わたかわ 鉄道&旅行ブログ

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【速報】32年の歴史に幕…「ホリデー快速鎌倉」ラストラン

 

2022年9月25日(日)

本日やってきたのは、横須賀線鎌倉駅。これより、本日遂にラストランを迎える臨時快速「ホリデー快速鎌倉」へと乗車していきます。

ホリデー快速鎌倉」は、武蔵野線吉川美南から横須賀線の鎌倉までを結ぶJR東日本の臨時快速列車です。その名の通り土曜・休日を中心に運行され、週末に武蔵野線沿線から横浜・鎌倉方面へと出かける観光客を運ぶ目的で運行されてきました。

ホリデー快速鎌倉」は今から32年前、1990年に運行が開始されました。当時の運行区間小山~鎌倉駅で現在と若干異なるものの、武蔵野線経由という点は当時から変わっていません。

国鉄が分割民営化を行って間もないこの頃、JR東日本では「小さな旅」キャンペーンが展開され、首都圏近郊を走る臨時快速列車にこの「ホリデー快速」という愛称が付けられました。鎌倉方面のほか、奥多摩・河口湖・湘南など様々な方面へ同様の臨時列車が設定され、大勢の行楽客が利用してきました。

ホリデー快速鎌倉」は、その後大宮発着・南越谷発着等少しずつ運行区間を変化させながらも「武蔵野線方面から鎌倉へ観光客を輸送する」という使命を果たし続け、今日まで運行が続けられてきました。

しかし先日、JR東日本が発表した秋の臨時列車のプレスリリースを確認すると、そこにいつもの「ホリデー快速鎌倉」の文字はありませんでした。その代わり、10月から新たに特急「鎌倉」が設定されることが発表され、快速列車としての32年間の歴史に幕を下ろすことになったのです。

近年、JR東日本では週末を中心に運行されてきた臨時快速列車の「特急格上げ」が大きなトレンドになっています。その理由は様々ありますが、一つには「新型コロナウイルス感染症拡大の影響で落ち込んだ収支の回復」があるとされています。

ホリデー快速鎌倉」の指定席は、乗車区間にかかわらず一律530円となっています。一方でこれを特急へ格上げすれば特急料金を徴収できることになり、大幅な増収が期待できることになります。その料金設定は乗車距離によって異なりますが、特急鎌倉の場合は最安でも1,050円となっており、吉川美南鎌倉駅間の全区間を駅で購入すると何と従来の3倍以上の1,890円がかかることになります。

なお特急鎌倉ではえきねっとのトクだ値チケットレス)が設定され、これを含めると最安で960円の追加料金にて乗車できることにはなります。しかしこれでも従来から2倍近くの値上げとなり、割高感は否めません。

とはいえ感染症の影響で苦境を強いられているJR東日本の気持ちも分からなくはありません。現在のホリデー快速鎌倉と異なり「チケットレスでの乗車も可能となる」というプラスの側面も考えると、特急格上げはある意味「利便性の向上が図られている」という部分もあるのでしょう。

快速としての最終運行にあたるのは、鎌倉17:21発の〔ホリデー快速鎌倉〕吉川美南です。2018年からE257系(5両編成)にて運行されており、ホリデー快速鎌倉に使用されてきた歴代の車両の中では唯一JR発足後に誕生した車両となっています(他は115系、183系、185系等)。

足元には黄色い乗車口ステッカーもありますが、これが役目を果たすのも今日この瞬間が最後となります。「全車指定席」となったのは2018年からですのでそれほど古いステッカーではありませんが、それでも名残惜しい気持ちになります。

17:14発の上り普通列車が発車した後、すぐ2番線へと入線してきました。ここ鎌倉駅が始発となる列車ですが、後に続く普通列車が同じホームを使いますので、それほど停車時間は長くありません。絵柄のあるヘッドマーク等はないものの、前面の表示には「臨時」「快速」等ではなくはっきりと「ホリデー快速鎌倉」の文字が表示されています。これも今日が最後です。

乗り遅れないよう、車内へと入ります。21世紀に入ってからデビューした車両ですので座席の座り心地は十分良いですが、注目すべき点はヘッドカバーが掛けられていない点です。「ヘッドカバーがあれば特急列車、なければ普通・快速列車」というのが一つの基準のようですが、果たして来週からの特急鎌倉では掛けられるのか気になるところです。

