わたかわ 鉄道&旅行ブログ

乗り鉄&旅好きの20代男子が全国を巡る!

【28年の歴史に幕】キハ281系定期運行ラストラン 函館~札幌3時間44分の旅

 

2022年9月30日(金)

今回は北海道の函館駅へとやってきました。これから乗車するのは「キハ281系」の定期運用ラストランです。

キハ281系は、今から28年前の1994年に特急〔スーパー北斗〕として函館本線千歳線でデビューしました。それまでキハ183系特急〔北斗〕にて最速でも3時間29分を要していた函館~札幌駅間は最速2時間59分スーパー北斗2・19号)で結ばれるようになり、まさに平成初期のJR北海道に”革命”をもたらしたと言っても過言ではありません。

当時の〔スーパー北斗〕の最高速度は130km/h。これは気動車特急史上初のことで、中でも同区間を最速で結ぶ便の表定速度は驚異の106.8km/hを記録しました。

しかし近年、JR北海道では石勝線脱線火災事故をはじめとした重大事故が多発。こうした事態を受け、北海道内の各特急列車は最高速度が120km/hへと引き下げられることになりました。また、北海道新幹線が開業した2016年以降は順次キハ261系への置き換えが進み、道南を代表する特急車両であったキハ281系は次第に数を減らしていくこととなります。

2018年のダイヤ改正にて、いったん列車名を全て〔スーパー北斗〕へと統一し〔北斗〕が消滅。その後2020年のダイヤ改正にて、「スーパー」の呼称は取りやめとなり、全ての列車が〔北斗〕として運行されるようになりました。

キハ281系の定期運用ラストランとなるのは、函館17:52発の特急〔北斗19号〕札幌行です。奇しくもその「19号」は28年前の営業運転開始当初に下りの最速達列車として設定されたものですが、現在は当時よりも45分ほど長い時間をかけて札幌へと向かいます。

発車標には「キハ281系28年間ありがとう」の文字が輝きます。平成から令和へ、時代を越えて愛された特急のラストランが目の前に迫っていることを実感します。

ホームへ向かうと、既にキハ281系は入線していました。北海道の日の入りは早いもので、薄暗い空に七つの星が描かれた「HOKUTO」のヘッドマークが光り輝きます。

本日の運行に際し、函館支社では特製の横断幕が用意されていました。「ありがとう キハ281系 Last Run」の文字を見ると、乗車前から既に感極まる思いです。

また、ホーム上では横断幕と同じメッセージの書かれた特製デザインのうちわを無料で配布。イベント列車・団体列車ならまだしも、定期列車でこれほどの力の入れようには大変驚きました。

ホーム上には多くの鉄道ファンが詰めかけており、特に先頭車両付近はかなり混雑しています。しかし揉め事やトラブルが起きている様子はなく、それぞれが思い思いの記録媒体でその時を待ち構えていました。

列車は7両編成で、前から7、6、5…号車。このうち自由席は7・6号車の2両となっており、今回私は5号車(普通車指定席)へと乗車していきます。

側面の行先表示器は2018~2019年頃にかけてLED仕様のものに取り替えられましたが、それからわずか4年ほどでその役目を終えることになります。

17:52、列車はたくさんの人々に見送られながら定刻通りに函館駅を発車。JRの方、地元の方、鉄道ファンの方、その他大勢の方がこちらに全力で手を振ってくださっています。これから3時間44分に渡るラストランの始まりです。

途中停車駅は五稜郭新函館北斗、森、八雲、長万部、洞爺、伊達紋別東室蘭、登別、白老、苫小牧、南千歳、新札幌です。北海道内には〔宗谷〕〔オホーツク〕等ロングラン特急が数多く存在するため、それらよりも少し距離の短い〔北斗〕の運行距離の長さについて注目されることはそれほど多くないように感じますが、実はそれでも函館~札幌駅間は東京~岡崎駅間ほどの距離があり、その運行経路はまるで北斗七星を線で結んだかのようになっています。

指定席車両の車内は混雑しているものの、完全に満席というわけではなくちらほらと空席が見られます。実は意外にもこの「キハ281系定期運行ラストラン」にあたる北斗19号の指定席は「1ヵ月前に即完売」というほど熾烈な争奪戦が繰り広げられたわけではなかったようで、おそらく区間によっては当日でもわずかながら指定席を予約できるような状況にあったと思われます。

とはいえ、乗客の大部分は全区間で乗車する鉄道ファン。私もその一人です。

私の隣におかけの方はどうやら鉄道ファンではない海外の方のようで、2人組でしたがまとまった区画を押さえられなかったために通路を挟んでやりとりをしていました。しかし裏を返せば、鉄道ファンでない人であっても(窓側・通路側等にこだわらなければ)指定席を予約できる状況にあったということです。

列車は新函館北斗駅に到着。2016年以降は全列車が停車するようになり、これ以来〔(スーパー)北斗〕は新幹線と接続して本州~北海道間を連絡する役割も果たしています。

この日は午前中からSNSで話題になっていましたが、新函館北斗駅ではキハ281系で運用する〔北斗〕の発車標の部分にドットでイラストが描かれており、車内からもホーム上にある発車標のドットイラストを確認することができました。車体の側面を模したイラストの中に「FURICO281」の文字が忠実に再現されています。

新函館北斗では、上り〔北斗16号〕函館行と行き違いを行います。こちらはキハ281系上り列車としての定期運用ラストランにあたります。キハ281系どうしが途中駅で行き違いを行う…そんな日常の風景もこの瞬間が最後です。

