約3500両が製造された国鉄通勤形電車の顔103系。後継形式への置き換えで残りが少なくなる中、九州では「末弟」といえる1500番台がJR筑肥線のローカル輸送で活躍を続けています。登場から40年、今の様子を訪ねてみました。

 

 

JR筑肥線のローカル区間を行く3両編成の103系1500番台。写真は唐津方先頭車がモハ103形から改造されたクモハ103形となるE12編成=加布里ー一貴山

 

 

 

103系1500番台は1982(昭和57)年に、直流電化され新たな形態となる筑肥線から福岡市営地下鉄線へ乗り入れる車両としてデビュー。103系の足回り+201系ベースの車体+105系の前頭部という国鉄末期を物語るような構成で計54両が製造されました。

 

後継形式305系の登場により、本来の使用目的であった地下鉄区間への乗り入れは2015年3月に終了。現在はワンマン運転に対応する3両編成が、筑前前原ー西唐津(唐津線)間で細々生き残っています。当初の6両編成をそのまま分割して先頭車化改造したため、クモハ103+モハ102+クハ103形と、クハ103+モハ103+クモハ102形の2種類の編成があります。

 

 

のんびりした田園風景を走る103系1500番台。写真は筑前前原方先頭車がクモハ102となるE13編成

 

 

筑前前原駅で発車を待つE18編成のクモハ1031518。貫通幌はクモハ103形のみに取り付けられています

 

 

クハ103形はスカートの形状が異なります(写真はクハ1031514

 

 

 

博多から福岡市営地下鉄空港線〜JR筑肥線に揺られて約40分。今の103系1500番台の始発駅・筑前前原(福岡県糸島市)に着くと、305系など今どきの車両に埋もれるように、見覚えのあるベテラン車両が待っていました。

 

当初の水色にクリーム色の帯が入った姿は明るく新鮮でしたが、現在は赤とグレーを基調としたJR九州の標準といえる塗装になっています。ただ、側面はアルミ車体の203系のようにも見え、前面は窓まわりがブラックマスクになりますます105系風になっています。

 

 

 

103系1500番台の車内。古さは否めませんが、逆に近年のJR九州にはないシンプルで落ち着いた空間にも見えます。最近では珍しくなった妻面の窓も残っています

 

 

一方でトイレが設置されるなど、時代に合わせた変化も見られます

 

 

 

博多から筑前前原までの305系から103系1500番台に乗り換えると、一気に80年代にタイムスリップしたかのようで、懐かしさが込み上げてきます。暖色系だった座席のモケットは変わったものの、平天井、そで仕切りなど、子どもの頃に「新しい」と感じた内装は、戸袋窓がない以外は同時期に製造されていた201系に似ています。

 

しかし、いざ走り出すとやっぱり103系…。いつものMT55Aのモーター音が車内に響き渡ります。201系の雰囲気と103系サウンドを同時に味わえることが、ある意味1500番台の一番の魅力かもしれません。この甲高い爆音は、線路から離れたところを歩いていてもよく聞こえました。

 

 

走り始めて40年、沿線風景にもすっかり溶け込んでいます=一貴山駅にて

 

 

 

福岡都心部から撤退して7年、のんびり余生を送っている印象の103系1500番台ですが、最近は故障が増えているとも聞きます。交流電化の九州における「直流ローカル区間」という特殊性はあるものの、車齢を考えると先は長くないかも…と感じてしまいます。

 

すっかり貴重な存在になった103系。今回は福岡での所用の合間に足を延ばした形でしたが、同系のファンとしては、今のうちにもう少し訪れておきたいと感じました。

 

 

 

 

※姉妹ブログ「歴鉄2番線」でも、地方を走った103系のことを書いています。よろしければ併せてご覧ください