芸備線 と 持続不能の日本・その16 | 安芸もみじ / Photos, Historys, Trains - Hiroshima JAPAN

芸備線 と 持続不能の日本・その16

-芸備線と維持困難路線・その16-

JR西日本は播但線において一部列車の運転を取りやめるとの発表を行いました。

この処置は、播但線の現状に合わせた列車の見直しを行うためとして、今年の3月18日ダイヤ改正から実施されます。

電化区間の姫路~寺前間と、非電化区間の寺前~和田山間のともに、運行列車の削減を行うもの。

寺前~和田山間 1往復と、10~21時台の姫路~福崎間 平日3往復、土休日の2往復、姫路~寺前間の1往復が廃止されます。



詳細は時刻表やJR西日本のホームページなどを確認して頂くとして、播但線は大阪発着の特急列車が走る線区でもあります。

3往復の特急はまかぜと、冬季運転のカニカニはまかぜが運転されていますが、路線沿線の過疎化は深刻で、特急列車が停車しない中間駅では利用率が著しく低下しています。

芸備線では年末年始の12月31日~1月5日の間、乗務員の新型コロナウイルス感染に伴い、運行に必要な人員が不足したため、広島県内の一部区間で3往復分を運休しました。

三次道部所属の運転士23人の内訳、5人の感染が判明し、また4人が体調不良を訴えたり濃厚接触者になったりしたため。



運休したのは三次~備後落合間と福塩線の三次~府中間で、バスやタクシーで代行輸送を行いました。 

現在は通常ダイヤで運行されているようですが、今月1日には岡山県と広島県は概要や細切れのの数字ではなく現状と事実を知りたいと、JR西日本に対してヒアリングを行いました。

これは先月26日、JR西日本が一部区間の存廃協議を求めている芸備線を巡り、広島県・岡山県が同社に対して、経営状態をただしたいと報道機関を含めて、公式見解を示したことから始まります。

JR西日本への疑念は、未来を見据えての協議のはずにもかかわらず、沿線自治体が求める数字や資料などが公開されず、他の交通機関へ転換するにしても、上下分離式運営を導入するにしても、何ら具体的な話し合いができないことから。



いつまでも漠然とした言い分しかしないJR西日本へ対して、何がどうだからどうなんだと事実と現状の公開を求めたものです。

「廃線ありきではないが、廃線も含めて将来の在り方を協議したい」と言っているJR西日本の公式発言と異なり、沿線自治体と将来の在り方を協議する積もりは無く、じわりじわりと芸備線を諦めさせることが魂胆としてあるのではないのか?

両県は結果的に廃線となるにしても、そういった卑怯な手段は受け入れられず、ちゃんと協議して将来の交通体系の道筋や、県民の生活基盤の構築を考えたいとしています。

その故からJR西日本が、国鉄分割民営化とJRグループ誕生の時の責任である、京阪神の在来線や新幹線の収益で各支線(ローカル線)を維持する″内部補助″継続が困難としている点を踏まえてのヒアリングでした。



今回のヒアリングは「JRが求めている議論の場ではない」と岡山県が断言しての開催でしたが、協議に必要な資料を求めての会議には国土交通省も参加しました。

2022年4月に芸備線を含む赤字17路線30区間の収支を始めて公表し、大量輸送という鉄道の特性を発揮していないとしつつ、自社だけでは維持するのが困難として沿線自治体に協議を求める考えを表明しました。

新型コロナウイルス禍による生活の変化で利用客が減った影響もあり、内部補助での路線維持が難しいとも説明しました。

これに対して沿線自治体は寝耳に水だと訴えながらも、できる者ができることを行おうと経営改善に寄り添う動きを始めたと言うのが、これまでの経緯です。



しかしJR西日本はまずは日本一の不採算路線区間として、芸備線の今後の在り方を1番手に選び、協議を開始できるように求めますが、公式発表の資料以外の開示はなく、ただただ各駅の利用者促進や列車の利用者を増やすアイデアのみを要求。

沿線自治体もまずは利用促進から取り組みますが、それと同時に本腰を入れて将来の在り方を検討して行こうとする中、それに関してはJR西日本は淡泊な対応だったようです。

単独維持が困難だから助けを求めて来たにもかかわらず、真剣に向き合おうとする自治体に対してその態度はおかしいと苦言を呈し、必要資料を全て開示せよとJR西日本へ求めましたが、それを渋ったことから協議会は頓挫したことが、沿線自治体が疑念を大きくした1番の要因のようです。

前回までの記事で沿線自治体によるJR西日本への疑念について語りましたが、ここへ来て同社の具体的な対応が見えてきました。



JR西日本は不誠実な対応をしながら、協議会に応じない沿線自治体を困窮させるために、国へ調停を求めたことになるのですが、今回のヒアリングはそれを活かして岡山県と広島県が主催し、国交省に同席を求めた形となりました。

これまでは沿線自治体とJR西日本の間でバラバラにやり取りしており、 前回の記事で述べた通り沿線自治体の連携と協調が取れないような形で、新見市での協議会開催をJR西日本が実施したりとなっていました。

そこで広島県と岡山県は沿線自治体を代表してJR西日本に申し入れを行い、統一見解を以て協議会を開けるようにと、国交省と報道機関を証人にできる形で、主導権を取っての主催としたようです。

両県が求めたのは、そもそも論から始まり「赤字が大きい一部区間の収支だけを公表するのはおかしい」と、芸備線全線の収支開示を求め、またJR西日本の鉄道収支の公開も求めました。



