矢岳駅【熊本県】(肥薩線。2011年訪問) | 『乗り鉄』中心ブログ(踏破編)

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今回の【駅】コーナーは、
熊本県南端部、人吉市南寄りの山奥に位置する肥薩線矢岳越えルートの途中にある駅で、肥薩線で最も高い標高約536.9mの地点に位置する駅、そして駅構内には人吉市SL展示館が設置されている秘境駅、
矢岳駅 (やたけえき。Yatake Station) です。
 
尚、写真は2011年撮影で、古いです。ご了承下さい。
また、記事投稿時点において2020年の豪雨災害による不通が続いています。果たして今後はどうなるでしょうか…。
 
 
駅名  
矢岳駅 (駅番号なし)
 
所在地   
熊本県人吉市  
 
乗車可能路線   
JR九州:肥薩線    
 
隣の駅   
八代方……大畑駅  
隼人方……真幸駅 (宮崎県)    
 
訪問・撮影時  
2011年10月  
 
 

 

矢岳駅は地平駅で、西側に木造駅舎があります。
1909年(明治42年)の開業当時からの駅舎かどうかは分かりませんが、明らかに古いです。
出入口に段差がありますが、離れた右側に直接ホームに入れる段差なしの出入口が設置されており、駅としては一応バリアフリーに対応しています(但し、車両側が非対応で、車いすでの乗降には介助が必要になります)。
また、右側には汲み取り式の便所があり、さらに右側には後述の「人吉市SL展示館」があります。
尚、駅前広場はありません。後方に階段があり、駅外とは段差があります(左側にある道路を迂回すれば段差なしでの移動は可能です)。
上写真は東を、下写真は北を望む。
 
 

駅前です。西を望む。写真下には階段があります。
後方に駅舎があり、左手に「人吉市SL展示館」があります。
駅周辺は山あいの農村地域で、駅前には田園が広がっています。
写真奥の山裾に小さな集落が形成されていますが、商店は見られません。
また、集落手前の交差点を左へ曲がって南下すると、駅からわずか550mほどで宮崎県えびの市に入ります。
尚、駅名の由来となった矢岳山は、駅がある熊本県ではなく駅南西の宮崎県側にあります。
ちなみに、後方の駅東側は駅前まで山並みが迫っています。民家は非常に少ないです。
 
 

駅舎の南側には「人吉市SL展示館」があります。南を望む。
JR九州の施設ではありません。
この場所に車庫は存在しなかったと思われ、展示館のために車庫が建設されたと思われます。
『いさぶろう』『しんぺい』の長時間停車中に見学可能です。無料です。
列車が運行されていない現在は開いているかどうか不明なので、訪問されたい場合は事前にお問い合わせ下さい。
 
 

車庫の中には蒸気機関車の「デゴイチ」こと「D51 170」が静態保存されています。
右側には蒸気機関車の58654号(8620形)も静態保存されていましたが、1988年に豊肥本線の観光列車『SLあそBOY』の牽引機として現役復帰しました。58654号があった場所の北端部には2004年春まで『いさぶろう』『しんぺい』で使用されていたキハ31形気動車の顔出し記念撮影パネルが設置されています。
 
 

 

駅舎内です。上写真は東を、下写真は北東を望む。
矢岳駅は無人駅ですが、窓口が残されています。窓口には「トクトクきっぷ」や「ジパング倶楽部」の古いステッカーが貼られていますが、これらのきっぷが当駅で買えたとは思えず、よそから持ち込まれた可能性が高いと思われます。
改札口跡も残されていますが、現在は車内精算方式です。ワンマン列車の場合は乗車時に整理券を受け取り、降車時に運賃箱に運賃を入れて下さい。尚、矢岳駅はICカード『SUGOCA』のエリア外です。
改札口上部には時刻表が掲示されています。
駅舎内は広く、屋根も高いです。駅舎内は待合室として使用されています。待合室には駅ノートがあります。
改札口の先はホームで、2段の段差があります。車いすは駅舎外トイレ右側にある段差のない出入口をご利用下さい。
尚、矢岳駅および付近に商店・コンビニは一切ありません。2011年時点で「人吉市SL展示館」の出入口前に飲料自動販売機がありましたが、今はどうでしょうか…。
 
 

建植式駅名標です。電照式ではありません。
JR九州の標準デザインで、駅シンボルイラストは南西の宮崎県側にある矢岳山などの山々でしょうか?
尚、矢岳駅に駅ナンバリングは導入されていません。
 
 

こちらはホームの駅舎側に設置されている駅名標です。電照式かもしれません。
書体が古く、国鉄時代から使用され続けていると思われます。
 
 

バリアフリー出入口脇に設置されている矢岳駅の標高536.9mを表す標柱です。
矢岳駅は肥薩線で最も高い場所にある駅です。
ちなみに九州で最も標高が高い鉄道駅は、同じ熊本県の阿蘇山東側にある豊肥本線・波野駅で、標高754mです。
 
 

