今回使用したJR東日本パス。赤星が指定席を取った回数を示している

はじめに


今年は(特に鉄道ファンであれば)誰もがご存じの通り、鉄道開業150周年というメモリアルイヤー。10月14日はちょうど新橋~横浜間の開業日、日本初の営業列車が走り始めた重要な記念日です。
さて、そんなおめでたい日を記念してJRをはじめとした鉄道会社は各種イベントや記念グッズを用意してお祭りムードになっている中で、とりわけJR東日本は大胆にも自社管内全線+αの鉄道路線が特急や新幹線(但し原則自由席のみ)も含めて3日間乗り放題という、その名も「JR東日本パス」を鉄道開業日である10月14日から27日までの2週間限定で発売することとなりました。
実際に筆者もこの最強?なフリーパスを早速10月14日から16日までの3日間にわたって利用してみました。今回の記事はその乗車記についてです。

1日目の行程 10月14日

この日の流れとしては、まず、東京駅から上越新幹線始発列車の6時8分発「とき301号」に終点の新潟駅まで乗車しました。新潟駅は昨今の高架化工事を終えたばかりということもあり、駅構内が綺麗に整備されていました。新潟駅へは8時12分に到着した後、当駅で接続する新潟8時22分発の特急「いなほ1号」に乗り換え、終点の秋田駅まで乗車しました。この日は割と好天に恵まれたこともあって、車窓から日本海の絶景を所々で眺めることが出来ました。今度また機会があればその時は快速「海里」に乗車してみたいですね。


ちなみにこの列車に乗り換える際に新幹線ホームと在来線ホームとの間に最近新設された乗り換え改札の手前から長蛇の列が出来ており、座席を無事に確保出来るか不安でしたが、運よく窓側の席を確保することが出来ました。恐らく筆者と同様にJR東日本パスを使った人が多かったのだと思われ、改めてこのきっぷの人気ぶりを実感しました。また、特に翌日以降はその人気ぶり故にある意味ちょっとした地獄を味わうこととなったのですが、それはまた後ほど。

新潟駅に停車中の特急いなほ。自由席に乗る人たちの行列が出来ていました。

さて、秋田駅へは12時5分(定刻より2分遅延)に到着後、筆者は毎週金曜日の夕方からの大学の講義に出席するために秋田12時13分発の秋田新幹線「こまち24号」に大宮まで乗車し、そこから数回の乗り換えで一旦都内の大学まで向かいました。秋田の出発時には空席が多数だったこの列車も、東北新幹線との合流点である盛岡から先は満席に近いほどの混雑ぶりで、割と早めに指定席を取っておいて良かったとこの時の筆者は思いました。お昼ごろに秋田を出発しても夕方ごろには都内に着けるのを考えると、やはり新幹線の異常なまでの速達性を今更ながら実感してしまいました。

大学の講義を終えた筆者は帰宅する他の学生を横目にその後一人で再び東京駅に向かい、そこから東京18時49分発の特急「しおさい9号」に終点の銚子まで乗車しました。銚子には10数分滞在した後に上りの普通列車に乗り(この時間は既に上りの特急が無かったため)、千葉駅で総武快速線に乗り換えて都内に戻り、この日はそのまま帰宅しました。

銚子駅に到着した特急しおさい。この時間にもなれば流石に人もまばらで閑散としていました。

2日目の行程 10月15日

この日、筆者が真っ先に向かったのは新宿駅の中央線ホームです。この日青梅線青梅駅のホーム工事のため前後の河辺~日向和田間の列車が終日運休となり、中央線からの直通列車の行先が河辺行に変更されました。ホリデー快速おくたまも奥多摩ではなく通常時通過する河辺止まりになるといった非常に珍しい光景が見られました。

