東武鉄道は令和4年12月16日、2023年3月に実施するダイヤ改正の概要を発表しました。今回はこれについての分析です。なお、記事中の図については、全て東武鉄道プレスリリースから引用しています。

https://www.tobu.co.jp/cms-pdf/releases/20221216095003CgiPlyiMuAYy0ETMej1V2g.pdf

 

<東上線>

1 東武東上線が新たに、相鉄・東急直通線への乗り入れを行います。

 新横浜方面への乗り入れをめぐっては、西武は乗り入れなし、東武は乗り入れ実施と両者の対応がくっきり分かれました。東武東上線~相鉄・東急直通線の直通列車は、車両運用の都合で朝夕だけ数本設定する程度と私は予想していましたが、それとは大きく異なり、日中にも設定されることとなりました。

 現在、東上線沿線から東海道新幹線へ乗り換えるのであれば、池袋まで東上線で行って、東京メトロ丸ノ内線かJR山手線で東京駅へ向かうのが一般的ですが、改正後は東上線沿線から新横浜まで乗り換えなしで行くことができ、東海道新幹線へのアクセスの選択肢が増えます。

 川越~新横浜は最短80分との触れ込みですが、大半の列車は90分以上かかっており、100分超えの列車もあります。川越~東京間は池袋での乗り換えを含めて約65分、東海道新幹線の東京~新横浜間が約18分であることを考えると、川越から名古屋・大阪方面からの所要時間はそこまで変わりません。そのため、東海道新幹線へ乗り換える乗客については、少なからず新横浜利用へシフトする可能性があるといえます。

 

2 有料列車TJライナーについて、一部時刻が変更されるとともに、平日1往復、土休日上り3本が増発されます。土休日の上りについては今回の改正で初めて設定され、平日・土休日問わずTJライナーの需要が高いことがうかがえます。

 

3 朝及び夕方以降に設定されている川越特急が大幅に増発されます。特に上りは10本以上となります。

 川越特急は午前中に池袋から川越方面、夕方に川越方面から池袋に向けて運行されており、川越への観光客にあわせて設定されています。と同時に、TJライナー車両の間合い運用でもあるのです。

 夕方のTJライナーは池袋から小川町へ向かう下り便のみ走っています。車庫は森林公園にあるので、まずはTJライナーの車両を森林公園から池袋に送り込む必要があります。川越特急はこの送り込み列車の一部を活用しているのです。

 また、小川町に到着したTJライナーは再び池袋まで送り込む必要があります。現行ダイヤではその役目は快速急行が担っていますが、これを川越特急に代えるものと思われます。後述しますが快速急行の停車駅がこの改定で大きく変わるため、それが川越特急へ置き換える理由と考えられます。

 

4 列車種別や停車駅が以下の通り大きく変わります。

(1)準急が新たに上板橋に停車します。上板橋駅は準急通過駅の中でも東武練馬に次いで2番目に乗降人員が大きい駅です。また、列車の追い抜かしができる構造となっているため、上板橋で準急ー普通の乗り換えもできるようになります。そうすることで普通を利用していた乗客の一部を準急にシフトさせて、普通の減便を図る狙いがあると考えられます。

(2)急行が新たに朝霞に停車します。朝霞は池袋~川越市間の急行通過駅の中で乗降人員が最も大きい駅だから、という面もあるとは思いますが、これにより急行は成増~志木間で5駅連続停車となるため、現在「池袋~志木」「東京メトロ副都心線~志木」間を運行している普通の一部が、成増発着や和光市発着に運行区間を短縮する可能性があります。

(3)快速は廃止され、快速急行は川越~小川町間の各駅に停車となります。また快速急行は、朝霞台駅に新たに停車する一方、志木は通過に変更されます。これまで朝霞台は、川越特急が停車する一方で快速急行は通過というやや複雑な形態だったため、わかりやすくなります。

(4)副都心線直通の急行「Fライナー」は、改正後は快速急行に格上げされ、志木・ふじみ野は通過となります。

 

(3)(4)を見る限り、志木・ふじみ野の利用者にとっては辛い改定となります。中でも志木駅は快速急行もFライナーも停車しなくなってしまうため、利用者がこれをどう感じるかというところはあります。

 もし(2)で記したように、志木発着の普通まで運行区間が短縮されて志木へ来なくなってしまうとなると、かなり厳しい内容と言わざるを得ないでしょう。

 

5 下り志木発小川町行き、小川町発寄居行き始発列車が6~7分繰り上がります。また、寄居発森林公園行き最終列車、森林公園発川越市行き最終列車が50~57分繰り下がります。

 

 終電繰り上げが行われている時代で、なかなか思い切った繰り下げですね・・・

 

6 平日朝ラッシュ時(池袋着7:30~8:30)の池袋行き上り列車が、24本から22本に減便となります。恐らく普通列車が減便になるものと思われます。

 

7 快速の廃止に伴い、川越市~森林公園間は毎時8本から毎時6本に減便となります。ただし、快速通過駅の停車本数については、毎時6本のまま維持されます。

 これをみると、現行ダイヤの運行間隔は現行ダイヤでは6~16分と、不均等なものになっています。改正後は1時間当たり2本減便となってしまいますが、運行間隔は概ね10分に揃えられるので、あながち悪い改定ではないのではないでしょうか。

 ただ、坂戸駅で東上線と接続する越生線は15分間隔なので、越生線との調整をどのようにするかは注目ポイントです。

 

8 平日夕方以降の東上線・越生線の一部列車の種別・行先・本数が変更となります。恐らく減便があるものと思われますが、詳細は不明です。

 

9 現在、東上線の小川町~寄居間でワンマン運転が実施されていますが、改正後は新たに森林公園~小川町~寄居間でワンマン運転が実施されます。要は、森林公園~小川町間で新規にワンマン列車が設定されるというわけです。

 森林公園に車庫があるので、その車庫に出入りする列車をワンマン列車として営業運転するのでしょう。

 

<日光線>

1 南栗橋駅に朝の上り特急3本、夜の下り特急6本が新たに停車します。南栗橋駅周辺では、産学連携で「BRIDGE LIFE Platform構想」のもとにまちづくりが進められており、その一環で停車することとなるようです。これを機に、南栗橋駅とその周辺がどのような変貌を遂げるのかは大いに注目です。

 

2 JRー東武の直通特急については、現行の4往復から2往復に減便となります。臨時列車については、1~3往復設定され、需要に応じて柔軟に運転するようです。

 

<伊勢崎線>

 新型車両500系(リバティ)3両で運行されている「リバティりょうもう」4往復について、使用車両を従来の200系6両に戻すことで増車が図られます。利用客の減少に伴い、短編成化して500系に置き換えていましたが、両数を一部復元するようです。利用の戻りに合わせた対応がなされており、よい改正といえるのではないでしょうか。

 

<まとめ>

 いかがでしたでしょうか。今回はなんといっても東上線の白紙改正ともいえる大きな改正がひときわ目を引きました。優等列車の停車駅増加や、種別の再整理が図られた形です。

 運行間隔の改善や特急列車の一部増車など、明るい面もみられる一方、志木駅やふじみ野駅の利便性の低下はやや懸念されるところです。また、普通列車を中心に減便がなされると思われますが、減便の規模がどれほどかによって、今回の改正の評価も変わってきそうです。

 相鉄・東急直通線への乗り入れも始まり、姿を多く変える東上線。利用がどのように変わるのか、目が離せません!