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【16km徒歩4時間!】横川〜軽井沢の信越本線廃線(旧線・アプトの道)を歩いて碓氷峠越え[史上最長片道切符の旅(55)]

2022年8月11日

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今回のルート

高崎〜小諸

 

ここは群馬県で一番大きな駅、高崎駅です。

ここは上越新幹線と北陸新幹線の分岐駅になっていますが、在来線でも上越線と信越本線の分岐駅です。これから乗車するのは、信越本線になります。

 

08:50 高崎駅 発

向こうには651系特急電車が停車中。草津温泉の玄関口、長野原草津口駅へ向かう特急草津で使用されています。

 

信越本線は北陸新幹線の開業で大きく姿を変えました。

 

(地理院地図を改変)

北陸新幹線は長野オリンピックの開催に向け、高崎〜長野が長野行き新幹線(当時)として1997年に開業したのが始まりです。

これは整備新幹線のため、高崎〜長野は並行在来線の対象とされました。

高崎〜横川と篠ノ井〜長野は引き続きJR信越本線として維持されましたが、横川〜軽井沢は廃線。軽井沢〜篠ノ井は第三セクターしなの鉄道が引き継ぎました。

横川〜軽井沢には日本一の急勾配66.7‰を有する碓氷峠があり、在来線時代は電気機関車を付けて運転していました。特急列車が新幹線に移行すればその需要は僅かなものとなるため、採算が取れないと判断されて廃止になったのです。



今回はこの廃止された駅間を歩くことになります。

信越本線を走っていると、左手に東邦亜鉛安中製錬所が見えてきました。

 

ここ群馬県安中市〜福島県いわき市は、安中貨物と呼ばれる亜鉛を運ぶ貨物列車が行き来しています。東邦亜鉛はこの2つのまちに工場を持っていて、それぞれ鉱石を輸送しているのです。

 

信越本線は複線ですが、安中駅では向こうからちょうど列車がやって来ました。手前側のホームは元々島式ホームだったようですが、真ん中の線路には列車が入らず柵が設けられています。

 

右手には榛名山が見えています。向こうの方には新幹線の秘境駅と称される安中榛名駅が存在。

北陸新幹線建設の際、群馬県が県内に駅設置を要求したため、単独駅として開業しました。

 

磯部駅から安中榛名駅までバスが出ており、相互の移動は可能です。

 

列車はどんどん山を登ってきて、高崎駅時点で94.3mだった標高が、横川駅で386.6mになっています。

ちなみに軽井沢駅は939m、碓氷峠の先は桁違いですね。

 

横川駅が近づくと、碓氷峠に備えて連結用の機関車を置いていた、引込線が近づいてきました。

 

東京から長野へ行くのに超重要だった拠点駅、現在は普通列車が行き来するだけの終着駅に過ぎません。



09:23 横川駅 着

線路は完全に途切れており、ここで行き止まり。ここから軽井沢まで16km歩きましょう。

 

お客さんは結構多くて、ここからハイキングへ向かう方もいらっしゃるみたい。僕と同じく廃線跡へ向かう方も数人、同じことを考える人もいるもんです。

 

横川〜軽井沢は元々、アプト式鉄道という方法で運行されていました。これは車輪と車輪の間に歯車をつけ て、車輪の間のギザギザに絡めて急勾配を登るものです。

 

駅前の排水口では歯車を噛ませていたレールを、グレーチングとして再利用していました。



時刻は9時半、横川駅を歩き始めます。

(地理院地図を改変)

横川〜軽井沢では途中で廃線跡が二手に分かれます。これは途中部分が新線に付け替えられたためです。

 

今回歩くのは古い廃線跡、アプトの道と呼ばれる遊歩道として整備されています。横川駅を出てしばらくは、新幹線開通直前までも使われていた、上り線を活用しています。

 

駅の近くには碓氷峠鉄道文化むらがあって、碓氷峠を越えた機関車EF63を動態保存しています。

 

ここには特急あさまで使用された、国鉄型特急189系が停車中。このくすんだ色の車体がとっても良いんですよね。

 

線路沿いを歩いていると、後ろから機関車が走ってきました。鉄道は廃止されましたが機関車が走っており、訓練を受けることで運転体験もできるのです。

 

歩いていきますと、見えてきたのは旧丸山変電所です。

 

横浜の赤レンガ倉庫みたいなレトロチックな建物。ところどころ白くなっているのが年季を感じさせ、とても好きです。

 

遊歩道は線路が残る旧信越本線下り線に沿っていましたが、現在でもこれを利用した、トロッコ列車シェルパ君が走っています。

こちらは変電所の前にある、トロッコまるやま駅。3〜11月の土日祝日に運転しています。

碓氷峠鉄道文化むら トロッコ列車ライン



左手にはずっと新線の線路が続いています。

遊歩道上にも架線柱が残されていますが、お金になる金属をを求め、盗んで行く人も結構いたそうです。

66.7‰はこの辺り、線路の奥側にあると聞いていましたが、見つけられませんでした…。

 

新線沿いを行くのはここで終了、ここから先は立入禁止です。トロッコが走っていないため、草茫々になっています。

 

改めて最急勾配を振り返ってみると、かなり登っていることが分かりました。

 

ここから信越本線の廃線跡は、新線と旧線に分かれます。新線を歩くには廃線ウォークに参加する必要があるため、今回はアプト式鉄道が走っていた旧線を歩きます。

 

ずっと太陽の下を歩いていましたが、ここからはトンネル区間も現れます。

 

トンネル内には大きなつららがいくつも!