矢岳駅は単式ホーム1面1線の棒線駅で、地平構造です。概ね南北方向にホームが延びています。
下り吉松・隼人方面、上り人吉・八代方面とも同一ホームに発着しますので、乗り間違いに注意が必要です。本数が非常に少ないため、乗り間違えるとその日のうちに目的地まで行けなくなる可能性があります。
また、左側には草が生い茂る空地がありますが、その場所にはかつて島式ホームがあり、昔は2面3線でした。今は線路もホームも撤去されたと思われ、広い用地に往時の構内を偲ぶことができます。
ホーム有効長は6両分と思われ(5両分かもしれませんが)、ホーム幅は狭いです。『いさぶろう』『しんぺい』の特急化に伴い、おそらく3両分は嵩上げされて点字ブロックが設置されました。
上屋はホーム中ほどの駅舎に面した約1両分のみに設置されています。雨天時の乗降は注意が必要です。
駅舎より隼人方(奥)にはトイレとバリアフリー出入口があります。
写真は隼人方を望む。
 
 

 

ホーム駅舎側の八代方(北側)には貨物側線が3本あったそうで、貨物ホーム跡(上写真左側、下写真手前~右側)や線路跡の遺構が残されています。
以前は木材や木炭の積み出しで貨物輸送が旺盛でした。
上写真は八代方を、下写真は隼人方を望む。
下写真の貨物ホームと旅客ホームの境目には水飲み場(?)or噴水(?)と思われる構造物が残っています。
 
 

八代方を望む。
以前は右側に島式ホームがあり、左から貨物側線が合流していましたが、今は貨物側線跡を転用した保線用側線1本が左から合流するのみです。
この先、大川間川の谷に広がるのどかな田園風景を見ながら北上し、やがて山深くなるとトンネルが連続するようになります。概ね下り勾配が続きます。そしてカーブが増え、やや開けた農村部を走るようになりますが、再び山深くなるとループ線のトンネル上を直交します。その後、『しんぺい(下り列車は『いさぶろう』)』は一時停車して、右下に大畑駅を見ることができます。その後は連続下り勾配で右カーブを続け、270°ほど回って西寄りに針路を変えると左から線路が現れ、スイッチバックを行います。そして東へ進むと、進行方向右側に八代・人吉方面から登ってきた線路が現れ、それと合流すると、国内では唯一であるループ線内にあるスイッチバック駅かつ難読駅である大畑駅(おこばえき)へと至ります。
 
 

隼人方を望む。
右側には「人吉市SL展示館」の車庫があります。
また、ホーム端の先には構内踏切跡と思われる構造物が確認できました。
この先、大川間川の谷を南下するとすぐに宮崎県えびの市に入ります。その後は矢岳越えの頂上にある肥薩線最長の矢岳第一トンネル(矢岳トンネルとも。全長2,096.17m)へと入ります。このトンネルで矢岳駅の由来となった矢岳山ならびに分水嶺を越えて、右へカーブしてトンネルを出ると左手に加久藤盆地(えびの盆地)を見下ろせ、さらに遠方には霧島連山も望めます。『いさぶろう(上り列車は『しんぺい』)』は一時停車サービスがあります。その後は連続下り勾配で山深いトンネル区間を西へ走ると、やがて左下に真幸駅を見下ろせます。そして折り返し線へと入り、スイッチバックして隼人方面からの線路が右から合流すると肥薩線で唯一、宮崎県内に所在する駅である難読駅・真幸駅(まさきえき)へと至ります。
 
 
あとがき (アクセスは2020年時点)  
私が矢岳駅で下車(乗車)したのは2003年と2011年の計2度です。いずれも観光列車に乗車した際、長時間停車を利用して駅の外に出ました。2003年は吉松行きの『いさぶろう』に、2011年は人吉行きの『しんぺい』に乗車しました。現在は1面1線の棒線駅で、西側に古びた木造駅舎があります。駅前は山奥ながら田園風景が広がっており、民家が数軒ありますが、肥薩線を利用する人は少ないようです。
 
東京からですと東海道・山陽新幹線と九州新幹線を乗り継いで熊本駅または新八代駅まで行き、鹿児島本線と肥薩線の普通列車を乗り継いで人吉駅まで行きます(熊本~人吉には特急『かわせみやませみ』と特急『いさぶろう1号』も運行されています)。そして人吉駅で吉松行きの列車(『いさぶろう』も人吉以南は普通列車になるため乗車可能)に乗り換えて当駅下車です。熊本駅発の『いさぶろう』と普通列車は人吉駅で乗り換えなくても到達可能です。その日のうちに当駅に到達可能ですが、最終列車で訪問の場合は途中下車の時間がなく、下車してしまうと上下方向ともその日の列車がありませんので要注意です。日帰り訪問は無理です。
一方、大阪からですと新大阪駅から上記と同じルートで到達できます。タイトな日程になりますが(滞在時間2時間半程度)、日帰り訪問は可能です。
(飛行機の利用は考慮していません)
 
食料・飲料について、駅前にコンビニ・商店・飲食店は全くありません。飲料自動販売機はありますが、食料・飲料とも必ず事前に用意して下さい!
  
東京、大阪とも到達難易度が高いですが、肥薩線の当該区間が復旧した暁には、一度は矢岳駅でも途中下車されてみて下さい!
 
(参考:地理院地図、Google地図、Wikipedia)