新型名阪特急「ひのとり」(近鉄80000系)乗車記|近鉄名古屋→大阪難波

新型名阪甲特急80000系「ひのとり」。

デビューからなかなか乗る機会に恵まれなかったが,ようやく乗車することができた。

今回は,出張ではなく,おでかけで利用。近鉄名古屋から大阪難波までレギュラーシートに乗って来た。

この記事では,「ひのとり」の運賃や所要時間といった概要についてまとめたあと,実際に乗車したようすを紹介する。

80000系「ひのとり」レギュラーシート乗車記

先月下旬,東海道新幹線N700Sで大阪出張してきたわけだが,それから1カ月も経たないうちに,こんどは個人的に大阪へお出かけしてきた。

大阪出張で泊まったホテルがとても快適で,ぜひともまた泊まりに来たい!出張で食べられなかったおいしい大阪名物を食い倒れたい!と思ったのだ。

で,せっかく大阪へ出かけるのに,また新幹線に乗るのは芸が無い。そういうわけで,2020年3月にデビューして,未だに乗車できていなかった新型名阪特急「ひのとり」(近鉄特急80000系)に乗って行くことにした。

最近の名阪特急

名阪特急には,途中,原則として津のみに停車するこう特急(速達タイプ)と,もう少し停車駅が多いおつ特急(停車タイプ)とがある。甲特急には,2020年3月から80000系電車「ひのとり」が充当されている。近鉄名古屋駅もしくは大阪難波駅を毎時00分(一部例外あり)に出発する。最新電車が投入され,天下の東海道新幹線と競合する,まさに近鉄特急の花形列車の1つだといえる。

引用元:特急ひのとり|近畿日本鉄道

ちなみに乙特急には,「ひのとり」以前に甲特急として活躍した21000系「アーバンライナーplus」(カモノハシ顔)および21020系「アーバンライナーnext」(plusよりもうちょっとシュッとした顔)が充当されている。

かつての甲特急「アーバンライナーnext」21020系。現在は名阪乙特急および一部の名伊特急として活躍中。

この21020系,最近では,名阪特急のみならず,一部の名伊特急(名古屋⇔伊勢方面の特急)としても活躍しているらしい。ちょうどこの日,4番線から出発する五十鈴川ゆきの特急を見ることができた。

関連記事 近鉄特急アーバンライナー予約まとめ|学割で名古屋大阪を安く移動する

特急券はネット予約!10%ポイント還元

近鉄では,特急券のインターネット予約・販売を行っていて,「ひのとり」の特急券は,乗車前にネットから購入できる(なお,別途,乗車券(運賃部分)が必要)。

インターネット予約は,

  • 窓口で並ぶ必要がない
  • 座席表(シートマップ)を見ながら好きな席を選べる
  • チケットレスで駅でのきっぷ受取が不要
  • クレジットカードで支払い可能
  • 3回まで列車・席・人数変更が可能

といった利点があって,窓口で買うよりも格段に便利だ。

サービスについては,公式ページもしくはQ&A|特急券のインターネット予約近畿日本鉄道に詳しい。

今回は実際にネット予約でチケットを買った。購入が完了すると,以下の画面が出てきて,これをスクリーンショットするだけでOK。駅で紙のきっぷに引き換える必要が無いのが嬉しい。

さらに,インターネットを通して特急券を予約すると,購入額の10%ポイント還元されるというオマケ付き!これは,ネット予約を促すための施策と思われるけど,10%という高還元率はなかなか太っ腹。利用しない手はない。

参考 近鉄特急netポイントサービス ご利用ガイド

「ひのとり」の料金|近鉄名古屋→大阪難波

今回,「ひのとり」に名古屋から大阪難波まで乗車した。

特急料金は,1,930円「ひのとりレギュラー料金」200円2,130円(※これまでの「アーバンライナー」では不要だった特別車両料金が加算されることに注意)。

別途必要な乗車券(運賃)は,2,410円(近鉄名古屋⇔大阪難波)。乗車券については,ICカードで乗車できるので,こちらについても紙のきっぷを買う必要がないので,完全チケットレスで乗車できる(駅の改札でピッとすればOK!近鉄では,新幹線のように特急券を改札に入れる必要はない)。

