南海電鉄「運賃値上げ」認可 値上げ幅抑える特定運賃を一部の区間に新設



国土交通大臣は2月3日、南海電鉄が申請していた旅客運賃の上限変更を認可した。これを受けて南海電鉄は10月1日に運賃を値上げする。全体の改定率は10%。一部の区間は特定運賃を新たに設定して値上げ幅を抑える。

南海電鉄の泉佐野駅。【撮影:草町義和】

普通運賃の改定率は9%。初乗り運賃は現行160円のところ20円値上げして180円にする。4~15kmの区間は30円の値上げ。16km以上の区間は40円の値上げになる。

定期運賃の改定率は通勤12.3%、通学4.5%。割引率は通勤定期で現行38.8%から37%に引き下げるが、通学定期は現行79.1%から80.2%に引き上げる。鋼索線(高野山ケーブル)の運賃と空港線の加算運賃は据え置く。

南海電鉄は認可を受け、上限運賃より安い特定運賃の新設を届け出た。対象区間は難波~中百舌鳥の範囲内で現行運賃が340円の8区間。改定後の上限額は370円になるが、350円の特定運賃を設定して値上げ幅を10円に抑える。りんくうタウン~関西空港の特定運賃(370円)は変更しない。

特定運賃の適用前(左)と適用後(右)の運賃額。8区間(黄)で上限額より安くなる。【画像:南海電鉄】

国土交通省は今回の認可に際して2029年3月31日までの期限を設け、運賃改定後の2024年度から3年間の総収入と総括原価の実績を確認するという条件を付けた。

南海電鉄の鉄道事業は新型コロナの影響などを受け、2年連続で営業損失を計上。2023年度の利用者数はコロナ禍前の2019年度に比べ8.5%の減少を見込んでいる。今後も沿線の生産年齢人口の減少やテレワークの進展などでコロナ禍前の利用者数までは回復しない見通しだ。

その一方で自然災害対策や踏切・車内防犯などの安全対策、老朽化した車両の更新、バリアフリー化の促進など、コロナ禍前と同じ水準の設備投資を行っていく必要がある。こうしたことから南海電鉄は運賃の値上げを決めた。

《関連記事》
南海電鉄「値上げ」申請、来年10月から 初乗り180円、観光列車は「新造特急」に
大手私鉄「回数券廃止」過半数超えへ 4月までに11社が終了