新宿駅に停車中のホリデー快速おくたま河辺行き。普段では見られない珍しい行き先ということで多くの人が思い思いに撮影していました

新宿での撮影を終えた後、筆者は東京駅経由で品川駅に向かい、そこからは品川7時43分発の特急「ひたち3号」に終点の仙台駅まで乗車しました。実は筆者が前日の18時過ぎに指定席を取った時には何と既に通路側の座席しか空いてなかったほどの混雑で、実際のところ通常は乗客が少ないはずのいわき以北の区間であっても半数以上の乗車率でした。

仙台駅に到着した特急ひたち。首都圏でよく見かけるこの車両がはるばる東北の仙台まで乗り入れる様子はとても違和感がありましたが、まるでかつての長距離特急のようでした

仙台駅へ12時29分に到着後、筆者はそのまま仙台発12時39分発の東北新幹線「やまびこ57号」に乗り換えて終点の盛岡駅まで乗車し、そこから先は盛岡14時7分発の臨時の「はやぶさ55号」に乗り換えて終点の新青森駅まで乗車しました。余談ですが、本来はやぶさは全車指定席なので事前に指定席券を買う(このきっぷでは4回までに限り追加料金なしで入手可)必要があるのですが、盛岡以北は全車指定席の新幹線のみで特例として指定席の空席に乗車出来るので、この制限にはカウントされません。

新青森で15時7分に下車後、ちょうど接続する新青森発15時16分の特急「つがる3号」に一つ隣の青森駅まで乗車しましたが、新青森で乗り換える際にあまりの混雑で乗降に手間取って発車が数分遅れるという事態になり、筆者は運よく座席に座れたものの、案の定自由席は立ち客が出るほどの大混雑でした。そもそも新青森~青森間の特急に関しては元々乗車券のみで乗車可能であるために新幹線からの乗り換え客が非常に多かったのだと思われます。

青森駅に停車中の特急つがる。奥にはリゾートしらかみ青池編成も見える

青森で30分ほど滞在した後、折り返しの青森発15時56分発の特急「つがる6号」に昨日以来の秋田駅まで乗車しました。この時の自由席もやはり新青森を過ぎてからもそこそこの乗車率でした。秋田へ18時41分に到着後、駅ビルの飲食店で夕飯を食べたりお土産を買ったりした後、駅から比較的近くの千秋公園辺りも少し散策してみました。筆者にとって秋田は今回の旅が初訪問でしたが、思った以上に美味しいご当地グルメの宝庫で、それらを食べるだけでも十分に訪れる価値がある場所だと感じました。


秋田にしばらく滞在した後、本日の宿泊地である大館まで秋田発20時31分の普通列車で青森方面に引き返しました。ちなみにこの場所は忠犬ハチ公の故郷であるため、大館駅から程近い場所には忠犬ハチ公像が置かれていました。

秋田駅ビル内で食べた稲庭うどん。コシがしっかりとしていて良い

3日目の行程 10月16日

最終日となったこの日は、最初に先日泊まった大館の宿を早朝に出発し、大館発6時37分発の普通列車で弘前駅まで乗車しました。わざわざ弘前で下車したのは以前から気になっていた弘前城に行くためです。この日の午前中は特に晴天に恵まれ、津軽富士で知られる岩木山を背後に眺めることが出来て良かったです。それからお目当ての弘前城の天守閣に登り、その後すぐにまた弘前駅に戻って弘前9時52分発の普通列車で新青森駅まで乗車しました。

弘前城の天守閣と背後には岩木山。この天守閣は数少ない現存天守の一つで重文に指定されています
弘前駅構内の店舗で食べたアップルパイ。流石日本一のりんごの産地ということもあって、甘くてみずみずしいりんごとサクサクのパイ生地の組み合わせがたまりません

