智頭急行は特急運行ではなく「車両リース料」で稼いでいる?【コラム】

智頭急行は特急運行ではなく「車両リース料」で稼いでいる?【コラム】

以前書いた智頭急行「スーパーはくと」の記事は、おかげさまでたくさんの方に読んで頂いています。ありがとうございます!

さて以前の記事でもちらっと書きましたが、智頭急行というと第三セクター鉄道でトップの収益力を誇る鉄道事業者として有名ですね。

長年この収益はスーパーはくと自身の旅客収入によるものと認識していたのですが、あれこれ調べているとやや違う実態が見えてきました。

というのも、車両の運行より車両のリース料…すなわち車両使用料が収入のメインであるようなのです。

 

決算書では

内訳が書かれている決算を見てみましょう。

営業収益の欄を見てみると、「旅客運輸収入」と「運輸雑収」の2つの項目があります。

出典:智頭急行 1)

旅客運輸収入は5億7556万8956円なのに対し運輸雑収は12億2430万1406円と、運輸雑収の方が上回っていますね。

運輸旅客収入は「鉄道を走らせて乗客から貰う収入」であると理解できますが、もう一つのあまり聞き慣れない「運輸雑収」とは何を指しているのでしょうか。

 

運輸雑収とは?

JR東日本の会社要覧資料にその答えが掲載されていました。

また、運輸雑収とは、旅行業手数料、JR貨物からの線路使用料などから構成されます。

出典:JR東日本 2)

 

また、政府のサイト内にある「鉄道事業会計規則」において、勘定科目としての「運輸雑収」が記されていました。

運輸雑収
旅客運輸収入、貨物運輸収入、鉄道線路使用料収入及び鉄道線路譲渡収入以外の収益

細かい内訳としては以下の内容が示されています。

専用線使用料:専用線の使用者から収納する料金(入換え作業、線路保守等に要する費用の使用者負担分)
駅共同使用料:所有駅を他の運輸機関に使用させた場合に収納する料金(駅務、施設保守等に要する費用の使用者負担分)

車両使用料:連絡運輸により他線に乗り入れた場合に収納する料金

土地物件貸付料:鉄道事業固定資産に属する土地、建物、機械等の貸付料金(専用線使用料、駅共同使用料及び車両使用料を除く。)
広告料:鉄道事業固定資産に属する施設内広告料金
構内営業料:構内営業者から徴収する営業料金
旅客雑入:旅客に係る諸料金(入場料金、乗車券払戻手数料金、携帯品一時預り料金、手回品料金等)
貨物雑入:貨物に係る諸料金(貨物保管料金、貨物留置料金、貨車留置料金、要償額表示料金、指図手数料金、橋秤使用料金、付添人料金、接続料金、引渡証明料金、謄本料金、証券手数料金等)
厚生福利施設収入:厚生福利施設に係る収益(施設ごとに区分して整理することができる。)
雑入:出札過剰金、遺失金、事故弁償金等他の科目に属さないもの(金額の大きいものについては独立した勘定科目を設けて整理する。)

この中で大きな収益として計上できそうなのは、やはり車両使用料ですね。

 

このことから、智頭急行は営業運転による収益よりもHOT7000形(上郡~京都間)HOT3500形(智頭~鳥取間)によるJRへの車両使用料で収益を得ているということがわかります。

鳥取県知事がいうところの「リース料」ですね。

前回の記事でも書いたようにJR西日本はそこを問題視し始めており、「スーパーはくとを姫路折り返しにしてくれないか…という話をJRが内々にし始めている」と知事が発言して話題となりました。

 

関連リンク

JR西日本は「スーパーはくと」を姫路折り返しにしようとしている?

 

参考文献

  1. 智頭急行「第36期貸借対照表・個別注記表・損益計算表(2022年3月期)」
  2. JR東日本「会社要覧」財務諸表 単体決算
  3. e-GOV「昭和六十二年運輸省令第七号 鉄道事業会計規則」

 

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