りに行こうという気にはなりませんでした。でも、「嫌よ嫌よ・・・」じゃないけど、「サロンエクスプレス東京」と「サロンカーなにわ」は別で、いつかは乗ってみたいなとは思っていました。特に「サロンエクスプレス東京」は、時折、「踊り子」の臨時便に充当されることがあったので、チャンスがあれば乗れなくない車両でした。
ジョイフルトレインの先駆けとして一世を風靡した「サロンエクスプレス東京」ですが、コンパートメントという構造が災いして、平成に入ると稼働率が下がり、時には遊休化することも。そこで何だかんだ言いながらも、最終的には高齢者に頼ることになり、そうなるとコンパートメントは必要なくなりますので、思い切って和式客車に改造することにしました。それが「ゆとり」になります。
外観はそのままで、ソファーやパーティション、ラウンジは全て撤去した上で、全室畳敷きの掘り炬燵仕様としました。展望室についてはソファーを残しました。
画像は伊豆急行の河津駅で撮ったものだそうですが、前述の臨時「踊り子」を始めとして伊豆急には数え切れないほど入線していますよね。
あれから４０年、ＪＲ西日本の「サロンカーなにわ」が今も健在なのが称賛に値します。
「団体旅行のターゲットを若年層に・・」というコンセプトは大いに評価できますけど、高齢者に比べてお金がないヤングは高価な団体用車両なんて借りませんよ。行程によって運賃が上下するばかりでなく、この手の車両は「グリーン車扱い」であることをお忘れなく。だから、ヤングは旅行会社が仕立てたツアー列車で乗ることが多かったのではないかと思われます。
【画像提供】
ヤ様
【参考文献・引用】
ウィキペディア（サロンエクスプレス東京、ふれあい、ジョイフルトレインなど）