新青森からは新青森発10時39分の東北新幹線「はやぶさ18号」に盛岡まで乗車しました。この列車もやはりそれなりに混んでおり、その上途中で指定席券を持った乗客が筆者の座っていた座席に来た(この時は指定を取らず空席に乗車していた)ので座席を譲ろうとしましたが、どうやらその人も盛岡で降りるとので結局隣の席に座ってきました(盛岡までは指定席券不要で乗れるのにわざわざ指定を取ったのが不思議でしたが)。盛岡に11時43分に到着後、秋田新幹線「こまち18号」との連結を見送り、筆者は後続の「やまびこ60号」に一旦乗り換え、一駅目の新花巻駅まで乗車しました。


新花巻駅は通過線が無いので、はやぶさ号の日本最速である320kmでの通過が目の前で見られることで知られています。次の列車が来るまでの約1時間で3本もの通過列車を見ることが出来ましたが、至近距離での高速通過の迫力は圧倒的です。

すぐ目の前を通過列車が猛スピードで駆け抜ける様はまさに圧巻の一言でした


その後は新花巻発13時20分発「やまびこ62号」で一旦仙台まで乗車し、そこで急遽後続の「はやぶさ24号」で大宮まで先を急ぐこととしました。この列車の指定を取ったのが新花巻に滞在していた時でかなり直前ということもあり、案の定3列席の真ん中しか空いておらず、少々窮屈な状態で大宮まで1時間少々乗車することとなりました。

大宮に到着後、筆者は大宮発15時49分発の北陸新幹線「はくたか569号」に上越妙高駅まで乗車し、当駅で接続する上越妙高17時24分発の特急「しらゆき7号」に終点の新潟駅まで乗車しました。実は仙台で急遽はやぶさ号に乗り換えたのはこの列車に乗るためです。上越妙高駅は今年の8月下旬以来の訪問であり、少し懐かしい気持ちに浸りながら先へ進みました。直江津駅から柏崎駅辺りまでは日本海の近くを走行するので本来であれば日本海の絶景を眺められますが、既に日が落ちていて何も見えなかったのが少し残念でした。

東京駅に停車中の特急わかしお。この列車は10両編成だったのにも関わらず、最終列車ということもあって車内は非常にガラガラでした

おわりに

さて、今回は鉄道開業150周年記念ということで10月14日から期間限定で発売されている「JR東日本パス」を使ってJR東日本管内の南は東京から北は青森にも及ぶかなりの広範囲を3日間にわたって自由自在に移動してみましたが、やはりこのきっぷの効力はすさまじく、特に新幹線や特急が一定の制限はあるものの乗り放題という点は移動時間短縮&快適性にかなり貢献しており、それでいて22,150円という値段設定は非常にお得だと感じました。

また、様々な列車に乗車してみて感じたのは、筆者と同様にこのきっぷを使う人が多かったせいか、どの列車もいつも以上に乗車率が高かったということです。特に本数も少なく普段は比較的空いていそうな列車(例えば特急「ひたち」のいわき~仙台間や、日本海縦貫線を走行する3つの特急など)はそれが顕著に表れていた気がしました。実際、2日目の特急「ひたち」に乗車した時、いわき駅で車掌さん同士が「こんなに混んでいるのは珍しい」との会話を聞き、やはり普段とは桁違いに乗客が多かったようです。補足ですが筆者の体感としては、全車指定席の定期列車の中でも特に乗車率が高かったのが東北新幹線の「はやぶさ」(「こまち」も同様)で、乗車率が常にほぼ満席に近かったです。そう考えると、特に全車指定席の列車に乗るのであれば例え定期列車であっても早めに予約した方がいいと思いましたし、筆者もその点では少し後悔もありました。 ただ、あくまで個人的な憶測ですがJR東日本にとっては2万数千円という単価が高い切符がこれだけ多く売れ、各地で賑わいが見られたという点ではそれなりの収益を得られたのではないかと思いますし、少し前まで期間限定でJR西日本が発売していた「どこでもきっぷ」などと共に今後も何かの機会に再発売してくれることを期待しています。

(著:今井 俊輔)