長らく西舞鶴駅構内に留置されていた京都丹後鉄道のKTR001形車両の解体工事が先月から始まりました

京都丹後鉄道の前身ともいえる北近畿タンゴ鉄道(以下、KTR)(※)の手により、KTR001形は1990年に「タンゴエクスプローラー」として鳴り物入りで登場しました

 

登場当初は、車両愛称と同名の特急列車として、京都~西舞鶴・網野・久美浜間で2往復の運用に就いていました

当時、山陰本線の京都口は、キハ181系による「あさしお」や急行「丹後」が都市間輸送の主力を担っており、そんな中シャンパングレーを纏ったオールハイデッカー構造車体を引っさげて登場した同車の存在は注目の的だったに違いありません

 

片道1本のみが宮福線経由のため、編成の向きが日によって入れ替わったり、予備車が1992年に登場するまで検査時はJR西日本のキハ181が代走を務めたりと、運用面で特徴の多い列車でした

舞鶴線が電化開業した1999年の改正時に「タンゴディスカバリー」とそっくりそのまま運転経路を交換して、「タンゴエクスプローラー」は新大阪を発着し、福知山線経由でKTR線へ直通する列車として再スタートしました

 

その後、2005年4月に発生した福知山線脱線事故の煽りを受け、保安装置の関係で一旦JR線へ乗り入れる運用が消滅しましたが、2007年春の改正より新大阪駅へカムバックしました

しかし、287系の投入から始まる北近畿ビッグXネットワーク…この単語も死語になって久しいですね…の再編に伴い、再びJR線へ乗り入れる運用から退きました

 

以降は、KTR線内完結の列車に充当されてきましたが、老朽化が進んでいるか、はたまた3両編成では供給過剰なのか2013年春以降は定期運用を失い、近年はKTR8000形の検査予備として細々と活躍する姿を見せていました

 

西舞鶴駅構内の留置線で、全身にサビの浮いた痛々しい姿を2編成とも晒していましたが、今年の9月に入って遂に第1編成の解体工事が始まりました

近隣住民には事前に回覧板で周知があったらしいのですが、肝心の京都丹後鉄道からは何ら公式発表もなく、同車に対する態度がずいぶんと冷たく感じられてしまいます

 

さて、くだくだと文章を書き連ねたところで、ここからはタンゴエクスプローラーがまだ営業運転に就いていた時の写真を紹介します

2015年11月のこと、KTR8000形の検査に伴い「たんごリレー」の運用にKTR001形が充当されることになりました

 

実は、この1ヶ月前に381系の惜別乗車を兼ねて京都丹後鉄道を訪問しており、短いスパンで再訪問することに抵抗はあったものの、これを逃せば次の機会はないと思って豊岡から福知山まで同車に乗車してきたわけです

 

 

少し色褪せているような気もしますが、いまのようにボロボロな見た目ではありません

 

 

3両編成のうち、1号車が指定席で、2・3号車が自由席でした

駅員氏に聞いたところ、先頭車両となる1号車指定席の最前列が空いていたので、途中の宮津まで前面展望を楽しむことができました

 

しかし、運転席の位置が低く、客室からは見下ろすような構造になっているので、着席した状態での眺望性はまずまずといったところです

 

 

当系列において、先頭車両最前列に座る特権がもう1つあります

それは、上を見上げると天窓が設けられており、天気のいい日であれば、前面展望に加えて流れゆく空の景色も手に取るように分かります

 

 

 

車内は優等列車としては、ごくごくオーソドックスなもので、横2列&2列のリクライニングシートが980㎜ピッチで並んでいます

登場当初は、編成の向きが日ごとに変わっていた経緯から、両先頭車の定員は52名で揃えられています

 

「サフィール踊り子」のように、天井まで大きく回り込んだ天窓のおかげで開放感は抜群ですが、荷物棚は設置されおらず、大型の荷物はデッキにある荷物スペースを使うしかありません

 

 

座席はリクライニング角度も十分でフットレストもあり、1時間半ほどの乗車ではもったいなく感じるほどでした

 

 

ヘッドレストカバーはもちろん丹後ちりめんで、これはタンゴディスカバリー~丹後の海にも引き継がれています

 

 

車内で面白いのは、排気管の配置の関係でとてつもなくシートピッチの広い座席が存在していることです

もちろん、前の座席の背面テーブルには届かないので、壁面に折り畳み式のテーブルが設置されています

 

 

 

いまのところ、解体されたのは第1編成のみで、第2編成はそのまま残っているようですが、痛々しい姿なことに変わりはなく、後者の解体も時間の問題ではないでしょうか?

ところで、京都丹後鉄道の安全報告書2021には2両1編成の中古車両を導入することが盛り込まれており、これがKTR001形の代替車両ではないか?と言われています

 

仮に、中古の特急用気動車を導入するとなれば、JR東海のキハ85系やJR北海道のキハ281系などがありますが、いずれも登場から30年前後が経過しています

鉄道ファン的には、これらの車両が導入されれば面白いわけですが、丹鉄として3,600万円の予算も計上されているので、いずれ発表される情報を待ちたいと思います

 

 

※北近畿タンゴ鉄道はいまも第三種鉄道事業者として存続。京都丹後鉄道が第二種鉄道事業者として、列車の運行を担う。