【11年ぶりの雪景色】1日3往復の豪雪地帯を行く只見線乗車記 | pass-case.com (Ameba版)

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おはようございます。こちらは朝の只見駅です。
2022年10月に全線運行再開を果たしたJR只見線。今朝は最後の復旧区間、そして風光明媚な冬の車窓を会津若松までお届けします。

前回ご紹介した部分に含まれる大白川〜只見は雪解けのために運休中。しかし今回の区間は運行中で、青春18きっぷでも乗車できます。

まだ暗い5:36に上越線小出駅を出発した、会津若松行きの列車が停車中。只見〜会津川口を走る列車は1日3往復だけで、貴重な一本となっています。

キハ110形気動車とE120形気動車を連ねた2両編成、只見駅から先はワンマン運転です。

後面展望も撮れるよう、後ろ寄りのキハ110形に乗車。
この便を利用するには前泊などが必要で、人気のローカル線でも半分の区画が埋まっている状態です。

07:11 只見駅 発
「おかえりなさい」の看板に見送られ、「また来るよ」の気持ちを込めて出発します。

少し進んだだけでも、いきなり真っ白。霧が立ち込めていて、山の頭だけが薄っすら顔を出していました。

只見高校の横を通過、JR只見線で県境を越えて魚沼市から通学する方もいらっしゃるようです。

カーブしつつ渡っていく叶津川橋梁は、そこまで有名ではないものの撮影スポットになっています。

左側からは八十里越街道が繋がっています。
現在、六十里越と呼ばれる国道252号は冬季閉鎖され、県境の冬期交通はJR只見線だけです。そこで八十里越にあたる高規格道路の国道289号が、2026年に開通予定になっています。

2011年に只見線周辺地域を襲った、平成23年7月新潟・福島豪雨。
線路寸断により動けなくなった列車は、会津蒲生駅近くのスノーシェルターにしばらく避難していました。その車両はここからトレーラーによって積み出されています。

いよいよ列車は只見川沿いをゆったり走り始め、まさに冬の只見線らしい景色になりました。

最初に渡る第八只見川橋梁は、三信鉄道の中部天竜〜佐久間で使用された天竜川橋梁を転用しています。

この橋は豪雨で被災しており、復旧時嵩上げした場合45億円かかるとされました。あまりに大きな金額のため、それはやめて25億円に抑えられています。

ちょうど只見川から分かれる塩沢川を渡ると、水面のクリアさに驚かされました。

もの凄く蛇行してR字を描く只見川、国道は限界まで沿いますが、只見線はトンネルの中へ…。

会津大塩駅などこの辺りの駅には、真っ茶色に錆びた駅名標も残っています。

第七只見川橋梁は豪雨により、線路下のトラス橋とガーター橋の桁部分が流出しました。
復旧後は橋下の空間を十分に確保するため、上路式トラス橋(上に線路・トラスが下)から下路式トラス橋(下に線路・トラスが上)に変えています。

手前側の橋桁も見るからに新しいコンクリートです。
ここを渡る時には角度が異なる、道路の四季彩橋を見られました。

会津横田駅からは2人乗車されました。
旅館は2軒ほどあるようで、小さなスーパーも位置する集落です。

会津地方は赤茶色の屋根が多い印象ですが、この辺りは何故か青い屋根で揃っていました。雪を落としやすいよう、ツルツルの素材が使われています。

会津越川駅を過ぎて、霧の向こうの全貌が明らかになっていました。

第六只見川橋梁を渡る時には、ベロを出したように広く水を吐き出す本名ダムを間近にします。
かつて国道252号はこの本名ダム上を通っていたのですが、2022年1月にトンネルを含む本名バイパスが開通しました。

この橋梁も流出しており、16億円で架け替えられました。
線路下のトラス橋と前後のガーダー桁2連が流失し、先程と同様に上路式から下路式トラス橋へ変更されています。

本名駅周辺の線路脇には急に歴史溢れる家屋が立ち並び始めました。こういった場所がなかったら、完全なる観光鉄道に思ってしまいそうです。

第五只見川橋梁はプレートガーターが流出、路盤崩落も起こったため、ガーターの距離を長くすることで改良が施されました。
そのおかげで広い只見川に映る景色を、じっくり楽しむことができます。

会津川口駅に到着しました。
駅に着いたところで驚くのが、只見川の近さ。幻想的な雪山の美しさが倍になって飛び込んできます。

外から走っている所を見たら、こんな感じなんでしょうね…。

会津川口駅では39分の停車時間があります。金山町の中心駅ですが、この朝早い時間帯では開いているお店も少なめです。

それでも駅舎内には売店があるので、多少朝ごはんを買うくらいはできるでしょう。

駅周辺をちょっとだけ散策、川口高校へ繋がるトンネルの手前では、野尻川に架かる橋梁を見られました。

他にも会津川口駅には転車台が備えており、間近で見ることもできます。

駅に戻ると8:15発の反対列車が発車するところでした。さっきいた橋梁で撮ればよかったですね(笑)

会津川口駅周辺で宿泊された方が乗られたためか、3分の2くらいの区画が埋まる程度に。数名の生活利用者さんもいらっしゃいます。

8:41 会津川口駅 発
これより前に会津川口駅始発の列車が2本設定されているので、ここで宿泊して乗車するのもオススメです。

ここで上井草(うわいぐさ)橋の下をくぐります。
その手前側に橋台跡が見えますが、2005年に現在の橋へ架け替えられました。
この古い橋の撤去作業を行う際には、只見線にも影響する事故が起こっています。手順と異なる方法で撤去していたところ、橋桁が只見線の線路へずり落ちてきたのです。しかも、ちょうど列車がやって来た時で、天井に当たった際不審に思った運転士さんが緊急停車。けが人は出なかったものの、洒落にならない事故でした。

蛇行する只見川スレスレの所に集まる家々は、大志集落と呼ばれます。まさに自然と共生しており、山から俯瞰するとアルプスの湖に浮かぶような景色です。

会津中川駅近くには道の駅奥会津かなやまや、中川温泉などがあります。只見線の撮影がてら、訪問される方も多いようです。

その後見えてきたのは上田ダム。
水面の反射が綺麗すぎて、ダムが空中に浮かんでるみたいじゃないですか!?