大勢の人に見送られながら、列車は定刻通りに鎌倉駅を発車。日が傾きかけた鎌倉市内の山あいを進んでいきます。

列車はこの先北鎌倉、大船、横浜、西国分寺、新秋津、東所沢、北朝霞武蔵浦和南浦和、南越谷、越谷レイクタウンへと停車したのち、終点吉川美南へ至ります。

鎌倉から数分で、次の北鎌倉へと停車。鎌倉駅とあわせ、鎌倉観光の拠点となる駅です。鎌倉駅に比べるとそれほど規模の大きな駅ではありませんが、鎌倉方面への行楽客を運ぶ臨時列車は季節を問わず基本的に停車します。

鎌倉駅発車前にえきねっとで検索してみると、ラストランの指定席は「×」の表示。もちろん区間によっては空席もあるでしょうが、流石の人気ぶりです。

車内を見渡してみると、もちろん鉄道ファンが多いものの、そうではない行楽客も相当数いるように見受けられました。三連休の最終日、親子連れ・老夫婦・友人同士などで鎌倉観光を一日楽しんだのち、その思い出話に花を咲かせている光景があちこちで見られます。

客室上部の表示器には、次の駅や広告等の表示は一切なく、終始真っ暗のままでした。またその左にある「指定席」「自由席」の文字はどちらも点灯していませんでした。特急格上げ後、「指定席」の文字が点灯したり表示器を使用したりすることはあるのでしょうか…。個人的にはここに表示される「次は 北鎌倉」等の文字を見てみたいものです。

列車は続いて大船駅に到着。神奈川県内でも屈指のターミナル駅ですが、何と特急格上げ後はここ大船駅を通過してしまうことになっています。

もちろん大きな駅ですから、時刻表上では「通過」扱いとなっていても実際には運転停車をする可能性は大いにあります。しかし「ホリデー快速鎌倉」「吉川美南」という文字がここ大船駅で表示されることはこれからもうないわけで、何だか信じられない思いです。臨時列車ゆえのカクカクとした黄色い「吉川美南」の文字とも当面お別れになりそうです。

大船駅ではちょっとしたトラブルがあったようですが、再開扉を経て無事に出発。

戸塚の手前で列車は横須賀線から東海道線へと転線し、戸塚駅では東海道線ホームを通過します。東海道線横須賀線の列車がどちらも定刻で運行されているからこそ、スムーズな転線が可能となるのですから凄いことです。

17:43に列車は横浜駅へと到着。もちろんここでは東海道線ホーム(7番線)に入ります。ホーム上には大変多くの鉄道ファンの姿がありました。

私自身神奈川県民ゆえ、鎌倉へ行くのにわざわざこの「ホリデー快速鎌倉」を使ったことは実はほとんどありません。しかしなぜ今回ラストランへ乗車するに至ったかといえば、地元であるここ横浜駅で日常的に「ホリデー快速鎌倉」の文字を見ていたからこそなのです。

「横浜を出ると次は西国分寺にとまります――」。快速運行最終日の今日も、そんないつもの放送を聞くことができました。

横浜線と並走しながら、列車は横浜駅を発車。この瞬間をもって神奈川県内の駅から乗車できる「ホリデー快速」は全て姿を消したことになります

鶴見駅の手前で列車は東海道線から貨物線へと転線し、京浜東北線鶴見駅ホームが見える位置で運転停車。ここで乗務員交代が行われます。短い時間とはいえ、ホームのない場所で停車するというのも臨時列車ならではの光景です。

1分ほどの運転停車を終えて発車し、列車は新川崎方面へと進んでいきます。横須賀線と並走するように走る貨物線を走行していきますが、その見える景色は横須賀線のそれとは大きく異なっており、右手側には多数の留置線と貨物列車の姿が見えます。

まもなくすると列車は武蔵野貨物線の長いトンネルへと入ります。走行ルートは南武線と似ているものの、それとは全く別の線路です。トンネル内はもちろん真っ暗で、通信機器も圏外となります。まるで山あいを走る夜行列車のような雰囲気です。

