最果ての終着駅へ / 北緯45度の幌延、サロベツ原野、日本最北端の稚内【夏の北海道⑬】 | 湘南軽便鉄道のブログ

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本ブログは鉄道・バス・船舶・航空機等について、記録も兼ねて記事掲載。

その他、5インチゲージ自家用乗用鉄道「湘南軽便鉄道」についても掲載。路線は湘南本線(ベランダ線・路程約0.01km)があったが現在廃止。新たな庭園鉄道敷設の構想中。

(前回記事の続き)

(日本最北端の終着駅・稚内)












名寄発・稚内行き普通列車は、間もなく幌延



幌延(ほろのべ)駅に到着
18時30分〜18時40分の10分間停車

幌延駅は、かつて留萌本線の留萌駅と幌延駅を結ぶ、全長141.1kmの国鉄・羽幌線の終着駅だったが、羽幌線は1987年(昭和62年)3月30日に廃止された。
現在は、沿岸バスが羽幌線廃止代替バスとして結ぶ。

また、かつては、幌延停車場(宗谷本線幌延駅)〜沼川停車場(旧・天北線沼川駅)間に、農地開拓のため、全長34.9km・軌間762mm・馬力の簡易軌道(殖民軌道)の幌沼線があったが、1964年(昭和39年)全線廃止。


幌延駅は、特急「宗谷」「サロベツ」を含む全列車が停車し、みどりの窓口もある。

しかし、主要駅にもかかわらず利用客は一日30人に満たず、駅は閑散としている。



列車は、島式ホームの2番線に停車

隣にはかつて羽幌線が発着していた3番線があったが、今は側線扱いとなっている。

年季の入った木造跨線橋

幌延は、北緯45度の町トナカイの里

列車交換のため10分間停車

誰もいないホームに降り立つ。

長距離運用のキハ54系500番台気動車。冷房がないため夏は乗客それぞれ窓を開け放つ。



かつて羽幌線が発着していた旧3番線

今は側線扱いで、雑草が茂る。





18時39分発の特急「宗谷」札幌行きと交換。この特急列車は、稚内駅を17時44分に発車し、終点の札幌駅には22時57分に到着、稚内から札幌までの所要時間は5時間13分。

車両は、苗穂運転所のキハ261系0番台気動車










特急「宗谷」は、僅かな停車時間であっという間に走り去っていく。



特急「宗谷」は、基本4両編成で、最後部1号車は半室グリーン車。



稚内行き普通列車も、18時40分幌延駅を発車





列車は、サロベツ原野に入る。

果てしなく広がる夕暮れのサロベツ原野を、キハ54はハイスピードで駆け抜ける。

北緯45度線を超えるサロベツ原野。夏の北半球は、北に行くほど昼の時間が長い。
かつて幌延駅の次に、南下沼(みなみしもぬま)駅があったが、2006年(平成18年)に廃駅になった。



下沼(しもぬま)駅

ヨ3500形車掌車を改造した待合室

駅はから西に約2kmのところには、大きなパンケ沼がある。駅の一日の利用客はほぼいない。


サロベツ原野には大小様々な沼や河川があり、晴れた日には地平線の向こうに利尻島の利尻山(利尻富士)が姿を現す。



豊富(とよとみ)駅
2面2線の駅で特急「宗谷」「サロベツ」も停車する無人駅。
この駅は、稚内に向かう地元客の利用も少しあり、一日の利用客は30人程度。

かつて、この駅から日曹炭鉱手塩砿業所専用鉄道が分岐し、16.7km先の日曹炭鉱手塩鉱業所まで結んでいたが、1972年(昭和47年)廃止。



この駅で、稚内発名寄行き普通列車と交換してから発車

サロベツ原野の向こうに、山頂が雲に覆われた利尻島の利尻山(利尻富士、標高1721m)がうっすら見える。とても離島の山とは思えない険しい山容。
豊富駅の次には、かつて、徳満(とくみつ)駅(2021年(令和3年)3月13日廃駅)と、芦川(あしかわ)駅(2001年(平成13年)7月1日廃駅)があった。


無人地帯を駆け抜ける。

 

兜沼(かぶとぬま)駅

一日の利用客は2〜3人程度

奥に兜沼が見える。


兜沼駅を発車すると、兜沼が車窓左後方に遠ざかる。



宗谷丘陵の牧草地帯を行く。

牧草ロールが点在する北海道らしい車窓







勇知(ゆうち)駅

かつて、この勇知駅前から下勇知駅まで、全長9.8kmの簡易軌道・勇知線(馬力鉄道)があったが、1958年(昭和33年)廃止。

一日の利用客は4〜5人程度。ヨ3500形車掌車改造の待合室に灯りが点る。




抜海(ばっかい)駅

一日の利用客は2人程度だが、秘境駅として名高く秘境駅目的の観光客も訪れる。今は稚内市が維持管理する無人駅だが、稚内市は今後も抜海駅を維持管理することを明言しておらず、廃駅の危機にあり予断を許さない。