並行する国道252号を見下ろすと、アスファルトにブルーシートが掛けられていました。
結構長い間続いていたのですが、詳しくは調べてもよく分からず…。単純な道路工事なのでしょうか。

第四只見川橋梁については、豪雨で冠水したものの流出していません。やはり下路式トラス橋のほうが土砂がトラス橋に引っかからず、橋が持っていかれにくいということでしょうか。

それでもトラス桁やレールの歪み、路盤流出はあったため、2011年11月まで復旧作業が行われました。

スノーシェッドの前後には橋梁絡みの撮影スポットがあります。

通っているのは細越拱橋、国道252号に沿って8連続のコンクリート製アーチ橋が続いており、そこを走る列車を見上げると迫力満点です。

この辺りは奥会津シンフォニーロードと愛称がつけられた区間。道路上に溝が掘られていて、車の走行音が音楽を奏でてくれます。

早戸駅からは数人の乗車、近くには霧幻峡の渡しの乗船場があります。
300年もの歴史があった霧幻峡ですが、昭和39年に裏山で土砂崩れが起こり廃村となりました。現在でも残る祭祀施設、硫黄鉱山等の産業遺跡が、パワースポットとして注目されています。

只見線沿線よりも自然奥深い、そんな空間へ入り込んでいくのも楽しそうですね。

第三只見川橋梁はトラスが下にあるため、景色を遮りません。豪雨被害を受けた橋たちもこれに似た構造だったのですが、今後の対策を考えたら仕方ないです。

トコロテンですかってくらい吐出口が細分化された、宮下ダムの真横を通過します。

三島町の中心駅、会津宮下駅に到着。
宮下温泉の周辺に旅館が集まっているためか、7,8人程度のお客さんが乗ってこられました。

ここでは行き違いのため、4分の停車です。

駅を出発すると左手に現れるのが、宮下アーチ三兄(橋)弟。
国道252号、JR只見線、福島県道237号(小栗山宮下線)のアーチ橋3つを重ね見ることができます。写真で見えているのは県道237号、線路の反対側に国道252号が高いところを走っているようです。

そして第二只見川橋梁を渡ります。一筋残る霧のおかげで、神話の世界にいるみたい。

会津西方駅を出発してトンネルに入り、この先がJR只見線の写真でよく見るところではないでしょうか。

暗闇から光に包まれ、第一只見川橋梁です。
深いエメラルドグリーンの上、山々の間に開放感溢れる空間が作り出されます。

この橋梁こそが、只見線の鉄道写真でよく撮影される場所です。世界一ロマンティックな鉄道と言われる所以はここにあり、こんなの撮れたら事実でも感動できそう。

只見川を渡るのはこれが最後、小人の家みたいな待合室の会津桧原駅を出発です。

滝谷川橋梁を渡り、三島町から柳津町に入りました。

柳津町には柳津温泉があって、只見線沿線の中で一番の温泉街が広がります。

その温泉街からはちょっと離れているのですが、会津柳津駅に到着。
ここでは地元の方々が、うちわを持ってお出迎えしてくださいました。何でも無い普通列車なのに、その温かさに触れられるのは素敵ですね。

今度は柳津に停まってみようと思わせられ、こういった小さな活動もリピーターの獲得に繫がるはず。

会津坂本駅は貨車駅舎ですが、キハ40をデフォルメした可愛らしいペイントがなされています。

ここで只見川沿いからはお別れ、山の中に入ります。

トンネルを抜けて下り坂へ。
2022年10月1日、会津若松駅から只見線全通初便に乗車したのですが、この登り坂あたりで止まっていました。近くの踏切まで歩いたのはちょっとした思い出です。

そして先程からの景色とは一変、会津盆地にやって来ました。とにかく広々しており、同じ路線とは思えないほど雰囲気がガラッと変わります。

幼稚園の山からは、園児さんたちがこちらへ手を振ってくださいました。

会津坂下〜会津若松は利用者の多い生活路線です。
高校生もたくさん乗ってきて、2両編成には立ち客も出るくらい。

只見線はここで南へ大カーブ。直線で会津若松駅へいけば近いのに、かなりの遠回りです。

山の中を縫っていた路線が、今度は山を外から見ることになります。

西若松駅で第三セクター会津鉄道と合流。この線路は東京の浅草まで繋がっていて、会津若松〜浅草はJRを使わず、私鉄4社を乗り継いで行くことができます。

七日町通りから大正浪漫をほんのり薫り、城下町に入ってきたことを実感させられます。

そして大手のホテルチェーンが見えてくると、交通の結節点となっている会津若松駅に到着です。

10:32 会津若松駅 着
只見駅からは3時間21分、世界に誇る雪のローカル線を堪能しました。この感動できる鉄道はぜひいつまでも残ってほしいと強く願います。

そのためにも只見線に乗ることはもちろん、宿泊したり観光したりといった沿線にお金を落とすことも大切。ぜひその魅力も体験できたらなと思います。

今回もご覧いただき、ありがとうございました。