ひろば 研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

久留里線の一部区間について協議を申し入れ

2023年03月12日 10時15分00秒 | 社会・経済

 3月9日7時付で「いよいよ、久留里線の一部区間の廃止も視野に?」という記事を掲載しました。そこで同線の久留里駅から上総亀山駅までの区間の営業係数を28100と記しましたが、これは単純な計算にすぎました。実際の営業係数は19110でした。失礼をいたしました。

 さて、その久留里線について、JR東日本が千葉県と君津市に協議を申し入れました。Yahoo! Japan Newsなどに様々な記事が掲載されていますが、今回は朝日新聞社の3月10日10時45分付記事「久留里線のあり方、JR東が自治体に協議申し入れ バス化も視野か」(https://digital.asahi.com/articles/ASR397WC9R39UDCB006.html?_requesturl=articles%2FASR397WC9R39UDCB006.html)を基にして記していきます。

 JR東日本が協議を申し入れたのは3月8日のことです。協議先が千葉県と君津市となっているのは、久留里駅から上総亀山駅までの区間が君津市にあるためです(同市にある久留里線の駅は、下郡、小櫃、俵田、久留里、平山、上総松山および上総亀山です。他の駅は木更津市および袖ケ浦市にあります)。

 件の区間の輸送密度は、JR東日本初年度の1987年度には823人でした。これだけでも特定地方交通線入り、しかも第1次または第2次の水準ですが、当時は路線全体の輸送密度によって判断していたので、久留里線は特定地方交通線とならなかったのでした(ただ、この辺りの詳しい事情はよくわかりません)。21世紀に入って最初の5分の1が経過して、2021年度には輸送密度が55人となっていました。この数字は、度々話題になるJR西日本芸備線の東城駅から備中落合駅までの区間よりは良いものの(2021年度には13となり、一桁台ではなくなりました)、大糸線のJR西日本区間である南小谷駅から糸魚川駅までの区間(2021年度)と同じです。

 上記記事には久留里線全体の輸送密度や営業係数が示されていませんが、芸備線やJR北海道の札沼線(2020年に北海道医療大学駅から新十津川駅までの区間が廃止されました)のように一部区間が大都市にある訳でもなく、乗客の減少が著しい内房線の木更津駅を起点としていますから、久留里線全体の輸送密度が低く、営業係数が悪いことは容易に推察できます。実際に、上記朝日新聞社記事に掲載されている9日の記者会見でのやりとりにも、質問者の発言として「木更津―久留里間も輸送密度が2千人を下回る」と書かれています(これに対するJR東日本千葉支社長の中川晴美氏の答えは「現時点はない」というものです)。

 (余談ですが、館山市役所のサイトに「JR内房線をめぐる状況について(要望活動など)」というページがあり、そこには「内房線については、利用者の減少により、運行本数の減少や君津駅での系統分離などが行われ、利便性が低下しています。市では、内房線の利便性を向上させるため、JR東日本への要望活動や県が事務局を務める『千葉県JR線複線化等期成同盟』を通じた要望活動を実施しているところですが、乗客数を増やすことが利便性向上への大きな一歩となります」と書かれています。)

 実のところ、JR東日本は、久留里線の久留里駅から上総亀山駅までの区間について、バス転換をするのか、上下分離方式を採用するのかなど、具体的な方針を示していません。ただ、上記朝日新聞社記事には、この区間が「JR東で、特に利用客が少ない輸送密度2千人未満の35路線66区間の中では収支率が最低水準。中川支社長は『鉄道の特性である大量輸送のメリットを発揮できていない』と述べた」とあります。かなり厳しい状況であることは否めません。

 記者会見では「ダイヤ改定で運行本数が減っている。利用減につながったのでは」という質問があり、これに対して、JR東日本千葉支社企画部長の森原大輔氏は「人口が大きく減り、モータリゼーションが進展するなど、様々な要素が関わっていると思う」と回答しています。原因は一つではないでしょうから、妥当な発言であると思われます。ダイヤ改正も原因の一つではあるでしょうが、それはむしろ道路網の整備などによる乗客の減少の結果であるというべきです。

 木更津市と言えば国道409号の一部である東京湾アクアラインの終点があり、この道路が房総半島の交通を大きく変えるとともに、木更津市の経済にも大きな影響(打撃)を与えたと言われています。木更津市に留まらず、君津市や袖ケ浦市にも言えることでしょう。

 このような状況を考えると、久留里線の久留里駅から上総亀山駅までの区間の存続は難しいと考えられます。この区間だけについて上下分離方式を採用する意味があるのでしょうか。全体の輸送密度が2000を切ることは確実であり、営業係数も悪いことも確実でしょうから、上下分離方式を採用するならば久留里線全線についてでしょう。バス転換後の状況に懸念材料が残るとは言え、廃止を選択肢から外すことはできないでしょう。


コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 北陸鉄道の石川線と浅野川線... | トップ | 川崎市市民ミュージアムを生... »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (iwainoyamanoi)
2023-03-13 03:22:08
はじめまして。
私は久留里よりも南にすんでおります。
結果がどのようであっても、経過を踏まず、一方的な流れにはならないようにと考えています。
久留里線は、現在のいすみ鉄道とつながる計画がありました。何らかのかたちで活かすという視点で、代案はもっております。
手続は重要です (川崎高津公法研究所長)
2023-03-13 08:32:30
こんにちは。
地元の方からコメントなどをいただけるのは幸いです。
久留里線久留里駅〜上総亀山駅の区間については、今後の協議によって行く末が決まると思いますが、しっかりとした手続を踏んでいくことが大事であると考えています。これは、JR東日本の態度(とくに説明)に言えることですが、君津市や千葉県の態度についても言えることです。
なお、木更津駅〜大原駅の鉄道計画については「いよいよ、久留里線の一部区間の廃線も視野に?」において少しばかり取り上げておきました。

コメントを投稿

社会・経済」カテゴリの最新記事