東京都交通局では、都営新宿線で運行している電車の10両編成化を進めていたが、8月11日から
全編成の10両編成化が完了すると正式に発表された。
じわじわと置き換えと編成増強が進んでいた都営新宿線も、遂に一大転換を迎えた。
そして昨日、予定通りひっそりと運用を終えた。
…この情報を掴んだのは、7日の日曜日。
いつもの墨田に向かうタイミングで、あれこれネットサーフィンしている時に見つけた。
最後まで8両編成として運用されていたのは10-420Fで、既に京王線への直通運用は終了。
駅掲示の時刻表にも掲載される限定運用に就いているようだった。
この日は墨田がお昼の12時からで、割と早く全ての予定が終了。
ふらりと墨田区コミュニティバスに乗って京成押上線の八広駅に出て、時間を調べ直してみると
東日本橋〜馬喰横山廻りだと本八幡行きに1本間に合わない。
ただ、京成線で本八幡へ向かえば迎撃できるため、急遽京成八幡廻りを仕掛けた。
京成八幡と本八幡は、道を隔てた目の前。
地下に降りてからが200mと長いが、暑さを凌げるのは良い。
そして、14:16。
定刻通り、10-300形最後の8両編成10-420Fが眼前に現れた。
東京メトロ丸ノ内線の時と同様、ホームドアの標記類など細かいところも記録を収める。
車内番号類表記は、設計ベースになったJR東日本E231系に酷似。
先頭車の「8号車」表記はこれで見納めである。
製造が2005(平成17)年とまだ17年しか経っていないが、10両編成化するためには改造項目が
多岐に渡るようで、E231系ベースの2次車については対応する中間車の追加新製もされていたが
それが1次車の8編成に対しては波及することはなく、E233系2000番台ベースの設計に移行した
3次車以降、代替で10-000形と先頭車のみの10-300R形の淘汰に続いて廃車が始まった。
平均車齢17年程度での廃車は、同じ都営新宿線の10-300R形の10年程度に次ぐ短さである。
運転席も、両手操作式ワンハンドルが目立つほかは当時のE231系がベースである。
TIMSモニタもJR東日本のそれと同じだ。
このダイヤ修正で、発車案内表示の8両表示は見納めに。
先頭車両にもそれとなく「8両編成」ステッカーがあったが、これも見納めとなった。
そんな都営新宿線最後の8両編成となった10-420Fだったのだが、 同じ形態の10両編成も残るし
E231系ベースという没個性を忌避する傾向があったのか、撮影に来ている人は少なかった。
それは昨日のラストまでそうだったらしいが、その分外れた行動をするのは目立つわけで…
本八幡14:23発となった電車に乗り、ひたすら新宿まで各駅停車で西下したが…
途中から乗り込んだ中学生くらいであろう男が、車内外を駆けずり回ってはiPadのシャッターを
ひたすらに連写しているのには閉口した。
もはや記録云々の代物ではなく、ただシャッターを切り倒しているという感じだった。
よっぽど雷を落とそうかと考えたが、ヘルプマークを下げている姿にグッと口を閉ざす。
やがて馬喰横山で降りていったので、そのまま矛を収めた。
しかし、それで果たして良かったのだろうかという疑念は未だに消えない。
そう考えるのは、粘り強く話せばわかるという障害持ちの人が身近に居た経験ゆえなのだろう。
その点、うちはまだ症状が軽かったのかなぁと思うこともあるのだが。
そんなことがありつつも、都営新宿線をしっかり走り切って新宿に到着。
およそ50分におよぶ旅路であった。
ここで、笹塚方の引上線に回送されていく。
京王線内では、この10-300形8両編成の引退により先にオール10両化が達成されている。
「8両編成」という表記類は、すべて8月10日にその役割を終えた。
そして、7分ほどして折り返し本八幡行きとしてやってきた。
急に8両編成がやってきて、ワタワタと列車に走っていく乗客の姿があったが、それも今日から
どこで待っていても確実に乗車できるようになった。
さまざまな8両編成の証、いかにも10-300形な証も見つつ…
よく乗降する神保町、をさらに越えて…
小川町へ。
ここで、8両編成の10-300形とはお別れとなった。
最後の8両編成があった証、もここで収めて。
いよいよここからは、新たな時代を着々と歩んでいくことになる。
10-300形の8両編成は薄命であったに違いないが、過渡期を支えた車両として記憶されていく。