E257系は元々特急列車向けに開発され、今もなお房総半島では〔わかしお〕〔さざなみ〕等で幅広く運用されています。背面テーブルも大きく、首都圏の普通列車グリーン車と似たような設備です。残念ながら車内にWi-Fiやコンセントはなく、また背面テーブルの妙な色褪せ具合を見ると時代を感じさせてくれます。

近年は感染症対策や合理化の波に流され、指定券への入鋏印は省略される傾向にあります。しかし今回この列車では入鋏印を押していただくことができました。しっかりとこのラストランに乗車したことの何よりの記念になります。

しばらくして貨物線の長いトンネルを抜けると、辺りはすっかり真っ暗になっていました。列車はまもなく東京都へと入り、その後しばらくして多摩川を越えます。

鶴見駅での運転停車から40分ほどノンストップで走り続け、18:27に武蔵野線西国分寺駅へと到着。中央線との接続駅ということもあり、ここで結構な数の降車がありました。

西国分寺駅でも、発車標にはしっかり「ホリデー快速鎌倉」の文字が表示されていました。時間帯によっては混雑が激しく、かつほぼ全列車が各駅停車である武蔵野線内においてはもしかすると530円の追加料金を払ってでも「ホリデー快速鎌倉」で武蔵野線内のみを移動する、という需要もこれまではあったのかもしれませんが、全車指定席の特急ともなると今後はそう気軽に利用できることはあまりなさそうです。

新秋津駅西武池袋線秋津駅と接続しています。横浜駅や東京都内での乗り換えを回避して西武池袋線沿線と鎌倉を結ぶルートは一定の需要があるようで、ここでも若干の降車がありました。

その次の東所沢駅は、特急格上げ後に通過となってしまう駅の一つ。発車標にはしっかり「ホリデー快速」の文字が灯っていますが、これも最後の瞬間です。

北朝霞駅は、今から8年半ほど前に私が185系の「ホリデー快速鎌倉」を撮影した思い出のある駅です。当時中学生の私は「こんな遠い場所から鎌倉まで直通で行けるのか」と感動したのをとてもよく覚えています。

埼京線と接続する武蔵浦和駅でも一定の降車がありました。行楽客は武蔵野線に入り各停車駅でどんどん降車していきますが、それと入れ替わりで少しの区間であっても最後に乗車しておきたい鉄道ファンが少しずつ増えていき、武蔵野線内に入ると乗客の「鉄道ファン率」が次第に上がっていくのを感じます。

次の南浦和駅京浜東北線と接続する主要駅ですが、特急格上げ後は通過となってしまいます。決して停車の需要が低いわけではないと思うのですが、やはり特急にするにあたり停車駅を絞って所要時間の短縮を狙っていたりするのかもしれません。

この辺りまで来ると車内に行楽客の姿はだいぶ減り、空席も目立つ様子。南越谷駅は2011年から2021年までの約10年間に渡りこの列車の発着駅となっていたこともあり、個人的に「ホリデー快速鎌倉」の上り列車といえば南越谷行のイメージが非常に強いです。

越谷レイクタウンも、特急格上げ後は通過となってしまいます。吉川美南発着になった2021年秋からわずか1年間の停車となりました。

そしていよいよ、列車は終点の吉川美南駅へと到着します。

実はこの「吉川美南駅」自体も、2012年に開業した比較的新しい駅。1990年の運行開始当初は想像もしなかったような車両で、想像もしなかったような終着駅でフィナーレを迎えようとしています。

鎌倉駅を出てから約2時間、列車は定刻通り19:17に終点の吉川美南駅へと到着。

この瞬間、32年間の歴史に幕を下ろしたことになります。

あいにく車内での「さよなら放送」等はなかったものの、ホームに降り立ってみると何と「ホリデー快速鎌倉 最終回送」の文字が!!!!! 粋な計らいに、思わず涙がこぼれそうになります。

本日をもって「ホリデー快速鎌倉」はラストランを迎え、残るは「ホリデー快速おくたま・あきがわ」のみとなりました。しかしあちらは全車自由席での運行ですので、指定席を連結したホリデー快速としては完全に廃止されたことになります。

神奈川県内で度々「ホリデー快速鎌倉」の文字を見てきた私としては少々残念な思いもありますが、「特急鎌倉」となった後もたくさんの人に愛される列車となることを願っています。

 

本日も最後までお読みいただきありがとうございました。