【旅忘録】中国地方の全路線制覇を狙う旅~山陽本線を上る~

 ここ数年の中国地方の乗りつぶしを振り返る。山陰本線や伯備線、また広島電鉄や一畑電車などはすでに完乗して迎えた2020年、感染症禍に突入する直前に行った尾道旅行の途中で山口県に立ち寄り、宇部線、小野田線(支線を含む)に乗車。この年は新しく乗った路線がこの2路線のみとなる異常な年となった。しかし、昨年は春に錦川鉄道、岩徳線、山陰本線支線、美祢線に乗車。さらに秋には中国地方のローカル線の筆頭である芸備線、木次線、福塩線とスカイレールサービス、さらに冬には津山線、因美線、若桜鉄道に乗車し、残す未乗路線は山陰本線の幡生~益田間と姫新線、水島臨海鉄道の3路線(区間)となり今年を迎え、前回の旅で山陰本線の幡生~益田間に乗車したことで、残すは岡山県内の2路線のみとなった。

 今回の旅は未乗路線2路線と、乗車してから10年以上が経過している山陰本線の瀬野~三原間に乗車することが何よりの目標。さらに姫新線を完乗した後は兵庫県内で北条鉄道と神戸電鉄粟生線にも乗車する。旅の行程を大雑把にまとめると、旅の起点は博多駅。倉敷駅に夕方に着けばいいので、徳山まで新幹線で向かい、徳山からは在来線でひたすら倉敷まで進む。倉敷で水島臨海鉄道に乗車し、伯備線で新見に向か一泊。翌朝は姫新線を姫路まで向かい、路線バスで加西市の北条町へ。北条鉄道から神戸電鉄粟生線を乗り継いで、新神戸駅から新幹線で帰る流れ。博多駅を出て、博多駅に戻ってくるまではおよそ36時間だが、そのうち宿泊を含めて33時間あまりはひたすら新神戸までのこぎりの波のように進んでいく。



・博多から新幹線こだまで徳山へワープ


乗車記録 No.1

山陽新幹線 こだま844号 岡山行

博多→徳山 700系7000番台(レールスター) 指定席 


  博多駅から乗車したのは岡山行の700系こだま。博多駅では800系と並ぶシーンが見られた。JR九州の800系と700系は兄弟車両。800系は700系の構造を基本として作られており、見た目こそ全く違うが、よく見ると共通する部分も多い。800系も当初は山陽新幹線での運用も計画されたが結局実現はせず、新山口まで試運転で入線した実績をもつが、営業列車として博多より先に進んだことはない。九州新幹線の博多止まりの列車は11番のりばを使用することが多く、その他のホームに入線するのは朝夕の時間が中心となる。3月ダイヤ改正までは朝の時間帯に500系、700系、800系、N700系と山陽新幹線と九州新幹線で活躍する8両編成形式が13番~16番のりばに一同に会すシーンがあり、ひそかにゴールデンタイムと呼んでいたが、3月改正で車両が変わり見れなくなった。


 ひかりレールスターで一世を風靡した700系7000番台。九州新幹線開業までは山陽新幹線のスター的な存在だったが、現在では「こだま」の運用が中心で、「ひかり」として運用される列車はごくわずか。また、そのひかりのほとんどは、通過する駅がわずかとなっていて、以前のような走りを見れる機会は少ない。500系はアニメの影響もあってか撮影する家族連れが各駅で絶えないが、こちらは特に目立たず脇役に徹している。博多から徳山までの所要時間はこだまで1時間30分程度。新関門トンネルを通って山口県に入り、新下関で車内も落ち着くと、新山口で乗客を拾って徳山に到着した。




・徳山から山口地区の山陽本線を岩国へ


乗車記録 No.2

山陽本線 普通 岩国行

徳山→岩国 115系N-04編成


 新幹線で到着した徳山駅。来たのは昨年春以来約1年ぶり。宇部線と小野田線に乗りに行った際にはここに宿泊し、徳山から227系の普通列車で山陽本線・呉線を経由して広へと向かった。3月改正まではここが227系の運用の西限だったが、春の改正で新山口まで運用範囲が拡大した。駅はリニューアルされ、駅には周南市図書館も入る。さらに今年春からはICOCAの利用範囲もこの駅まで拡大し、自動改札機が新たに導入されている。ここからは新幹線で追い越した下関発岩国行の普通列車に乗車して岩国へと向かう。


 山陽本線は車窓から眺める瀬戸内海は美しい一方で、晴れると瀬戸内海側に日差しを受けるのでまぶしい。また、案外線路がクネクネしていて、特に宇部とか厚狭あたりを夕方に通ると、左右どちらもまぶしいというのが難点である。瀬戸内海は何度も眺めているので、今回は山側から景色を眺めて走る。新幹線や岩徳線、山陽道は徳山~岩国間を直線的に結ぶが、山陽本線だけは周防灘に沿って走り、光、柳井、由宇などを経由する。すれ違う列車は旅客列車より貨物列車の方が多く、九州方面へ向かう貨物列車とひっきりなしにすれ違うのは山陽本線らしい光景である。快晴の空のもと山口県を東進する。