駅舎は木造。木造駅舎としては日本最北にある駅。


日の暮れた抜海駅に灯りが点る。


駅舎には貝殻で描かれた駅名板がある。




抜海駅を過ぎ、しばらく走ると高台の絶景地で単行気動車はスピードを緩める。
晴れた昼間には、眼下に、サロベツ原野と日本海、その向こうに利尻島の主峰・利尻山(利尻富士)がくっきりと見える。


列車は宗谷丘陵をくねくねと下っていく。

車内は、ほぼ旅行者のみ。


始発の名寄駅から5時間近く。単行気動車は間もなく稚内の市街地へ。

日本最北端の夏は意外と暑く、冷房の無い車内は窓が開け放たれたれている。


JR北海道のキハ54の側窓は小ぶりな二重窓。国鉄時代のキハ22形気動車などの頃から変わらないサイズの極寒地設計の側窓。


無人地帯を走ってきた列車は、やがて稚内の市街地へ入り、建物と人家の灯り。



南稚内(みなみわっかない)駅

かつてJR天北線(音威子府〜南稚内、148.9km)と合流していた。天北線は1989年(平成元年)5月1日に廃止された。

一日の利用客は50人程度。駅周辺は住宅地や商業施設があり、地元客は稚内駅より南稚内駅を利用する人が多い。

列車が交換できるのは今では南稚内駅が最北であり、この先は、現在は棒線化され、一本の列車しか入れない。





南稚内駅を過ぎるとすぐに側線(旧稚内機関区)があり、稚内駅に到着した列車の停泊や、折返しまで時間がある列車は、稚内駅からここまで戻ってきて留置される。

かつてに比べると留置される列車も殆どなく、寂れた雰囲気。


稚内市街地を進む。




日本最北端の終着駅・稚内
19時49分、終点の稚内(わっかない)駅に到着

始発の名寄駅から所要4時間50分。途中の音威子府駅での長時間停車を除くと3時間53分。走行距離183.2km。

以前は1面2線の島式ホームだったが、今は1面1線。


長旅を終えたキハ54形気動車


契約更改により撤去が進む「本場の味 サッポロビール」の看板がまだ残っている。

宗谷本線の起点・旭川駅から259.4km


札幌駅から396.2km


北海道南部の函館駅から703.3km。これは東京・岡山間の732.9kmに匹敵する。

日本最北端の「終着駅」のある稚内市と、日本最南端の「終着駅」(※沖縄都市モノレールを除く)がある枕崎市は友好都市となっている。


最南端の「終着駅」である、鹿児島県の枕崎駅から3099.5km

かつて、稚内港と樺太(現・ロシアのサハリン)を結ぶ稚泊連絡船があった時代は、ここから数百メートル先の稚内桟橋駅まで線路が延びていた。

日本最北端の線路はここで終わる。




改札口横にみどりの窓口がある有人駅。
始発の旭川駅を除き、宗谷本線で唯一の駅弁販売駅でもある。ちなみに駅弁は同居している道の駅で販売している。
駅舎は「キタカラ」として、道の駅わっかないや、バスターミナル等と一体の建物。
駅のほか、売店、飲食店、観光協会、地域交流センターなどがある。

宗谷バスの駅前ターミナル

かつてのJR天北線廃止後の代替バスもあるが本数は一日僅か4本。札幌までは鉄道のほか、航空機と長距離バスもある。バスだと稚内から札幌まで335km・所要5時間50分で、これは東京・新潟間までの距離に匹敵する。

列車の編成案内。特急列車は原則4両、261系5000番台「はまなす編成」時は5両。普通列車は1両。

日本最北端の稚内駅を発着する列車本数は極めて少ない。発車列車は特急列車3本、普通列車4本のみ。




レールは、モニュメントとして駅舎(道の駅)内を突き抜け、駅前広場まで続く。
以前の駅舎の時代に日本最北端の線路の車止めとして使用されていたレールが稚内市に寄贈され、駅前広場に「日本最北端の線路」として復元されたもの。


稚内駅に停車中のキハ54形気動車は、折返し20時11分発の宗谷本線上り最終・幌延行きに。



※2022年(令和4年)8月上旬