JR西日本は2日、在来線特急料金の見直しを行うことを発表しました。今回はこれについての分析です。

httpsき://www.westjr.co.jp/press/article/items/220902_03_press_minaoshi.pdf

 

1.見直しの概要

(1)B特急料金の廃止

 JRの在来線特急料金には、大きく分けて「A特急料金」「B特急料金」の2つがあります。「B特急料金」のほうが料金が割安になっており、京阪神エリア・北近畿エリア・和歌山エリアが適用範囲となっているのですが、この「B特急料金」が廃止され、「A特急料金」に一本化されます。なお、これに伴い特急用定期券も価格が変更(値上げ)となります。

 

(2)おトクな特急料金(特定特急料金)の改定

 以下の区間の特急料金が改定されます。(図はJR西日本プレスリリースから引用)

 

 これらの区間の特急料金は、通常よりも安く設定されているのですが、これらが少し値上がりする形となります。なお、④で挙げられている博多南線は、全列車が新幹線車両の「特急」として運行されており、利用の際は特急料金を支払わなくてはいけません。     

 博多南線は通勤通学の利用も一定数あるため、その特急料金が値上がりするのは博多南駅ユーザーにとっては痛いところです。ただし、通学定期券の価格は据え置かれることとなりました。

 

(3)乗継割引の一部見直し

 今回の発表でマニアの中で大きな話題を呼んだのは、乗継割引の縮小でしょう。「乗継割引」とは、指定された駅で新幹線と在来線特急を乗り継いだ場合、在来線特急料金が半額になる制度です。

 例えば、新大阪~(山陽新幹線「のぞみ」)~岡山~(伯備線特急「やくも」)~出雲市と乗り継いで移動した場合、

 

 運賃:6,600円

 新幹線特急料金(通常期 指定席):3,270円

 在来線特急料金(通常期 指定席):2,950×1/2≒1,470円  合計11,340円

 

 となります。新幹線や在来線特急の乗車距離の制限はなく、自由席利用でも適用されるため、利用者にとっては非常に重宝する割引制度です。特に、新幹線は1区間だけ(場所によっては2区間)自由席を利用する場合、とても割安な特定特急料金が適用されるため、これと乗継割引を組み合わせると、特急料金を大幅に下げられるケースもあります。

 現在、東海道・山陽新幹線では、新横浜~新下関の各駅で新幹線と特急列車(踊り子・サフィール踊り子・湘南は除く)を乗り継ぐと、この乗継割引が適用されるのですが、来年4月1日乗車分からは岡山~新下関が乗継割引の適用外となります。

 とはいえ、適用外となる駅で実際に在来線の特急列車が乗り入れているのは岡山と新山口のみです。具体的には、次のパターンは乗り継ぎ割引が適用されなくなります。

 

①新幹線との乗換駅:岡山駅

スーパーいなば(岡山~鳥取)、やくも(岡山~米子・松江・出雲市)、しおかぜ(岡山~松山)、南風(岡山~高知)、うずしお(岡山~高松・徳島)

 

②新幹線との乗換駅:新山口駅

スーパーおき(新山口~益田・出雲市・米子・鳥取)

 

 山陽新幹線から山陰や四国へ行く場合、乗り継ぎ割引が適用されなくなるため、区間によっては1,000円以上値上げとなります。

 

2.考察~乗継割引制度はもう古い?~

 前述のとおり、乗継割引は非常にお得な料金制度なのですが、弱点もあります。それは、紙の切符で「新幹線特急券」と「在来線の特急券」を同時に購入しなければいけないということ。逆に言えば、インターネットで特急券を購入した場合は、乗り継ぎ割引は適用されない、ということです。

 今はJRの会員制予約サイトで、お得な切符が次々と発売されています。例えば、先の例で挙げた新大阪~出雲市間について、JR西日本の会員制予約サイト「e5489」から申し込める「Web早特7」で購入すると10,100円となります。乗継割引を適用させて通常購入するより1,240円もお得です。そうした割安なweb商品で、乗継割引の縮小を補填するものとみられます。

 JR西日本としても、webでの切符販売を推進し、窓口業務や車掌業務を縮小させ、経費削減を図りたいという思惑があります。こうした取り組みは、JR東日本などでも見られます。そのため、web限定の割安きっぷを発売し、乗客のweb購入へのシフトを促しているのです。

 

3.終わりに

 今回の特急料金見直しは、一言でいえば値上げです。沿線人口の減少や新型コロナ渦による影響でJRも大きなダメージを受けており、それだけ追い込まれていることがうかがえます。

 JR西日本はこれからも、e5489で便利でおトクな商品を出すとしており、ネット販売により一層力をいれていくものとみられます。そうした状況を踏まえると、乗り継ぎ割引は時代の流れにそぐわないものになっているのかもしれません。

 今後も紙のきっぷの割引率は下げ、インターネットで販売するきっぷは割安にするという傾向は続くとみられます。今回は京都駅や新大阪駅などでの乗り継ぎ割引は継続となりましたが、今後さらに乗り継ぎ割引の廃止が進む可能性は十分にあると考えています。今後の展開に注目です。