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「移動等円滑化取組計画書」と実際の車両動向が嚙み合わない理由

車両動向
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「移動等円滑化取組計画書」及び「移動等円滑化取組報告書」とは、令和元年度からバリアフリー法(正式名称:高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)が改正されたことによるもので、一定の規模以上の人が利用する公共交通事業者などに対し、毎年度、その年度の計画書と前年度の取り組みの実績を記した書類を、国(国土交通省)に提出することが義務付けられています。その中で、鉄軌道に関する資料では車両の新製や改造する両数などの計画などが記載されていることが多くあります。しかし、その計画書と実際の動向が矛盾していることがあります。一体、どうしてなのでしょうか。

最近の具体的な例は?

今年度で既に公表されている計画に矛盾が生じています。実際に見ていきましょう。

東京メトロ18000系

移動等円滑化取組計画書には、今年度に半蔵門線用の18000系が5編成を新製すると記載されていますが、実際にはそれを超えて増備されています。
これは無線全般の「デジタル化」が関係していると見られます。昨今の情勢により、簡易無線局を除くデジタル無線の使用期限は現在無いものの、早期のデジタル化が望ましいですし、音声の高音質化が出来るなどのメリットがあります。そこで、東武鉄道は数年前より車両へのデジタル列車無線が設置の工事が進められています。現在運用されている車両はほぼ工事が完了し、東武線のデジタル無線化(=デジタル列車無線開局)は踏んだり蹴ったりが続いていますが、直通先の東京メトロ8000系、東急8500系の一部編成は未だに従来のアナログ列車無線と誘導無線しか搭載されていません。東急は8500系が1月の運行を最後に定期運用を終了させることを公表しており、東京メトロは8000系の検査期限が迫っていない編成をデジタル列車無線化し、検査期限の迫っている8000系を廃車し、18000系へ置き換えることで対応しようとしていることが、直近の動向や公開資料から推測されます。現在、新木場CRに入場している8116Fの設置を以って、8000系8編成への設置が終わる見込みです。

8000系のデジタル列車無線化の第1編成目は8101Fで、2021年11月下旬を最後に運用から離脱しているため、その時点で18000系は6編成以上の増備することがほぼ確定されていても、おかしくはないと私は思っています。

なお、参考までに、2021年4月8日に「半蔵門線車両のSデジタル空間波無線装置部品の購入」の調達が、今年1月に公表されています。2021年4月時点は08系への無線の設置が始まっているため、8000系への調達であることが窺えます。この時に既に8編成への設置が決まっていたのでしょうか…。

JR東日本E235系1000番台

こちらも、今年度となります。
JR東日本の移動等円滑化取組計画書には在来線が13編成108両増備されると記載されていました。E235系1000番台だけが増備されるとしたら、基本編成が5編成55両、付属編成が3編成12両増備されると推測されます。しかし、実際の新製両数は、総合車両製作所(以下、J-TREC)新津事業所構内やグリーン車の車体表記から、少なくとも基本編成が9編成99両、付属編成が6編成24両、総計15編成123両が増備されそうで、年内にF-22編成、J-19編成が出場する見込みです。なお、J-TREC新津ではSR1系の製造が確認されており、月間とれいんで12月にSR1系の甲種輸送の予定が確認できないため、年明けの早いうちに出場してくると見られ、前述した2編成が出場すると、E235系1000番台は次年度まで、新製はしないかも知れません。
補足までに、JR東日本の場合は編成単位での新製しか記載されませんので、中央線用のグリーン車の新製両数は記載されません。

E235系の新製両数が計画書と実際の動向が異なる現象、①原材料価格の高騰、②半導体不足、③感染症拡大などによる経営不振が挙げられ、これにより計画が二転三転している可能性があります。なお、記載内容が古いのか、それとも年度内の変更なのか、よく分かりませんが、年度内の急な変更、特に仕事が突然増えるとは困るので、その情報が古いのではないかと私は考えます。

2020年5月以降、2023年までの4年でE217系を置き換えていく

鎌倉向けE235系投入について – 4号車の5号車寄り (4gousya.net)より

2019年当時の計画では来年度にはE217系が全廃され置き換えが完了する予定されていました。
E235系1000番台がデビューしたのは2020年12月で、感染症拡大した2020年の年末で、置き換え時期完了時期は示されていませんでした。

余談ですが、E217系の一部は車体・装置保全(一般的な全般検査に相当)が行われ、E235系の投入ペースも鈍化しており、来年度以降も引き続きE217系の活躍が見られるかも知れません。

まとめ

移動等円滑化取組計画書と実際の動向が異なる現象、その一番の理由が「公表時点でその記載内容の情報が、公開時点で古い情報である可能性が高い」ことが挙げられそうで、私はこの可能性を推したいです。実際に年度中に急遽変更する、なんて例もあるかも知れません。
また、経済見通しも全く不透明なこともあり、年度初頭に公表された計画と実際の動向が異なるという事例は今後も続くかも知れません。

参考資料

1, 東京地下鉄「【2022年度】移動等円滑化取組計画書(第1号様式)」
https://www.tokyometro.jp/safety/barrierfree/pdf/barrierfree_top_220630a.pdf

2, 東京地下鉄「20220119落札者等の公示(半蔵門線車両のSデジタル空間波無線装置部品の購入)」
https://www.tokyometro.jp/corporate/business/procurement/pdf/dd8c4f3c7be6b75e27ba34e904d6a2f2.pdf

3, 東日本旅客鉄道「2022年度移動等円滑化取組計画書」
https://www.jreast.co.jp/company/csr/barrier_free/pdf/barrier_free2022.pdf

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