わたかわ 鉄道&旅行ブログ

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【消えゆく平成の名列車】東海道線「快速アクティー」廃止へ…34年の歴史に幕

 

2023年2月19日(日)

こんばんは。今夜の旅の始まりは東京駅です。

本日はこれから、引退の迫る「快速アクティー」へ乗車していきます。

いよいよ目前に迫った、春のダイヤ改正。生まれゆくものと消えゆくものが行き交う、一年で一番大きな節目の時期が今年もやってきました。

今回乗車する「快速アクティー」もその一つ。廃止を前に、最後の乗り納めをしていきたいと思います。

 

快速アクティーは、1989年のダイヤ改正より東海道線京口で運行を開始しました。当時藤沢、茅ヶ崎、平塚といった湘南地区の主要駅に特急〔踊り子〕の一部が停車しており、それらを通過とする代わりに設定されたのがその目的です。

当時の運行区間は東京~熱海駅間で、途中停車駅は新橋、品川、川崎、横浜、大船、藤沢、茅ヶ崎、平塚、国府津、小田原、真鶴、湯河原でした。東海道線は元々かなり停車駅の絞られた路線であるがゆえ、当時の時点で既にそれほど通過駅が多いわけでもなかったということが分かります。

1992年からはオール2階建て車両「215系」を用いた運用も始まり、湘南色の車両が行き交う東海道において異彩を放つ快速列車でした。

しかしドア数の少なさが災いし、各停車駅で乗降に時間を要したことでダイヤの乱れが頻発。215系はわずか9年後の2001年に「快速アクティー」の運用から撤退し、その後は座席定員制のライナー列車として運用されるようになりました。

1998年からは一部の列車が早川駅根府川駅への停車を開始。すなわち小田原以西は各駅停車となるもので、2004年までに全ての「快速アクティー」が両駅へ停車するようになりました。

さらに2007年には、全ての「快速アクティー」が戸塚駅へも停車するように。これによって快速アクティーは東京~藤沢駅間までも各駅停車となり、通過駅は辻堂、大磯、二宮、鴨宮の4駅のみとなりました。

2015年に上野東京ラインが開業すると、それまで東京発着だった「快速アクティー」は宇都宮線への直通運転を開始。「アクティー 宇都宮行」という史上類を見ないほどのロングラン快速の誕生…かに思われましたが、実は東京駅で種別を変更しており、宇都宮線内は「普通」として運行されていました。

そしてさらなる転換点が訪れたのは2021年。東海道線で1990年にデビューした「通勤快速」の運行が取りやめとなり、「快速アクティー」がこの通勤快速の運行ダイヤを概ね引き継ぐ形となりました。「快速アクティー」は日中の運行を取りやめ、また運行区間を東京~小田原駅間に短縮して平日・土休日を問わず下り方向に1日2本運行されるのみとなってしまい、今日に至ります。

 

というわけで、東京駅の東海道線ホームへとやってきました。

これから乗車するのは、東京19時48分発の快速〔アクティー〕小田原行です。終点まで全区間乗車していきます。

ホーム上には「東海道線」と書かれた緑色の乗車整列位置の隣に赤色で「快速アクティー」と書かれた乗車整列位置があります。1日たった2本しかない列車のためにこんな立派なシールが貼られているのは驚きですが、これももうすぐ過去のものとなります。

やがて上野方から列車が入線。先にも述べた通り現在の運行区間は東京→小田原駅間ですので当駅始発の列車となりますが、10番線では19時41分発の小田原行が発車してからの入線となるため、停車時間はわずかです。

今回は贅沢にグリーン車へと乗車していきます。

もちろん長時間の乗車だから快適な方がよい、というのは言うまでもありませんが、それよりも「アクティー215系で運行されていた時代に見えた2階席からの景色を追体験したい」という思いからグリーン券を購入しました。

無事に2階席への着席完了。平屋車両とは異なる高い景色は、まさにかつての215系そのものです。

19時48分、列車は定刻通りに東京駅を発車。この先新橋、品川、川崎、横浜、戸塚、大船、藤沢、茅ヶ崎、平塚、国府津終点小田原に停車します。

車内はさほど混雑する様子もなく、日曜日の夜らしい穏やかな時間が流れています。これが平日となりますと、夕ラッシュの帰宅時間帯に貴重な東京始発の東海道線ですから少なくともこれよりは混雑しているのではないでしょうか。

まずは新橋駅に停車。1面2線しかない東海道線ホームには、今や東海道線のみならず宇都宮線高崎線常磐線の列車までもやってくるようになりました。1989年当時は考えもしなかった光景です。

JR東日本田町電車区には、このあと東京駅を21時50分に出発するサンライズの姿も。車内には明かりが灯っており、今夜も出発に向けた準備が着々と進められているようです。

続けて列車は品川駅に到着。

2021年まで同時間帯で運行されていた「通勤快速」は、品川を出ると大船までノンストップでした。同年のダイヤ改正で「快速アクティー」へ変更されたことは、大船以西に住む人からすると煩わしさもあるかもしれませんが、より高いニーズに即した運行がなされるのが世の常なのでしょう。

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多摩川を渡り、列車は神奈川県へ入っていきます。

20時05分に川崎駅へと到着。かなりの数の方が降りていかれました。

この光景を見ても分かる通り、近年では「快速アクティー」がわざわざ他の普通列車と比較して、とりわけ「選んで乗車してもらえる」ような列車ではなかったのです。1990年代はまだ215系が充当され、普通列車と異なる風貌で停車駅も少なく、速く移動したい場合や特別感の演出のためにわざわざ「選んで乗りたい」と思う人も少なからずいたことでしょう。今と比べまだある程度「アクティー」のブランディングがうまくいっていた時代です。

