小田急の多摩線で最も利用者が少なく、駅の周辺に多くの自然が残っている黒川。
近くにある京王の若葉台が栄えているのとは対照的で、地域の特性が表れています。

黒川のホームは、10両分の長さがある立派なものとなっていますが、唐木田方はかなり幅が狭くなっています。
この極端な狭さの背景には、どのような事情があったのでしょうか。

各駅停車の10両化で誕生した狭いホーム

多摩線の開業と同時に設置された黒川は、最大で6両が停車できるホームの長さとされました。
当時の各駅停車は6両が最長となっており、それに合わせられたものです。

そんな黒川のホームが延長されたのは、1988年に各駅停車の8両化が行われたタイミングで、他の駅と同様に8両分の長さとされました。
多摩線に10両の優等列車が走るようになった後も、黒川のホームは8両分のままとされていましたが、2014年に10両分の長さへの延長が行われ、多摩線に10両の各駅停車が走るようになりました。

多摩線における各駅停車の10両化は、輸送力の増強よりも運用の効率化の要素が大きく、同時にホームが延長された五月台とともに、延長部分のホームは最低限の幅となりました。
黒川のホームは特に狭く、小田急の中ではかなり珍しいものとなっています。

ホームが極端に狭くなった理由

10両化に合わせて唐木田方に延長された黒川のホームは、その部分の幅だけが極端に狭くなっています。
点字ブロックの内側では人がすれ違うことも困難で、利用者が少ないとはいえかなり思いきった構造といえるでしょう。

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写真は元々あったホームから延長部分を見たもので、2両分だけが極端に狭くなっていることが分かると思います。
手前側と比較すると、その幅は半分にも満たないものとなっており、その差が際立っています。

延長部分の幅が極端に狭くなったのは、このホームが高架橋上に設けられたためだと考えられます。
新たに設けられたホームは、高架橋に直接構築するような造りとなっており、地上には影響がないようになっているのです。

このように思いきったホームとなった背景には、黒川の利用者数も関係していると思われます。
ホームに人が溢れるようなことはなく、唐木田方の先端部分で乗り降りをする利用者も限られるため、必要以上に広くする必要はないと判断されたのでしょう。

おわりに

多摩線の全駅を10両の停車に対応させる際、黒川のホームは新百合ヶ丘方に延長すると思っていました。
勾配上にホームが位置することを避けるためか、意外にも高架橋上に延長されますが、今度はその狭さに驚かされることとなりました。