 

トンネル内はライトがついて明るいので、そこまで怖くないです。

 

トンネルの入り口も煉瓦積みになっており、苔がむしたり黒ずんだりしているのも、文化遺産的な雰囲気を感じます。

 

左手には碓氷湖が見えてきました。中尾川と碓氷川の合流地点で堰き止めて造った人工湖。お日様で温かい冬の日、穏やかな水面が迎えてくれます。



更に碓氷第5トンネルを抜けたところで、目の前には大きな橋が見えてきます。

こちらはアプトの道の中でも大きな目玉、碓氷第三橋梁です。

 

煉瓦造りの4連アーチ橋は、めがね橋として親しまれています。豊かな自然の中に突如として現れ、高さ31mもの建造物を明治に作ったというのは驚きです。

 

橋から右に目をやると、新線の新碓氷川橋梁が見えました。めがね橋のような人の手で一つ一つ作り上げたものを、コンクリート橋で悠々と渡っちゃいます。

北陸新幹線は、1900年代まで特別な車両を用いなければ越えられなかった碓氷峠を物ともせず、山の中を6kmの碓氷峠トンネルで貫くだけです。

 

更にトンネルを歩き続け、旧熊野平信号場に到着しました。ここは新線と旧線の合流ポイントです。

 

1963年に新線へ付け替えられ、1966年に熊野平駅から熊野平信号場に降格しています。



ここから先は新線で、廃線跡を歩くことができません。

階段を降りまして、ここからは廃線でもなんでも無い、ただの国道を歩きます。鉄道よりも車のほうが坂道でも登れますから、ここからが急勾配が続いてキツイんですよね。

時刻は11:15、歩き始めてから1時間45分ほどです。

 

国道のヘアピンカーブ辺りでは、意外と近くで廃線跡を見られます。

 

結構歩いてきてますが、軽井沢まではまだ9km!?

 

ところどころ目にする、廃線のトンネルを楽しみにするしかありません。

 

永遠に続くクネクネ道路、勾配も急で結構辛かったり(笑)

 

トンネルが多いと思っていましたが、結構明かり部分を走ってたんですね。



そして山を登ること2時間…。

ついに頂上に到着しました!

 

ずっと拡大していくと、横川の町が見えています。あそこから歩いてきたんですね。

 

県境が見えてきて、碓氷峠越えもいよいよ終わり!

 

長野県北佐久郡軽井沢町に入ります。

 

後ろを向いて群馬県安中市の方は、めがね橋が描かれています。

 

更に進んでいくと、北陸新幹線の立派な線路が現れました。ここまで大変だった道のりですが、めがね橋の辺りからトンネルで一直線に来てます。

 

ちょうどE7系新幹線が、静か〜に出てきました。電気自動車が死角から飛び出してきたようです。

 

時刻は13:30、横川駅から4時間歩き続けて軽井沢駅に到着です!

 

結構疲れはしましたが、終わってみると達成感で楽しかったと感じるもの。今度は新線を歩く廃線ウォークに参加してみたいと思います。

 

駅近くの質が高いお店で、白い信州そばを頂きました。



ここからは第三セクターしなの鉄道へ。

隣には横川側と同じく、EF63機関車が展示されています。乗車するのは115系電車、長野オリンピックに合わせて塗装された信州色です。

 

14:29 軽井沢駅 発

向かい側には2020年に運行開始した、SR1系電車が停車中。軽井沢〜長野・妙高高原駅を結ぶ指定席列車、軽井沢リゾート号で使用されます。

 

お隣の中軽井沢駅周辺には別荘地が広がっており、特急あさまが停車していました。上野〜中軽井沢を結ぶ特急そよかぜまで設定されており、新幹線開通前はかなり位の高い駅だったのです。

 

右手には雪を多く積もらせた、浅間山が見えています。



14:53 小諸駅 着

小諸駅は長野行き新幹線開通前、特急あさま全列車停車駅でした。しかし、既存路線を活用するミニ新幹線ではなくフル企画新幹線が採用されたため、さらに新幹線駅建設のため小諸城址懐古園の用地を削ることに市民が反対したため、新幹線駅は設置されませんでした。

 

今回もご覧いただき、ありがとうございました。

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