一度決めたら変更しない全編成1,323席固執思想が変わるか
JR東海が「最新の技術を活用した経営体力の再強化~より安全で、より便利で、より快適な鉄道を目指して~」の表題で、2022年10月31日付けで将来像を公表しました。
その中の東海道新幹線に「新幹線の新たな座席のあり方を検討します」の見出しがありました。
「移動時間を一層快適にお過ごしいただけるようなグリーン車の上級クラス座席や、ビジネス環境を一層高めた座席の設定などを検討します」との説明です。
はたして東海道新幹線の座席は居住性向上が期待できるでしょうか。
東海道新幹線の最新車N700S系を見てみます。
全席コンセント設置、8両・12両編成が容易に組めること、リチウムイオンバッテリーにより非常時に自力走行できることは良いと思います。
評価できない点は一つ。座席数が1,323席のままであることです。
この数値を守るため先頭の1号車と16号車の座席間隔は狭めたままにしています。
さらに300系から踏襲されている、全編成同一号車は同一定員の、JR東海の固執が感じられます。(2021年度投入分からは1,319席)
300系よりも流線形部分が長い分、客席が狭くなりますが、300系と同じ定員を確保するため先頭車の座席間隔を狭めました。
JR西日本、JR九州の「みずほ」「さくら」編成は先頭車の座席定員よりも他の号車と同等の居住性を重視し、1列分減らしました。
これが正しい考え方です。
最新N700S系先頭車にも1列減の発想が必要です。
冒頭の説明の中に、先頭車の座席間隔改善が含まれているようには受け取れませんでした。
東海道新幹線の過去を振り返ると、1989年に登場したJR西日本の2階建て4両の「グランドひかり」グリーン車で、座席に設けた液晶テレビを東海道区間では使えないようにしました。
その後、御殿場線に投入した371系「あさぎり」のグリーン車には、JR東海自らが液晶テレビを設置しました。
矛盾しますが理由はいろいろあるでしょう。
ビジネスと行楽では目的が異なること、他の東海道新幹線グリーン車には液晶テレビがないこと、静粛さもグリーン車のサービスであることなどです。
そもそも液晶テレビを見るかどうかは乗客側の判断であり、不要な人は使わなければ済むことです。
他の鉄道会社のサービスを否定して、鉄道側が使わせなくする発想はよくないと考えます。
また、JR西日本500系の東海道に乗り入れたことがありました。
しかし主流の700系と号車別の定員が異なるため、ダイヤ乱れ等の際に座席位置で混乱することや、500系には運転室背後に乗車口がないため案内に手間がかかることで、東海道では嫌われました。
500系は先頭車の外観が話題でしたが、東海道区間ではその人気よりも全列車の共通性、互換性の方が求められました。
東海道新幹線あってこその山陽新幹線ゆえ、500系は山陽区間のみの運用となりました。
そんな過去を振り返りつつ、今回の構想の具現化内容を想定しますと、
・東京-博多「のぞみ」が上級グリーン車編成に置き換わる。
・「こだま」は輸送力適正化から12両化し、グリーン車は1両にする。
・その他の「のぞみ」「ひかり」はN700S系16両編成で継続する。
これにより上級グリーン車編成付き16両編成、「こだま」専用12両編成、N700S系16両編成の3種になると考えます。
先頭車は座席数を減らして居住性が高まることを期待します。