芸備線 と 持続不能の日本・その12
-芸備線と維持困難路線・その12-
6月29日に岩国駅で撮影したキハ40とキハ47そしてNT3000です。
JR西日本の駅で、ホームから1番たくさんのキハ40系を見られるのは、意外にも山陽本線のこの岩国駅だったりします。
岩国駅を発着するキハ40系は徳山とを短絡する岩徳線を走る1路線ですが、一部は元 岩日線の錦川鉄道にも乗り入れます。
岩徳線は旧 山陽本線で、かつては特急列車も走っていた時代もありましたが、今は赤字ローカル線の1つとして″廃線″の2文字も見え隠れしています。
JR西日本管内の路線単位では1番の赤字路線は大糸線で、収支公表する以前に「バス転換も含めて将来のあり方を検討したい」とJR西日本が申し入れた時に、沿線自治体は「寝耳に水だ」と非難しました。
常識的に考えれば、区間単位では確かに芸備線の収支は日本一の赤字路線と話題になっているものの、路線単位では大糸線の経営状態は芸備線の比ではないことを、沿線自治体が把握していないとは思えにくいところです。
それでも本当に寝耳に水だったのなら、その認識の甘さと無関心さが、ライフラインを失う危機に追い込んだ要因の1つと言えるでしょう。
大糸線の例はニュースで見た時に「寝耳に水って、そんな訳ないじゃん」と他にボキャブラリーは持っていないのか?と印象に残ったのですが、この後にJR西日本は各路線と区間の収支公表を行いました。
現在、収支公表とは別に輸送密度2000人以外の区間表も公表されていますが、国土交通省が出した指針に基づいて新たな動きが出始めているものの、山間部に限らず日本国全体で人口が減り続けている現状では、未来において新幹線の廃線もあり得る中で、将来は明るくないところです。
来月1日より実施されるJR西日本の組織改編で、その将来への不安と期待が渦巻いていますが、ここであらためて元々のJR西日本の公式な立場を振り返り明記しておきます。
▲広島の地元紙 中国新聞による JR西日本・広島支社長、路線廃止についての見解一問一答の転載(2021年12月5日)
利用が低迷する芸備線の一部区間の在り方について、検討組織を設置する意向を表明する蔵原支社長は記者会見で、芸備線の今後の在り方について地域全体での議論が不可欠と強調した。
主なやりとりは次の通り。
Q・庄原市と新見市の区間を対象にした理由は。
A・この区間は利用が非常に低迷している。沿線は人口減少や少子高齢化、道路を中心としたまちづくりの進展で(鉄路を)取り巻く環境が大きく変化している。そうしたことを勘案した。
Q・路線廃止は選択肢に入っていますか。
A・現時点で決まったものは何もない。まちづくりや交通政策の中で鉄道をどう考えるか。バスなども含めた地域の総合的な交通体系の問題として一緒に考えてほしい。実効ある利用促進策を少しでも早く進めたい。
Q・ダイヤが不便なのでは。JRができることは。 二つの課題を議論したい。
A・当社が地域のニーズに応えられているかどうか。ご意見を頂き、対応できる部分があれば対応していきたい。もう一つは、地域外の方々が訪れたいと思えるニーズがまだあるのではないか、ということ。バスなど他の交通機関と連携できるかもしれない。
Q・管内の他の線区についてはどう考えていますか。
A・具体的なものがあるわけではない。ただ、他の線区についても同様の視点を持って地域と対話していくのは必須だと考えている。
Q・あらためて検討の延長線上に廃止はないのか。
A・現状、全くそれはない。
(中国新聞記者 山田英和氏)
JRとして何ができるのかニーズを探ろうとしているのは本心だと思いますが、では沿線各自治体は住民のニーズに応えられるインフラ整備が可能なのかどうかも、鉄道路線を残す重要なポイントです。
路線名 | 区間 | 営業キロ | 輸送密度 | |
---|---|---|---|---|
2019年度 | 2020年度 | |||
小浜線 | 敦賀~東舞鶴 | 84.3km | 991 | 782 |
越美北線 | 越前花堂~九頭竜湖 | 52.5km | 399 | 260 |
大糸線 | 南小谷~糸魚川 | 35.3km | 102 | 50 |
山陰本線 | 城崎温泉~浜坂 | 39.9km | 693 | 506 |
浜坂~鳥取 | 32.4km | 921 | 798 | |
出雲市~益田 | 129.9km | 1,177 | 725 | |
益田~長門市 | 85.1km | 271 | 238 | |
長門市~小串・仙崎 | 52.8km | 351 | 290 | |
関西本線 | 亀山~加茂 | 61.0km | 1,090 | 722 |
紀勢本線 | 新宮~白浜 | 95.2km | 1,085 | 608 |
加古川線 | 西脇市~谷川 | 17.3km | 321 | 215 |
姫新線 | 播磨新宮~上月 | 28.8km | 932 | 750 |
上月~津山 | 35.4km | 413 | 346 | |
津山~中国勝山 | 37.5km | 820 | 663 | |
中国勝山~新見 | 34.3km | 306 | 132 | |
播但線 | 和田山~寺前 | 36.1km | 1,222 | 714 |
芸備線 | 備中神代~東城 | 18.8km | 81 | 80 |
東城~備後落合 | 25.8km | 11 | 9 | |
備後落合~備後庄原 | 23.9km | 62 | 63 | |
備後庄原~三次 | 21.8km | 381 | 348 | |
三次~下深川 | 54.6km | 888 | 929 | |
福塩線 | 府中~塩町 | 54.4km | 162 | 150 |
因美線 | 東津山~智頭 | 38.9km | 179 | 132 |
木次線 | 宍道~出雲横田 | 52.3km | 277 | 198 |
出雲横田~備後落合 | 29.6km | 37 | 18 | |
岩徳線 | 岩国~櫛ヶ浜 | 43.7km | 1,246 | 1,090 |
山口線 | 宮野~津和野 | 47.4km | 678 | 353 |
津和野~益田 | 31.0km | 535 | 310 | |
小野田線 | 小野田~居能等 | 13.9km | 444 | 344 |
美祢線 | 厚狭~長門市 | 46.0km | 478 | 366 |
ーご了承事項と免責事項ー ● 芸備線と持続不能の日本のシリーズは、第1回からの連載となっています。 ● 以前の記事を前提として積み重ねで記して行くので、特にスポットを当てた回でない限り、同じ解説を本文内では致しません。 ● このシリーズは日本国の法律の下に既成事実として、中立的に私一個人の思いを綴っていますことを、ご理解とご了承のお願いを致します。 ▼ ローカル線が使い辛いのと鉄道の優位性が発揮できないのは鉄道会社の責任で、沿線都市へ人が訪れない原因は、受け入れ態勢が脆弱な各自治体の責任である。 ▼ 日本人口の減少と山間都市の過疎化は国政の責任で、諸問題を先送りにして国鉄分割民営化を強行させたのは国民の責任である。 ▼ 公共交通の提供は日本国憲法と交通政策基本法に定める基本的人権の1つであり、安易に国民の権利を奪うことは許されない。 ▼ 街の活性化は住民と訪問者の両輪が必須で、そのためにはインフラ・ビジネス・エンターテイメントの3要素に、恒久性が欠けては成立しない。 ▼ 諸問題を先送りにして実行された諸事案件は、当時の有権者の責任であることは間違い無いが、先送りが実行された以上は当時まだ未成年や未誕生だった国民が、現在においてその全ての責任を負う。 |
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