※私はまだ学生なので,乗車券部分が2割引きになる「学割」を利用した。ただし,学割乗車券は窓口のみでの販売なので,別途購入が必要だった。詳しくは近鉄特急アーバンライナー予約まとめ|学割で名古屋大阪を安く移動するも参照。

以上から,「ひのとり」に近鉄名古屋から大阪難波まで乗車した時の料金は4,540円(乗車券2,410円+特急券2,130円)。

公式 特急ひのとり|近畿日本鉄道

新幹線の料金・所要時間との比較

競合する東海道新幹線名古屋⇔新大阪間にある米原駅に入線するN700系|冬晴れの米原駅で東海道新幹線を撮影してきた【PENTAX望遠】

ちなみに,東海道新幹線の料金(名古屋⇔新大阪)は,

  • のぞみ・指定席・通常期で6,680円(運賃:3,410円+特急券:3,270円[A])
  • ひかり・こだま指定席・通常期で6,470円(運賃:3,410円+特急券:[A]-210円=3,060円[B])
  • 自由席だと種別によらず5,940円(運賃:3,410円+特急券:[B]-530円=2,530円)

したがって,「ひのとり」と「のぞみ」の差額は△2,140円。「ひかり」との差額は△1,930円,自由席だと△1,400円となる。もちろん,新幹線にも「ひのとり」にも,割引きっぷはあるけれど,ここでは正規料金で比較した。

※目的地が難波(ミナミ)の場合は,新幹線の料金に加えて,新大阪→なんば(大阪メトロ)間の地下鉄の運賃:280円が別途必要となる。

次に,所要時間は以下の通り。

列車所要時間「ひのとり」との差
近鉄特急「ひのとり」約130分±0
東海道新幹線「のぞみ」約50分-80分 (1時間20分)
東海道新幹線「こだま」約70分-60分 (1時間)

以上から,「ひのとり」は新幹線より1時間くらい余分に時間がかかるけど,その分2,000円くらい安く移動できるということになる。

ただし,ここでの比較は時間と料金だけの単純な比較にとどまっている。1時間の速達に2,000円追加で払うかどうかは,個人の価値観や,大阪に着いてからのやりたいことに依存する。ただ,私が今回「ひのとり」に乗車してみて,この料金差は十分妥当に感じた。特に,なんばでの観光がメインで,急がないのであれば,「ひのとり」の方がベターだと思った。

近鉄名古屋駅5番ホームにやってきた「ひのとり」

さて,そんな「ひのとり」に乗車するために,近鉄名古屋駅にやってきた。

学割の乗車券を,有人窓口で購入して,改札へ通した。先ほども書いたように,近鉄では特急券を改札へ通す必要がない(今回は,特急券はネット予約したので,そもそも乗車券しかなかった)。よく新幹線を利用するひとは,「乗車券と特急券を重ねて入れる」ことに慣れているかもしれないので,注意が必要だ。

大阪ゆき「ひのとり」は5番ホームから出発する。各方面への列車がせわしなく出発するホームのベンチで待っていると,出発時刻(9時)の10分少々前に,ゆっくりと入線してきた。

「ひのとり」の列車番号

今回,乗車するのは,

特急「ひのとり」59レ
近鉄名古屋9:00→大阪難波11:08

だ。

こちらは,車体側面のLEDの案内表示。「ひのとり」は愛称のようなもの。実際にはすべての特急列車に,それらを区別するための番号が附番されている。たとえば,アーバンライナーにも列車番号が付いている。で,この「ひのとり」は,「59」という番号のついた特急列車というわけだ。