 岩国駅に到着。多くの乗客が、先へ進む広島方面の列車に乗り換えて行った。接続列車は白市行なので、この列車は見送り、その後の糸崎行に乗車する。ちょうど隣のホームにはトワイライトエクスプレス瑞風が停車していて、人だかりができていたが、あの列車には前も遭遇したことがあるので、もう特に珍しいことはない。徳山駅ではこの列車の10数分後に岩徳線の岩国行も発車するが、だいたい同じ時間差を保って岩国に到着する。岩徳線にもう一度乗ってもよかったなと思いつつ、糸崎行を待った。




・227系で広島都市圏を通過して糸崎へ


乗車記録 No.3

山陽本線 普通 糸崎行

岩国→糸崎 227系A??編成+A55編成 6両編成 


 次に乗車するのは山陽本線普通糸崎行227系6両編成。この列車で終点の糸崎まで向かう。広島近郊の山陽本線は平日は3両編成の列車も多いが、土休日は6両~8両で運転される列車が多くなっている。3両編成と2両編成が運用されている227系0番台は、単独の2両・3両編成とこれらを組み合わせた4両~8両編成まで自在に組み合わせることができるため、時間帯や日によって柔軟に運用されている。この日は広島でプロ野球が開催されていたが、この列車が岩国を出るタイミングでプレーボールとなるため、もうマツダスタジアムへ向かう乗客の姿はまばらだった。


 下関が北九州と都市圏が一体となっている一方で、岩国は広島都市圏に隣接し、日々多くの人が岩国と広島の間を行き来している。先に述べたプロ野球の広島東洋カープは、二軍施設を山口県由宇町に持ち、2軍戦の試合もここで行われている。そのため岩国近辺はカープファンが多い。岩国を出ると最初の停車駅は和木。岩国市と広島県大竹市の間に挟まれた小さな町で、和木駅周辺では岩国市との境と広島県との県境がわずか数百メートルまで接近している。和木を出ると小瀬川を渡って広島県へ。大竹、玖波と停車していく。


 玖波を出ると瀬戸内海に浮かぶ世界遺産宮島が車窓に広がる。カキの産地でも知られるこのエリア、カキの養殖場が本州本土と宮島との間に広がる。玖波の次の大野浦は運行上の拠点となっていて、この駅で広島側に折り返す列車も多い。6両編成のため乗客もまばらだったが、宮島口で乗車した観光客で車内は多少混雑した。ここからは広島電鉄が車窓に並走し、廿日市から広島市へと入って、広島市の中心部に入っていく。



 広島駅が近づくと、太田川放水路を渡って横川、さらに旧太田川を渡って新白島、京橋川を渡って広島と三角州の北側を走っていく。広島で宮島から乗車した観光客が降りていき、今度は広島からの帰宅客が乗り込む。広島を出るとマツダスタジアムと広島貨物ターミナルを眺めて広島市を東へ走る。海田市で呉線が分岐し、その後瀬野まで来ると車内の混雑も落ち着き、広島都市圏区間もここで終わりを迎える。



 瀬野を出ると西条に向けて標高を一気に上げていく。セノハチと呼ばれ、山陽本線の難所の一つとして有名な区間。貨物列車は後ろにも補機と呼ばれる機関車を連結して、後ろから貨物列車を押しながら登っていく区間に入る。瀬野までは山間部ながらも広島のベッドタウンが広がっていたが、瀬野から先は車窓の景色も大きく変わる。次の八本松まではおよそ10分。山の中をクネクネと走って標高を上げていく。セノハチのハチにあたる八本松駅は、2002年まで貨物列車の後ろに連結した補機を走行中に切り離す補機解放が行われていたが、現在はこの先の西条駅まで連結し、停車して切り離す運用に変わっている。



 セノハチの山登りを終えるとそこは東広島市。瀬戸内海から標高を上げた台地の上に西条盆地と呼ばれる盆地が形成され、西条駅を中心に街が広がる。西条といえば、全国でダイソーを展開する大創産業の本社があるところ。新幹線は単独駅として東広島駅があるが、西条駅から南へかなり行った場所にある。西条を出ると今度は下り坂で山を下りる。2駅進んだ白市駅は広島方面から来る列車の約半数が折り返す駅となっており、ここから三原までは列車の本数が減る。白市駅は広島空港最寄りの駅で、路線バスで広島空港へと向かうことができる。


