ひろば 研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

津軽線の一部が廃止されるか?

2022年12月19日 23時35分00秒 | 社会・経済

 今日(2022年12月19日)の21時34分付で、時事通信社が「津軽線、廃線含め地元と協議へ 大雨の被災区間―JR東」(https://www.jiji.com/jc/article?k=2022121900998&g=eco)として報じています。非常に短い記事ですが、気になるものですので、紹介しておきます。

 津軽線は、青森駅から三厩駅までの56キロメートル程の路線です。かつては全線非電化の路線でしたが、青函トンネルの開通とともに姿を大きく変えました。但し、それは青森駅から新中小国信号場までの話で、この区間はJR北海道の海峡線と合わせて津軽海峡線と呼ばれ、交流25,000ボルト50ヘルツで電化されています。一方、残りの区間である新中小国信号場から三厩駅までは非電化のままです。

 今回(今日のことです)、JR東日本が地元自治体(青森県、外ヶ浜町、今別町)と協議を進める意向を明らかにしたのは、蟹田駅から三厩駅までの区間です。今年8月の大雨による被害を受けて現在も運休しているのですが、赤字路線ということで廃線にしようという意思が見えてきます。自然災害で運行休止となる鉄道路線は多いのですが、どのような位置づけであるかによって復旧か廃止かが分かれることとなります。とくに最近は復旧ではなく廃止が選択されることが多くなっているように思えます。費用対効果などを考えるとやむをえないところですが、もう公共交通機関全体が成り立たない地域が続々と現れており、バス転換では済まない状況にまで追い込まれています。おそらく、津軽線の沿線も同じような状況でしょう。

 ただ、蟹田駅から新中小国信号場までの区間は、旅客運輸をやめるとしても貨物運送が残るでしょう。そのため、海峡線との接続を中止するとも思えません。もっとも、北海道新幹線の延伸で函館本線の長万部駅から小樽駅までの区間が廃止される可能性(少なくとも、旅客運送の廃止の可能性)は非常に高く、貨物運送もどうなるかわかりませんので、津軽線全体の動向も気になるところです。

 なお、津軽線は、1980年代、輸送密度の点からすれば特定地方交通線の指定を受けてもおかしくなかったのですが、除外要件に該当するということで指定を受けなかったのでした。ここは注意しなければならないでしょう。

 1990年代から現在まで、元国鉄の路線で廃止された路線または第三セクター化された路線を見ると、深名線、江差線、三江線、岩泉線など、特定地方交通線の指定の除外要件に該当したところが目立ちます。最近であれば、北海道医療大学駅から新十津川駅までの区間が廃止された札沼線、鵡川駅から様似駅までの区間が廃止された日高本線、留萌駅から増毛駅までの区間が既に廃止され、2023年3月には石狩沼田駅から留萌駅までの区間も廃止される留萌本線を例としてあげることができます。

 廃線議論があちらこちらで取り上げられ、YouTubeの動画でも解説なり分析なりが行われていますが、1980年代の特定地方交通線、さらに遡って1960年代後半の赤字83線にまで遡って検討などを行っている人は少ないように思われます。不十分であると評価せざるをえません。廃止の可能性が取り沙汰されている鉄道路線の多くは、何も最近になってから問題が生じた訳ではなく、長年にわたって問題が抱え込まれたままであったのでした。今一度、特定地方交通線について歴史的な観点も踏まえた検討をしなければならないでしょう。


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