2022年にデビュー40周年を迎えたJR西日本の115系3000番台。国鉄形車両ながら、山陽本線岩国ー下関間のローカル輸送では依然主力として活躍しています。117系に似た転換クロスシートが並ぶ同番台。今回は乗り鉄視点で見てみました。

 

(※2023年6月に在籍編成数など本稿の一部を修正しました)

(※参考として取り上げた列車の運転時刻は24年3月ダイヤ改正に合わせています)

(※2023年10月14日から営業運転を始めたリバイバル瀬戸内色編成については、末尾に追記しました)

 

 

山口県内を走るガラパゴス形式

115系3000番台は国鉄末期の1982(昭和57)年に登場。主要機器類は115系ですが車内は大幅に異なり、関西圏の新快速で活躍していた117系譲りの客用扉2扉・転換クロスシートは、当時の普通列車では比較的ハイグレードな水準でした。

 

 

ただ活躍エリアはほぼ広島、山口地区に限られていたため、全国の鉄道ファンにはなじみの薄い車両のように思います。現在も4両編成17本が在籍していますが、運用は山口県内に押し込まれた形になっていて、ますます「ガラパゴス形式」と化しています。23年3月からは、ワンマン運転が開始されました。

 

 

山陽本線岩国ー下関の主力115系3000番台=本由良ー厚東、2022年

 

 

 

国鉄形に揺られる急がない旅

115系3000番台は岩国ー下関を約3、4時間かけて走り、特に南岩国ー大畠間や戸田ー富海間では瀬戸内海の車窓が楽しめます。また3313M(岩国午前7時16分発・下関同11時16分着)のように徳山駅や新山口駅で長時間停車する列車もあり(3313Mの場合それぞれ21分、29分)、写真を撮ったり途中下車したりと、良く言えば昔ながらの急がない旅ができます。

 

 

夏休みなどに「青春18きっぷ」などで鉄道旅行を検討中の方もいらっしゃると思います。のんびり良い景色を眺めながら国鉄形に揺られたい。でも長時間乗るならそこそこ快適に過ごしたいーそんな方には瀬戸内海沿いを走る115系3000番台も選択肢になるかもしれません。

 

 

また、空いている115系3000番台を狙うなら、日中走る下関—小月間の下関市内完結列車が意外と穴場のように思います。

 

 

瀬戸内海の入り江沿いを走る115系3000番台=戸田ー富海、2018年

 

 

新山口駅に停車中の115系3000番台。同駅では新幹線の接続もあり、長時間停車する列車が多く見られます=2019年

 

 

 

117系改造の中間車も活躍

岩国ー下関間で運行される下関総合車両所運用検修センターの115系(N編成)は4両編成で、主に二つのタイプあります。N-01〜05、07〜11の10本は4両全てが3000番台で、下関方から2両目のモハ114形に2基のパンタグラフ(1基は予備)を備えます。一方、N-14、16〜21の7本は117系から改造された3500番台のモハ2両を組み込む編成で、パンタグラフはモハ115形に1基あります。

 

 

パンタグラフを2基備えたモハ114形3000番台。写真は一時2基とも上げて運用に入っていた3009。通常は編成中央寄り(写真奥)の1基を使用しています=2018年

 

 

3500番台はモハ115形にパンタグラフを備えます。パンタの位置が異なるので、3000番台編成との識別は容易です=2016年

 

 

117系を改造した3500番台は、窓枠の四隅のカーブも識別ポイントです=2019年

 

 

 

一番快適と思われる席は?

モハ115・114の3000番台と3500番台は車内も異なり、3000番台は車端部からドア周辺までがロングシートで、ドア間に転換クロスシート(一部固定)が並ぶレイアウト。3500番台は車端部に転換クロスシート(一部固定)、ドア間はロングシートと転換クロスシート(一部固定)で構成されています。

 

 

鉄道ファンの方では1人で乗車する際、モーター音を楽しもうとモハを選ばれることも多いかと思います。下関の115系N編成で進行方向の2人掛け転換クロスシートを狙う場合は、3000番台車のほうが条件に合う座席数が多いので当たりといえます。

 

 

一方で3500番台車は進行方向の2人掛けシートが少ないものの、117系由来の空気ばね台車のDT32Eを履いているため、乗り心地は数段上に感じます。車内が空いている場合は3500番台車の中央部にある2人掛けが、個人的にはベスト席のような気がします。

 

 

また、23年3月のワンマン運転開始に合わせて、車内放送が自動放送に変わりました。モーター音を含めてそれらを録音する「音鉄」を楽しむ場合も、スピーカーの音質が良い3500番台がお薦めです。

 

 

転換クロスシートが並ぶ3000番台の車内。座り心地は比較的柔らかめです。一部の編成は赤色系のモケットに変更しています=2019年

 

 

3000番台モハの車端部はロングシートで、反対側の車端部は優先席になっています

 

 

クロスシートの端の席は固定のため、4人掛けのボックス席となっています

 

 

ドア付近は国鉄形のテイストが色濃く残っています

 

 

117系に似た115系3000番台ですが、天井を見ればやはり115系であることを実感します

 

 

3500番台の車内。3000番台と異なるレイアウトで、ドア間にロングシートがあります

 

 

3500番台はドア間の転換クロスシートの数が少なく、混雑時には落ち着かない感じがします

 

 

117系から改造された3500番台は平天井で蛍光灯カバーもあるため、田舎の普通列車とは思えない仕様になっています

 

 

 

クハ115形3000番台の運転席側。国鉄形のため前面展望は優れません。現在運用に就いているワンマン対応改造を受けた車両は、下写真のように一部座席が撤去されています=2022年

 

 

乗ってみて細かく見ると疲れも見えてきた115系3000番台ですが、リニューアルされた落ち着いたインテリアは、40年選手の国鉄車両とは思えません

 

 

 

以上、意外に知られていないガラパゴス形式、115系3000番台を紹介しました。ワンマン対応改造を受けた同番台はまだ引退の声は聞こえませんが、徐々に貴重な存在になってくることと思います。

 

 

 

復活した瀬戸内色編成について(追記)

JR西日本の懐鉄シリーズ第3弾として、115系3000番台N-04編成がデビュー当時の瀬戸内色に変更され、2023年10月14日から運行を始めました。運行情報は「JRおでかけネット」で公開されています。

 

 

 

復活した瀬戸内色。山陽本線を快走するN-04編成=2023年

 

 

下関駅に停車中のN-04編成。瀬戸内色が懐かしさを演出します=2024年

 

 

 

瀬戸内色のN-04編成の車内。私が乗車した24年1月時点では、「懐鉄シリーズ」第3弾をアピールする広告で統一されていました。また、同編成は窓ガラスがきれいになっていて、車窓が見やすくなっていました=2024年

 

 

 

※復活した瀬戸内色編成については、以下の記事にもまとめています

 

 

 

 

※115系3000番台が活躍する山陽本線岩国—下関間では2023年3月からワンマン運転が開始されました。乗車時の様子は以下の記事をご覧ください

 

 

※在籍する全17編成の座席モケットについても以下の記事でまとめています

 

 

※姉妹ブログでは1980年代の「ひろしまシティ電車」と115系3000番台を振り返る記事を書いています