約27年間に渡り、特急料金の値上げを実質的には行ってこなかった小田急が、2022年10月1日より料金を改定することを発表しました。
消費税の増税に伴う変更を除くと、値上げは1995年以来のこととなります。

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小田急を象徴する存在でもあるロマンスカーですが、その特急料金を値上げすることについては、どのような背景が考えられるのでしょうか。

避けられなくなった値上げ

1995年以降は特急料金の値上げを行ってこなかった小田急が、2022年10月1日からの値上げに踏み切ることとなりました。
平均改定率は22.2%となっており、利用する距離によって値上げ幅は異なります。

値上げの詳細については、阪和線の沿線からさんがまとめて下さっていますので、合わせてご覧下さい。



最初に結論から書きますが、今回の値上げについては避けられないものだったと考えています。
新型コロナウイルス感染症の影響により、鉄道会社の経営環境はどこも厳しいものとなっており、それは小田急も例外ではありません。

2020年に環境が激変して以降、どんなにガラガラな状況でも電車は走り、ロマンスカーも走り続けてきました。
徐々に利用状況は改善しつつありますが、人々の生活様式が激変しつつある中、利用者数が元に戻ることはないとみられています。

サービスの見直しによるコストカット、ダイヤの変更による減便、新たな収益機会の創出等、他の鉄道会社と同様に小田急も様々な手を打ち、経営状況の改善に努めてきました。
その次の一手が特急料金の値上げであり、見方を変えれば収益アップを狙える武器があるだけ、小田急は恵まれている状況だともいえます。

直近の状況だけに限らず、1995年と比較した場合においても、人件費やその他のコストは大きく増大していると考えられ、今まで値上げをしてこなかったこと自体が、相当な努力であったと思われます。
一方で、その努力を今後も続けていく場合、コストカットが中心になれば今以上のサービス低下は免れず、自助努力の限界を迎えたということなのでしょう。
小児IC運賃を50円にした中での値上げに対する批判も見られますが、将来的な利用者を増やすための投資であり、分けて考えるべきことだと思っています。

値上げの内容から分かること

今回の特急料金の改定は、全体的に見れば単純に値上げをしているだけのように見えますが、実際にはいくつかの意図が込められていると考えられます。
様々な面で検討を重ねて決められたことが、値上げの内容から見えてきました。

まず、様々な方が触れているとおり、チケットレス特急料金の導入により、移行を促進したいという意図があるのは間違いありません。
チケットレス特急料金の場合には平均改定率が12.6%となっており、料金面を優遇することで様々なコスト削減しつつ、利用者にも還元しようという意思表示なのだと思います。
また、特急料金が50円刻みに統一されており、釣銭の用意を減らすことも狙いにあるとみられます。

そして、今回の値上げをよく見ると、もう一つ特徴的な部分に気付きます。
一定の割合で値上げされているのではなく、近距離ほど値上げ幅が大きくなっており、基本的には遠距離ほど値上げ幅が抑えられているのです。
最も値上げ幅が大きいのは今まで310円だった区間で、町田から本厚木まで乗車するようなケースが代表例となっており、値上げ後はチケットレス特急料金でも450円となります。

これには近距離での利用を今よりも減らしつつ、遠距離での利用者を増やしたいという意図が込められているように感じます。
満席になってしまうような列車では、途中駅間で近距離の利用をする乗客がいた場合、前後の区間が空席のままとなってしまう場合があり、このような機会損失を減らすことにより、増収を図る狙いがあるのでしょう。
ロマンスカー自体も減便で本数が減らされているため、空席率が上がりかねない状況は避けたいのだと思われます。

そのような中で、新宿から小田原、藤沢への値上げ幅は抑えられており、湘南新宿ラインのグリーン車を意識していることも分かります。
今後はデジタルでのお得な商品も検討していくとされていますが、利用回数に応じた割引や還元を行っていくということなのかもしれません。

利用を促進したい区間の値上げ幅は抑えつつ、今後は囲い込みを図っていこうとしているのだと考えられます。
新商品の詳細は不明ですが、乗れば乗るほどお得になるという可能性は高く、続報が気になるところです。

おわりに

避けられないと思われる値上げながら、細かく見れば比較的良心的な内容となっていることも分かります。
利用するケースによっては、大きく値段が変わってしまうことは事実ですが、厳しい状況に対して少しでも力になれるよう、私自身は乗って応援をしていきたいと思います。