しかし2001年の湘南新宿ライン開業や2015年の上野東京ライン開業など、東海道線を取り巻く環境は21世紀に入ってからめまぐるしく変化してきました。そうした中で徐々に停車駅が増えていき、運行本数は削減され、ついには日中の運行を取りやめるまでになってしまったのです。

20時14分、横浜駅に到着。都心方面からの乗客が降りていくのと同時に、横浜での用事や予定を終えて湘南方面に帰宅する人も大変に多く、再び車内は混雑します。もっともグリーン車はそれほどでもありませんが…。

20時23分に列車は戸塚駅へ到着。横浜~戸塚駅間は東海道線内でもとりわけ駅間距離が長く、途中の保土ヶ谷駅・東戸塚駅東海道線側の線路上にホームがありません。

先に述べた通り、戸塚駅は2007年に快速アクティーが停車するようになった駅です。東海道線上野東京ライン)・横須賀線湘南新宿ラインのほか横浜市営地下鉄ブルーラインも通るターミナル駅で、駅や街の規模を考えればむしろかつて通過していたのが不思議なくらいです。

20時28分、大船駅に到着。東京駅を7分早く出た先行の普通 小田原行をここで追い越します。

よく考えてみると、東京駅からここまで「快速アクティー」であれ「普通」であれ停車駅は変わらないはず。しかし先行の小田原行が大船駅に到着したのは20時26分なので、東京駅の時点で7分開いていた差はわずか2分にまで縮まっています。

続いて20時36分に藤沢駅へと到着。かつては藤沢に停車する特急〔踊り子〕号が運行されていたようですが、1989年に通過となり、その代わりとして設定されたのが「快速アクティー」です。なお、藤沢駅に停車するJRの定期特急列車は2021年に特急〔湘南〕の形で復活しています。

そして、この藤沢駅を発車するとようやく「快速アクティーの本領発揮」となる区間です。テラスモール湘南でおなじみの辻堂駅を、颯爽と通過していきます。

東京駅を出て初めての通過駅となる辻堂ですが、1日の乗車人員は約4.8万人を擁し、決して小さな駅ではありません。これはJR西日本管内でいうと岡山駅に匹敵する多さです。あちらの場合、快速はおろか新幹線や特急さえも通過するはずがありません。

20時39分に列車は茅ヶ崎駅へ到着。藤沢駅と並びこの地域の主要駅として数えられ、相模線への乗り換え需要も大きい駅です。この辺りに来ると私鉄もなく、東海道線一強のエリアとなります。

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相模川を越え、20時44分に平塚駅へと到着。東京や横浜のあたりから乗っている乗客のほとんどは、だいたいこの平塚駅までで降り尽くすような印象です。

平塚駅を出ると、次は国府津駅までノンストップとなります。1日の乗車人員は大磯駅が約0.6万人、二宮駅が約1万人程度ですので先ほどの辻堂駅と比べると通過もやむなし…というところかもしれませんが、それでも二宮駅甲府駅と同程度の乗車人員がありますので、ところ変われば県下最大のターミナル駅になり得る駅を通過している…と考えるとすごいことです。

20時55分に列車は国府津駅へと到着。御殿場線への乗換駅です。

歴史を遡ればこの国府津駅も、かつて機関車の付け替え作業を行うために長時間の停車を行い、その影響で賑わった主要駅ですが、今やただの途中駅にすぎません。1日の乗車人員は大磯駅をも下回る0.5万人未満で、正直なところ停車の必要性があるとは思えません。

ただしこの駅は緩急接続ができる構造となっており、この先通過する鴨宮への足を確保するべく普通 小田原行へ接続します。この列車は東京駅を快速アクティーよりも13分早く出発した列車で、終点小田原を目前にして追い越されてしまうということになります。

そして最後の通過駅である鴨宮駅。小田原の市街地が近いということもあり、1日の乗車人員は二宮駅に匹敵します。ただし特急〔湘南〕の一部列車停車などもなく、さらに平塚どまり・国府津どまりとなる列車も少なくないことを考えれば不遇の駅と言わざるを得ません。

東京駅を出てから1時間14分、21時02分に列車は終点の小田原駅へと到着。

乗車してきた列車は回送となり、向かいのホームでは東京駅を24分早く発車した普通 熱海行が接続を取ってすぐに発車していきます。

快速アクティーの運行が始まった1989年は、ちょうど「平成」が始まった年でもあります。

世の中のニーズに常に応え続けるべく、平成から時代を越えて令和へ、車両・停車駅・本数等を柔軟に変更させながら今日まで生き抜いてきた「快速アクティー」も、ついにその34年の歴史に幕を下ろす時がやってきました。

今後も引き続き湘南新宿ラインの「特別快速」が辻堂・大磯・二宮・鴨宮を通過しますが、そうはいってもやはり「アクティー」での通過は格別の思いがあります。

とはいえ、元々駅数の少ない東海道線において無理に通過駅や緩急接続を設けることは、今の時代に合わなくなってしまった結果ということなのかもしれません。特に辻堂駅は他の湘南エリアのターミナル駅と比較しても遜色のない乗車人員があり、辻堂に住む友人は「何でアクティーは通過してしまうの…」という声を一時期毎日のようにもらしていたのを今でもよく覚えています。

寂しい思いもありますが、東海道線がこれからも多くの人にとって便利な路線となるよう願ってやみません。

 

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。