ちなみに,先代の甲特急「アーバンライナー」では,このように列車番号を付して呼ぶことはなかったように記憶している。しかしひのとりでは,「ひのとりXY列車」と,列車番号を附番して呼ぶようになっていた。

「ひのとり」は基本的に,大阪難波および近鉄名古屋を毎時00分に出発するので,列車番号がその出発時をベースに附番されている。大阪難波発列車は,列車番号=出発時,名古屋発列車は,列車番号=50+出発時となっている。たとえば,以下のような具合だ。

大阪難波→近鉄名古屋:11時発の「ひのとり」=ひのとり11列車
近鉄名古屋→大阪難波:9時発の「ひのとり」=ひのとり59列車

これを知っておくと,列車番号を見るだけで何時発の「ひのとり」かわかる(逆もしかり)ので便利だ。

グッドデザイン賞を受賞した車輛

車内へ入って荷物を置いた後,外から車両をじっくり眺めた。こうしてみると,深紅の車体カラーが非常に美しい。日本国内の鉄道車両で,こういった深紅のカラーはまず見たことがないので,とても斬新に感じられた。まだ新しい車両で,洗車も良くされているようで,ホームの照明やひとが車体に映り込んでいた。

そして,近鉄の線路は標準軌(軌間=1435mm)で,JR在来線(狭軌:軌間=1067mm)より広い。ゆえに,車体自体も大きく見えた(実際,JR在来線車両より大きいと思われる)。特に,高さがあるように感じられた。それでいて,野暮ったくない,スリムなデザインに仕上がっていると見えた。そんなわけで,80000系「ひのとり」は一度見たら,乗らずにはいられない,鉄道マニアはもちろん,鉄道に詳しくないひとでも「かっこいい」「乗ってみたい」と思わせるデザインだと感じた。

この洗練されたデザインにより,80000系は,2021年鉄道友の会ブルーリボン賞2020年グッドデザイン賞を受賞している。前者は,鉄道車両の中から選ばれるが,後者は,「製品、建築、ソフトウェア、システム、サービスなど、私たちを取りまくさまざまなものごと」に贈られる[Link]。つまり,この車両が,鉄道としてのみならず,一般にもすぐれたデザインとして評価されていることがわかる。

車体側面には,「ひのとり」をあしらった金色のロゴが配されている。

これは,車内座席カバーや,そのほか各所にもデザインされている。ちなみに,名称の由来は,

「ひのとり」という名称は、先進的でスピード感ある車体フォルム、深い艶感のあるメタリックレッドといった外観デザインに加え、ゆったりとした空間や上質なサービスを提供する気品ある車両のイメージを、翼を大きく広げて飛翔する「ひのとり」に重ね合わせて命名しました。

ひのとりとは|特急ひのとり|近畿日本鉄道

だそう。たしかに,その由来の通りの外観だ。

全席バックシェル&フットレストのくつろぎ空間

外観もさることながら,「ひのとり」に乗車するうえで,最大の魅力といっていいポイントは車内にある。

それは,レギュラーシートをふくめた「全席バックシェル」搭載ということだ。

80000系「ひのとり」レギュラーシートのバックシェル

「バックシェル」とは,バック(=後ろの)シェル(=貝殻)という名前の通り,座席の後ろに貝殻のような大きなカバーが付いている機能のこと。80000系には,これがすべての座席についている。

この機能のなにが嬉しいかというと…

リクライニングするときに,後ろの座席を気にしなくていいのだ。

バックシェルのついていない座席(たとえば新幹線の普通車)だと,背もたれ(リクライニング)を倒すと,それが後ろの座席に対してもそのまま傾いてくる。最近では,ごく一般的な「マナー」として,「リクライニングするときは後ろの乗客に配慮する」ことが定着こそすれ,前の座席のリクライニングが容赦なくて,足元が狭くなったり,背面テーブルが使いづらくなったりして,辟易した経験をお持ちの方もいるだろう。

