京急では1996年に製造された600形4次車からシングルアームパンタグラフを採用しています。
では、シングルアームパンタグラフを採用する前はというと、下枠交差型ではなく、菱形パンタグラフでした。
いったいどうしてなのでしょうか?
菱形からシングルアームへの変更タイミング
京急600形3次車までは、(ツイングルシート等のトリッキーなギミックを除いて)1500形のVVVFインバータ搭載車とほぼ同じ機器構成でした。
形式が変わっても機器構成がほぼ同じということは、それだけ1500形VVVF車の完成度が高かったと言えます。
600形4次車の設計にあたって、8両・6両・4両の組み換えに対応可能な様に、機器構成の大幅変更を行っており、パンタグラフも変更対象の一つでした。
パンタグラフは、600形3次車まで菱形パンタグラフが採用されていましたが、600形4次車の機器構成の変更に伴って、シングルアームパンタグラフが京急で初めて採用されています。
600形4次車以降(2100形、2代目1000形)のパンタグラフは、シングルアームパンタグラフが標準搭載となりました。
何故、下枠交差型パンタグラフが採用されなかった?
JRや大手私鉄等、パンタグラフの変遷は、
- 菱形パンタグラフ
- 下枠交差型パンタグラフ
- シングルアームパンタグラフ
という順番ですが、京急の場合は、先述した通り、
- 菱形パンタグラフ
- シングルアームパンタグラフ
と変遷しており、下枠交差型パンタグラフを採用していません。
何故か…というと、推測になってしまいますが、要因としては、
- シングルアームパンタグラフ採用が広がっていた
- 下枠交差型パンタグラフのメリットが無かった
の2つが考えられます。
シングルアームパンタグラフ採用が広がっていた
日本で初めてシングルアームパンタグラを本格採用したのは、1990年に登場した大阪市交通局70系(現・大阪メトロ)です。あのクセになる接近・発車メロディーを擁する長堀鶴見緑地線の車両です。
そこから徐々にシングルアームパンタグラフの採用が広がっていきます。
シングルアームパンタグラを搭載した600形4次車は、大阪市交通局70系が登場した6年後の1996年に製造されています。なので、京急のシングルアームパンタグラ採用が劇的に早いわけでもありません。
京急600形と同時期に製造された車両だと、小田急30000形が小田急で初めてシングルアームパンタグラフを採用しています。
なので、600形4次車の設計段階で、他社で既にシングルアームパンタグラフの導入実績があるシングルアームパンタグラフを採用したことは、ごく自然な流れと考えられます。
下枠交差型パンタグラフのメリットが無かった
1500形の製造途中や、600形新造時に下枠交差型パンタグラフに変えるタイミングがあったかもしれません。
とは言え、実績と保守整備のノウハウのある菱形パンタグラフから、下枠交差型に変えるメリットが劇的なものでは無かったことも要因の一つとして考えられます。
メンテナンス観点で考えると、菱形・下枠交差型よりもメンテナンスが容易なシングルアームパンタグラフが登場・普及してきたタイミングで、シングルアームパンタグラフの採用したのは、妥当と言えるでしょう。
菱形パンタグラフを大量発注している場合は、わざわざ下枠交差型パンタグラフに変更する必要はありませんし、菱形→下枠交差型に変えることで、パンタグラフが混在してしまい、保守整備でかえってコストがかかることも考えられます。
編集後記
でも真相は謎だわね😺💧
参考文献
『鉄道ピクトリアル No.935 2017年8月号臨時増刊 【特集】京浜急行電鉄』 株式会社電気車研究会
関連リンク
小田急がシングルアーム式パンタグラフを採用するまでの動きとは|Odapedia(個人サイト様)