49路線109区間の全路線の収支と鉄路収支、そして内部補助を含めた経営状態をただし、芸備線全線の利用現状なども質問し、国交省には2023年度の導入を目指す新たな協議制度の仕組みや支援策を聞いたようです。

今回のヒアリングてま開示された新たな資料を持ち帰りとし、各自治体と協議した上で統一見解を構築し、次回からの協議会へは各自治体も参加するように両県は求めました。

この日のヒアリングでは、JR西日本は運輸収入のうち、京阪神を除く在来線収支は全体の13%にとどまると答えつつも両県が要求した資料の一部は開示されず、両県は芸備線の利用者の年代や職業別などのデータを新たに求め、JR西日本はその要請を本社へ持ち帰えりました。 

会合後、岡山県の池永部長は「時間的に十分ではなく、またもや総論的な内容になってしまった」と語り、広島県の杉山亮一・地域政策局長は「お願いしていた部分の資料が無かったのは消化不良かもしれない」と記者団に不満感をにじませています。



この一連の流れを見て感じるのは、JR西日本には赤字ローカル線の活性化を初めから求めてはおらず、特に芸備線に関しては廃線ありきなのではないかと受け取れることです。

私たちが知り得るのは報道発表や関係行政誌や行政発表資料などによる情報を基にしているため、かなりのものが未だ見えていません。

しかし今回のヒアリングで、昨年5月にJR西日本が自治体側に存廃を含めた協議入りを提起して以降、自治体側が過敏に反発して睨み合いの状態へ陥ったのか、イメージはつかめたように感じます。

助けを求めてていながら、力を貸そうとしたら、失礼にも程があるような不誠実••••••••それでは沿線自治体が反発するのは当然だったのかも知れません。



今後どのような形で協議が進むのかは分かりませんが、あくまで邪推するなら2019年12月1日に就任した西日本旅客鉄道CEOの長谷川一明氏が、何らかの手柄を立てたくて「とりあえず芸備線を廃止したいな」と、中曽根康弘方式の功労者となろうとしている••••••••と想像してしまいます。

まぁそれは私の妄想ですが、芸備線問題は存廃議論以前に、JR西日本の目論むなし崩し廃線が実現するのか、県民の暮らしを守る県政の責任が果たせるのかの戦いへと、様相は変貌しつつあるようです。

さて、この-芸備線と維持困難路線-のシリーズですが、毎回それまでの記事を前提に書いて積み上げているので、詳しく知りたい方は記事一覧のバナーをクリックしてみて下さい。

最後に今日の写真の解説ですが、冒頭からの2枚は新幹線の車内から撮った、岡山駅気動車基地へ留置されるキハ40・キハ47です。



続いての3枚は岡山での快速ことぶきの、発車標と車内の様子ですが、そこから続くのは西広島駅へ停車中の下関行き5連回送列車です。

ラスト12枚は芸備線でのキハ40系やキハ120系ですが、1枚目の発車標は快速 庄原ライナーでありながら、写っている9番ホームの列車は入庫回送だったりします。

三次駅、備後庄原駅でも撮影していますが、三次駅ではカープラッピングのキハ120にも出会えました。

最後になりましたが、もしこのまま芸備線がなし崩し廃線となるようなら、JR西日本は今度は他の路線でも同じ手段を取る可能性は高いと思われます。


大糸線を始め全国の赤字ローカル線沿線自治体の関係者さまは、ちゃんと事の様子を見ながら対抗手段を構築しておかねばなりません。


また芸備線問題でもJR西日本が必要資料の開示に応じない場合には、裁判所へ開示請求などの手続きを取ることも必要でしょう。


また「京阪神を除く在来線収支は全体の13%にとどまる」というJR西日本の公式発言も気になるところで、ただ単に事実を述べただけなのか。


そもそも全体の13%にとどまるなら、内部補助は一過性の売上低下ならコロナ禍前に戻らなくても、補填は十分可能なはずです。


両県はそこら辺の数字が実際に見てみたいのでしょうが、このことばの裏には暗に「地方支線なんかいらないよ」とも聞こえてしまいそうです。





ーご了承事項と免責事項ー
● 芸備線と持続不能の日本のシリーズは、第1回からの連載となっています。

● 以前の記事を前提として積み重ねで記して行くので、特にスポットを当てた回でない限り、同じ解説を本文内では致しません。

● このシリーズは日本国の法律と下記の既成事実を基本として、中立的に私一個人の思いを綴っていますことを、ご理解とご了承のお願いを致します。

▼ ローカル線が使い辛いのと鉄道の優位性が発揮できないのは鉄道会社の責任で、沿線都市へ人が訪れない原因は、受け入れ態勢が脆弱な各自治体の責任である。

▼ 日本人口の減少と山間都市の過疎化は国政の責任で、諸問題を先送りにして国鉄分割民営化を強行させたのは国民の責任である。

▼ 公共交通の提供は日本国憲法と交通政策基本法に定める基本的人権の1つであり、安易に国民の権利を奪うことは許されない。

▼ 街の活性化は住民と訪問者の両輪が必須で、そのためにはインフラ・ビジネス・エンターテイメントの3要素に、恒久性が欠けては成立しない。

▼ 諸問題を先送りにして実行された諸事案件は、当時の有権者の責任であることは間違い無いが、先送りが実行された以上は当時まだ未成年や未誕生だった国民が、現在においてその全ての責任を負う。


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