連れが仕事で三重県に出張に行ったこの週末、ここぞとばかりに一人で釜石線に出撃した。ほぼ1年ぶりの釜石線である。東京発6時4分のやまびこに乗り新花巻で下車。軽のレンタカーで宮守近くのあたりをつけていたポイントに急行した。後方のカーブ内側で構えている鉄チャンに了解をもらって前方のカーブ外側に陣取る。列車通過が近づくにつれ追っかけ鉄がやってくるが、カーブ内側の先客に悉くはねられてしまうのは気の毒といえば気の毒。でも掟だから仕方がない。その中のひとりに今日の煙の出具合を訊ねると良好とのこと。期待できる機関士のようだ。期待して待ち構えていると期待以上の爆煙で現れた。ダメモトで追いかけたところ綾織近くの跨線橋で2カット目を撮ることができた。

↓宮守ー柏木平にて

↓綾織ー遠野にて

今日はいつにも増して鉄チャンが多いようで、のんびり昼飯を食べている場合ではないと直感し、コンビニで食料を調達して平倉のポイントへ急いだ。この判断は間違っていなかった。現場には既に大勢の同業者が陣取っていて、僕も駐車スペースと撮り位置をなんとか確保することができた。晴れてはいるが、大きな雲が太陽を遮っている状態。ところが珍しいことに本命の列車が来る10分前に雲が切れ、良好な光線状態の中をC58がやってきた。こういうこともあるもんだと嬉しくなった。

↓平倉ー足ヶ瀬にて

↑上有住ー陸中大橋にて

更に追いかけを続け、陸中大橋近くの鬼ヶ沢橋梁で紅葉の中を行く列車を待った。ここは多くのギャラリーで賑わっていた。「明日は列車に乗れるんです!」と嬉しそうに言う女性の隣りで撮影した。それにしても仙人峠の紅葉は見事で、今が盛りだった。

これで今日の走行写真撮影は終了だが、釜石の宿に向かう道すがら釜石駅はずれに立ち寄り、転車台で転向し入庫するC58を撮影した。

その晩は高齢の女将がひとりで切り盛りする居酒屋で海の幸を堪能し、早めに床に就いた。

 

翌朝日の出前に目覚めると雲一つない快晴の予感がする。身支度もほどほどに出発。前日の下見で主な撮影ポイントには置き三脚が林立しているのを目撃。しからばと、空いていると思しき洞泉駅にやってきた。ここにも置き三脚が一つあったが、一番乗り。最終的には狭いホーム端に12〜13人が集まった。駅なのでどうなのだろうかと思っていたが、それなりの煙でやってきたので朝早くから待った甲斐があった。

↓松倉ー洞泉にて

さて、これから追いかけを開始するが、待ち時間に隣り合った方(茨城県筑西市からマイカーで来られていた)から耳寄りな撮影ポイントをお教えいただいた。すごく気になったので、後をついていくと言うと気を遣われると思い、ついていくと言わずについていった。森の中に車を停め、遥か上を走る線路を目指し、落ち葉で滑る急斜面を登坂。息が切れる。要所にロープがあるものの、情けないことに何回か転倒しつつ、ほうほうの体でなんとか斜面の上にたどりついた。線路脇にシカの死体が置かれていて、蝿が群がっている。すごいところだ。線路脇の斜面に登って振り返ると絶景が広がっていた。仙人峠の色づいた木々の葉が半逆光に輝いている。ここに連れてきてくれたことに感謝しつつ列車を待った。現場には僕らのほかに若い鉄チャンの先客が一人いて、ウン十年前の自分を見るようでエールを送りたくなった。ここは急勾配ではないので煙は期待できないとのことだったが、爆煙かつ(なぜか)汽笛鳴らしっぱなしでやってきたのは意外だった。

↓上有住ー足ヶ瀬にて

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仙人峠で十分満足したこともあり、午後は里の風景を撮ろうと遠野・綾織間の田園に三脚を据えた。ここで洞泉駅でご一緒した方と再会し、おしゃべりするうちに列車がやってきた。さすがに煙はスカだった。

釜石道の無料区間を使って土沢の先の一本杉?の見えるほ場に陣取って最終カットを撮り、列車を見送った。

↓遠野ー綾織にて

↓土沢ー小山田にて

帰りの新幹線で祝杯をあげようと新花巻駅の売店で三陸らしいアテを物色。蒸しホヤと鮫ジャーキーなるものを買い、はやぶさに乗り込むやいなやハイボールの蓋を開けた。車販を呼び止め追加の飲み物を注文したりもしたが、仙台から妙齢の女性が隣に座ったので、ここらへんで大人しくしようと眠りについた。ともあれ、すごく良かったという思いしかない釜石線行であった。