 白市駅を出て、再び景色が山がちになる。ここから三原までは沼田川が形成した谷間を進んでいく。河内駅を出ると車窓には大きな橋が見えてくる。広島空港方面から三原市の北部や世羅町方面へ抜ける県道の広島空港大橋。谷の底から道路までの高さは190m以上でアーチ橋としては国内最大の規模を誇る。列車はこの橋の下をくぐるが、下から見上げるだけでもその高さがよくわかる。この山の上に広島空港があるが、広島空港も標高331mで日本で三番目に高い場所にある空港となっている。もしここから広島空港まで地下鉄でも作ったとすれば、広島空港で150m地下に潜るエレベータでも作らないとできないだろう。


 沼田川の河口に近づくと、いよいよ三原市内へと入り、列車も終点に近づく。三原駅は在来線も高架化されていて、トンネルを抜けると三原市街が広がり、呉線の線路が近づいてくる。呉線は過去5年で数回通ったのに、山陽本線は15年ぶりくらいで、ほぼ初乗車に近かった。三原ではこの列車の終点である糸崎から先へ行く福山行の普通列車と接続して、先に糸崎に到着する。福山行も227系で、広島の227系の運用の東限は福山となっている。三原駅で乗り換えても、糸崎駅で乗り換えても、福山方面に向かう列車は同じ列車になるが、糸崎駅で接続する列車も多いためか、三原と糸崎で乗り換える人は半々だった。この福山行は終点の福山で岡山方面の普通列車に接続するが、何度も乗り換えるのは面倒なので、一本後の列車に乗車する。定刻通りに糸崎駅に到着。ここで約30分ほど列車を待つ。


 元々三原駅として開業した糸崎駅。現在の三原駅が開業した際に糸崎駅となったが、以降も運行上の重要な駅となっており、広島支社と岡山支社の支社境がこの糸崎駅と三原駅の間にある。山陽本線の広島方面の列車は基本的に糸崎駅発着の一方、呉線は朝夕のみ糸崎駅発着で運転されている。また、岡山方面の列車は三原発着の列車と糸崎発着の列車が混在していて、時間によってどちらで乗り換えるかが変わる。また糸崎発着の列車に接続するため三原から糸崎まで1駅間の列車も運転されるなど、下手すると一駅毎に2回乗り換える必要がある場合もある。駅の西側には車両基地が広がっていて、広島側の227系と岡山側の113系や117系が留置されている。





・再び末期色の車両で倉敷を目指す


乗車記録 No.4

山陽本線 普通 姫路行

糸崎→倉敷 113系B-13編成 4両編成 

 

 糸崎から乗車するのは姫路行の普通列車。糸崎を発着する岡山方面の普通列車は山陽本線完結列車のほか、赤穂線に直通する列車もあり、とにかく行先が多彩。ここは広島県だが、三石、吉永、長船と果たしてどれくらいの人が、それがどこにあるか答えられるのだろうか気になるところ。多くはどこが終点かは知らないけどとりあえず福山・岡山方面に向かう列車という感覚だろうと推測する。このうち姫路行は1日に2本のみ(うち1本は三原発)運転されるロングラン列車。明日姫新線に乗ってたどり着くこの旅の一旦の終点まで向かう列車に乗車する。この列車で終点姫路まで行けばおよそ3時間後には姫路に着くが、自分が姫路に着くのはまだ20時間以上先の話。いわゆる末期色の列車が大多数を占める岡山支社。先日ついに新型車両の投入が発表され、いよいよ岡山地区の車両も大きく変わろうとしている。糸崎駅で227系と末期色の電車が並ぶ光景ももうすぐ見納めになるのだろうか。



 糸崎と尾道の間は瀬戸内海を望むビュースポット。因島や佐木島といった瀬戸内海に浮かぶ島々としまなみ海道の因島大橋などを見ることができる。2年前、まだ世の中が感染症禍になる前に尾道をはじめとしたしまなみ海道エリアを訪れたが、あの時も快晴で瀬戸内海がとにかく青かったのを覚えている(過去記事参照)。



 糸崎では接続列車がなく、1両に1人状態で発車した普通列車。次の尾道で関西方面から尾道に観光に来た乗客を乗せ、尾道水道にかかる尾道大橋をくぐる。そこからは瀬戸内海から離れて山を越え、芦田川を渡ると福山駅に到着する。福山駅で大半の乗客が降車し、車内は案外空いた。


 福山は去年後半に2回も来てしまったのでまた来た感が強い。福山を出て岡山県へと入ると、倉敷まではもう一歩のところまで来ている。この春の改正から折り返し列車が設定された金光駅の発車票には福山経由府中の文字。福塩線も府中までは岡山支社のエリアで、ほとんどが線内運転のなか、一部列車が岡山方面と直通して運転される。新幹線と接続する新倉敷を出ると平野に出て高梁川を渡り、列車は倉敷駅へと到着した。

 徳山から始まった山陽本線の旅も3つの列車を乗り継いでここで終了。時刻は17時を回りそうなところだが、ここから水島臨海鉄道を乗りつぶす。(次回へ続く)