高尾駅「いつでも通り抜け可能」南北自由通路が再始動 寺社風駅舎はどうなる?



計画の見直しで事業着手が延期されていた高尾駅(東京都八王子市)の南北自由通路の整備が、再開に向け動き出した。昨年2022年12月26日、八王子市・JR東日本・京王電鉄の3者が基本協定を締結。2026年度以降の工事着手を目指す。

南北自由通路が整備される高尾駅のJR中央線ホーム。【撮影:草町義和】

再開に向け改めてまとめられた周辺整備事業の概要によると、24時間無料で通行可能な南北自由通路(約100m)を整備。JR中央線のホーム上にJRの橋上駅舎を整備して自由通路と接続する。京王線の高尾駅は自由通路の西側に駅機能を集約。東側には南口駅前広場に抜ける通路(コンコース)を設ける。同時に北口駅前広場の改修も行う。

現在の高尾駅の平面図。南北の移動は大回りして踏切を渡るか、入場券を買って改札内の跨線橋を渡るしかない。【画像:八王子市】
南北自由通路完成後の平面図。JR駅舎は橋上化される。【画像:八王子市】

高尾駅は北側にJR線、南側に京王高尾線が乗り入れている。南北両側に改札口がそれぞれ設置されているが自由通路はない。このため踏切を渡って大きく迂回(うかい)するか、入場券を購入して改札内の東京寄り跨線橋を通り抜ける必要がある。2000年頃から改善を求める声が高まり、3者は南北自由通路の整備に関する基本協定を2014年に締結。2015年度には自由通路と北口駅前広場の都市計画が決定した。

当初は2018年度から南北自由通路の工事に着手する予定だった。東京オリンピック・パラリンピックの影響による物価高騰で事業費が当初予定の88億円から150億円に膨張することが明らかになり、3者は2017年に着工の延期を決定。計画を見直して改めて基本協定を締結した。新しい計画では自由通路の幅を旧計画の10mから6mに縮小。駅舎のスペースも縮小して事業費の縮減を図る。

今後は2023年度から2024年度にかけて基本設計と実施設計を行い、2025年度に都市計画の変更手続きを実施。2026年度以降で早期の工事着手を目指す。

寺社風の駅舎が特徴的な高尾駅(北口)。【撮影:草町義和】

JR高尾駅の北口には1927年に完成した寺社風の木造駅舎がある。この駅舎は大正天皇の大喪の礼に際して設置された新宿御苑の臨時駅で使われた部材を使って建設したものとされる。「地域のシンボル」「貴重な外観デザインを有した文化財的価値のある建築物」として保存されることが決まり、従来の計画では東浅川保健福祉センター(旧・陵南会館跡地)の駐車場に移築する予定だった。しかし今回の南北自由通路の計画再始動に伴い、JR東日本が現在地周辺での再築を検討することになった。

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