福岡市営地下鉄空港線に乗り入れるJR九州の305系は、九州地区では珍しい直流通勤形電車の最新版です。2015年にデビューし、筑肥線からの直通運転用だった103系1500番台を置き換えました。現在は6両編成6本が福岡空港ー西唐津間で、303系(6両編成3本)とともに活躍しています。

 

 

ブラックフェイスと白い車体が印象的な305系。貫通扉の有無の違いはありますが、額縁スタイル、前面窓の比率、丸いライトは、JR東日本の205系後期型(メルヘン顔)に似ている気がします=下山門駅、2019年

 

 

 

305系は飾り気のない全面ブラックフェイス。アルミニウム合金製の白い車体はストレートな形状で、いかにも直流通勤形電車といった感があります。JR九州の車両群の中では比較的シンプルで、地下鉄直通の前モデル303系よりも「通勤形」らしい外観です。

 

一方で、車内は工業デザイナー・水戸岡鋭治さんのカラーが随所に出ています。特徴的なのは唐津方先頭車となる1号車のクハ305形。この車両だけ「唐津への観光気分を湧き立てる」のコンセプトで、床がフローリングとなっています。305系は座席の柄が11種類あることも異例で、モダンな内装はとても「通勤形」には見えません。

 

 

1号車のクハ305形の車内。フローリングの床は通勤形とは思えません

 

305系のオシャレな座席。これまでの通勤電車の概念を打ち破ったようにも感じます。近年のJR九州ではよく見かける背もたれが合板になったタイプですが、柄がいろいろあるようで楽しめます

 

 

ドアには特急あそぼーい!のキャラクター犬「くろちゃん」がいます。遊び心的なアクセントのようで、いろんな動きをしているようです

 

 

 

ただ、このオシャレな座席は長時間乗車には適していないようです。通勤電車に過度な快適性はもちろん期待できませんが、背もたれ部分が合板で作られていて、個人的には背中が痛く感じます(座面は程よい硬さと思えば許容範囲ですが…)。

 

観光気分をうたった1号車だけでも違う座席にしてもよかったのでは…とも思いますが、コストやメンテナンス面などで難しいのかもしれません。

 

 

筑前前原駅で福岡市交の2000N系(左)と並ぶ305系。前者は元は2000系を名乗り、東急2000系や京王8000系に似たGTOのVVVFインバータ制御の走行音が人気でしたが、リニューアルを受けて換装されてしまったようです…

 

 

 

東京から遠く離れた交流電車王国の九州で、聞き慣れたドアチャイムの直流通勤形電車に乗るのは、なんだか不思議な気分です。JR九州では異色の車両ですが、福岡市中心部を走っているため乗車機会は多いように思います。

 

市民以外でも買い物や出張などで福岡空港、JR博多駅、繁華街の天神を行き来する際には見かけることがあるでしょう。ちょっとモダンな通勤電車305系、今後も末永い活躍が期待されます。

 

 

 

※福岡市営地下鉄への直通車は以下の記事をご覧ください