それに対して「ひのとり」では,レギュラーシートをふくめ,その心配はない。座席のリクライニングは,バックシェル内で行われるようになっていて,後ろには全く影響しない。もちろん,自分が後ろの座席のことを気にする必要もなく,思い切りリクライニングできる。

なお,バックシェルは結構な大きさなので,窮屈さを感じそうに見えるかもしれない。しかし実際は車内空間が広いので,バックシェルがあっても狭苦しさは感じない。むしろ,プライベート感があって落ち着くくらいだ。

ちなみにバックシェルにはフットレストも搭載されている。これは,JRの特急にありがちな簡素なものではなく,ペダルをふむと上下の高さを調節できるスグレモノ。うまく調整すれば,リクライニングと相まって「極上」の乗り心地を手にすることができる。これがレギュラーシート(普通席)で(しかも,新幹線よりも安い価格で)手に入るのだから,素晴らしい。

揺れが少なく快適な乗り心地

1月3連休の初日ということで,乗車した3号車レギュラーシートは,窓側はほとんどすべて,通路側も多くが埋まっており,満席に近かった。

しかし,車高が高く,標準軌で揺れが少ない「ひのとり」の車内は,快適そのもの。先ほどのバックシェルと広い車内空間も相まって,人の多さを感じさせない,快適な乗り心地だった。

「ひのとり」は,途中,津のみに停車し,伊勢中川の短絡線を通って,名古屋線から大阪線へと入ったのち,終点の大阪難波まで奈良県内を経由しつつ走る。この間,車窓は,都心部から郊外,山間部,平野と移り,最後は都心へ,とバラエティに富んだものだ。窓も新幹線より大きく,2時間の乗車を飽きさせない。

伊勢中川付近のデルタ線。「ひのとり」は,伊勢中川駅へ入線せず,名古屋線から短絡線を通って大阪線へと向かう。

もちろん,車窓だけでなく,くつろげる座席で好きなことをするのもいい。「ひのとり」には,「Free Wi-Fi」が完備されている。これに接続すると,「無料で週刊誌や旅行ガイドなどの雑誌やビジネス書(要約)を閲覧いただけるサービス」を楽しむこともできるようだ[Link]。2時間の乗車にちょうど良く,この書籍閲覧サービスはいいサービスと思った。

以上のように,車内空間においては,新幹線の普通車を圧倒している「ひのとり」で,ゆっくりと大阪難波まで移動できた。2時間の移動も疲れ知らずで,なんばに着いてからの観光も楽しむことができた。

>>【食欲】写真でつづる大阪うまいものめぐり(2023年1月)

なるべく長くならないように努めてきたつもりだったが,「ひのとり」80000系があまりに洗練されていて,設備があまりにも充実していて,気づいたらこんなに長文になってしまった。

最近,Z世代のあいだでは「コスパ=コストパフォーマンス」のみならず,「タイパ=タイムパフォーマンス」を考えるのが流行っているらしい。Z世代でなくても,最近,情報化の波に押されて,どこか「生き急いでいる」人が多いように感じられる。そんな時代にあって,せめて趣味や旅行くらいは,時間に追われずゆったりと楽しむべきではないだろうか?

名古屋から大阪まで旅行しに行くなら,50分,まさにあっという間に移動できる新幹線もいいけれど,新幹線よりもゆとりの時間を過ごせて,そのうえ,ちょっと節約にもなる「ひのとり」はすばらしい移動手段だと感じた。

「ひのとり」でゆとりの時間,おすすめです。

(おわり)

「ひのとり」について詳しくはこちら。

特急ひのとり|近畿日本鉄道
名阪特急ひのとり 移動時間を、くつろぎの時間へ。「くつろぎのアップグレード」をコンセプトとした、これまでにない移動空間をもつ特急です。

帰りは,ちょっと贅沢して「プレミアムシート」に乗って来た。

>>近鉄特急「ひのとり」プレミアムシート乗車記|大阪難波→近鉄名古屋

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