〔北斗16号〕が少し遅れていたため、この列車も定刻より3分ほど遅れて18:14頃に新函館北斗を発車。引き続き北へと進んでいきます。

最近は”ラブパス”も話題のJR北海道ですが、今回私はえきねっとの「トクだ値」を利用して乗車券・特急券とも30%OFFにて乗車しています。ラストランともなると、限られた指定席を確保するので精一杯になり、発売数の限られるインターネット割引商品を手に入れるのは至難の業…ということがほとんどですが、今回はそれほど無理なく手に入れることができました。

なお座席ですが、2008年にリニューアルが施されておりそれほど古さを感じることはありません。JR北海道内の他の特急列車でも使用されている朱色をベースとしたモケットで、背面テーブルにも安定感があります。残念ながら車内Wi-Fiやモバイルコンセントはありません。

一方で特徴的な設備の一つとしては、窓際のカーテンがあります。近年では全国的にも上下に動くブラインドが広く普及している中で、こうしたシックな色合いのカーテンは時代を感じることのできる代物です。夜間の運行につきあいにく外は何も見えませんが、それでもほとんどの乗客がカーテンを開け放して着席していました。

デッキ部分に出てみると、客室内よりも遥かに大きな音量でディーゼルの走行音を楽しむことができます。「電話をする際にはデッキで…」というのは新幹線や特急でおなじみのマナーですが、これほどの爆音を奏でるキハ281系のデッキで電話越しに円滑なやりとりができる自信は私にはありません(笑)。

19:18に長万部駅へと到着。函館本線はこの先倶知安ニセコ・小樽方面(通称”山線”)へと続きますが、ここで函館本線からは離れて列車は室蘭本線へと入っていきます。

洞爺、伊達紋別…。

日中ならばたくさんの観光客が利用する駅も、今回はほとんど乗降がありません。その代わり各駅でホーム上に数名程度キハ281系を撮影される方がいらっしゃいます。鉄道ファンの方かもしれませんし、もしかすると「それほど遠くへはいけないものの、キハ281系の最後を見送りたい」と願う地元の方かもしれません。それぞれが思い思いのかたちで、このラストランを迎えています。

車窓にライトアップされた大きな橋が見えてきました。これは室蘭市内にある「白鳥大橋」です。車窓に明かりの少ない北海道の大地を走る特急だからこそ、こうした立派な橋や建物等はとてもよく目立ちます。

20:10に東室蘭駅へと到着。この駅は、キハ281系スーパー北斗〕の歴史を語る上では絶対に欠くことのできない重要な駅です。

というのも、1994年のデビュー当時に上りの最速達便として設定された〔スーパー北斗2号〕の唯一の途中停車駅がこの「東室蘭」でした。300km以上も走る特急列車において、その途中停車駅が1駅だけというのは後にも先にもそうあることではないでしょうが、今となっては〔北斗2号〕も他の便と同じように途中たくさんの駅へと停車しながら函館へ向かう列車に姿を変えています。

白老駅は、2020年に民族共生象徴空間「ウポポイ」オープンがきっかけで、多くの〔北斗〕が停車するようになりました。白老駅到着前のアイヌ語の車内放送が聞けるのも、これが最後です。

日本一の直線区間を120km/h近くでぶっ飛ばし、20:48に苫小牧駅へと到着。終点札幌まで残り1時間を切り、いよいよその終わりが近づいてきたことを実感します。

南千歳駅からはかなりの乗車があり、ぽつぽつと空いていた指定席が全て埋まりました。函館~札幌駅間の全区間は乗れずとも、せめて最後の短い区間だけであっても乗っておきたいと思う鉄道ファンは一定数いたようです。

千歳線へと入った列車は、ディーゼルの音を奏でながらいよいよ札幌へと近づいていきます。

最後の途中停車駅である新札幌を、列車は定刻通りに発車。28年間に渡って続いてきた「当たり前の日常」が、もうすぐ終わろうとしています。

youtu.be

ここで車掌さんから、最後の札幌駅での乗換案内に続いて「さよなら放送」が。

思いの詰まった最後の車内放送に、乗客一人ひとりがしっかりと耳を傾けていました。

今から11年前、2011年の夏。当時小学6年生の私は、初めて北海道を訪れた際にこの札幌駅へも足を踏み入れました。

階段を上がり、たくさんのホームが並ぶ札幌駅構内。あちこちに停車していたのが、キハ281系キハ283系・183系…等、北海道を代表する「青い気動車特急」の数々でした。

初めて北海道の特急車両を見た私は思わず感動し、これ以降私の脳内には「北海道の特急は青くてカッコいい!!」というイメージが強くこびりついています。

もちろん、今回のキハ281系引退によって北海道内から青い特急がなくなるわけではありません。しかし一方で、幼少期の私の心を揺さぶる貴重な体験をさせてくれた青い特急の一つである「キハ281系」の最後を見届けないという選択肢は、私にはありませんでした。

万感の思いで、列車は21:36に定刻通り終点の札幌駅へと到着。28年の歴史に、幕が下りた瞬間です。

ホーム上には想像以上に多くの鉄道ファンが詰めかけており、道内外を問わずたくさんの人から愛されてきた車両であることを実感します。

実は10月22日・23日に函館~札幌駅間で当時の列車名である「スーパー北斗」として臨時運行がなされる予定になっています。しかし私はそちらへは足を運べないため、今回の定期運用ラストランをもってこの車両とはお別れです。

改めて、楽しい列車の旅をありがとうございました。

28年間、本当にお疲れ様でした!

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。