幻に終わった鉄道計画を探る『未成線の謎』全国45路線を詳説 河出書房新社



河出書房新社は11月28日、『開封!鉄道秘史 未成線の謎』(森口誠之)を刊行した。四六判240ページで1562円。

森口誠之さんの『開封!鉄道秘史 未成線の謎』。【画像:河出書房新社】

「未成線」は未完成の鉄道路線のこと。リニア中央新幹線など工事中の路線も未成線だが、鉄道マニアのあいだでは計画や工事が途中で中止され幻に終わった鉄道路線を指すことが多い。著者の森口さんによると、こうした未成線は昭和期だけで私鉄に約7000km、国鉄に8000km存在したという。

この本では全国各地に計画された45の未成線を8章に分け、それぞれの未成線の歴史や工事の痕跡などを路線図や写真を交えながら詳説。なぜ未成線が「誕生」するのかも解説している。各章の概要は次の通り。

1章:東京・大阪の都心直通新線を阻む壁(南海電気鉄道堺筋線など)
2章:東京の市域拡張と郊外電鉄の計画(大東京鉄道など)
3章:関西大手私鉄の新線免許をめぐる争奪戦(宝塚尼崎電気鉄道など)
4章:ニュータウン開発の軸となった鉄道計画(京王電鉄相模原線など)
5章:地方で企画された都市間連絡鉄道(加越能鉄道加越新線など)
6章:戦争下、優先的に整備された軍需路線(国鉄戸井線など)
7章:北海道の戦後総合計画を見据えた国鉄新線(国鉄名羽線など)
8章:「負の遺産」国鉄未成線、利活用の方法(国鉄油須原線など)

第6章で取り上げている国鉄戸井線。【画像:河出書房新社】

森口さんは未成線研究の第一人者で、1990年代から運輸省(現在の国土交通省)や国立公文書館などが所蔵する免許申請書などの一次資料に基づき未成線を調査、研究している。2001~2002年には未成線研究のバイブル的な存在といえる『鉄道未成線を歩く』(日本交通公社)を刊行した。

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