今日は緊急企画として、『日本最北の無人駅・木造駅舎』として鉄道ファンには人気のあった宗谷本線の抜海駅廃駅の事についての紹介ですが、6月22日に発表した原記事から写真を追加し、大幅に加筆修正の上で改めてアップさせて頂きます(原記事中に誤った記載があった事をお詫びします)。
 
ご承知かとは思いますが、抜海駅は根室本線(花咲線)の花咲駅(2016年廃駅)と同様なパターンで漁港のあるメイン集落から大きく離れているため利用客が少なく、JR北海道『ご利用の少ない駅の見直し』対象にリストアップされ、一時は廃駅になる処でしたが、周辺の集落に住む地域住民らの廃止反対の熱意が実り、2021年3月ダイヤ改正以降は所在する稚内市が維持管理費を負担する事によって存続が実現しました。
 
 
 
ところが、市が負担する年間100万円の維持管理費に見合うメリットがないとの判断から、「存続は難しい」として、6月21日の市議会で工藤広市長が2022年度を以て維持管理費負担を終了し廃駅を容認する方針を表明したとの事です。
 
6月22日配信、北海道新聞の(Yahoo!ニュース版)稚内市における抜海駅の維持を本年度で終了する事を伝える記事⬇️(※リンク切れの場合があります)

 

 
 
そんな抜海駅ですが、奇しくもその6月21日には61D特急サロベツ1号(※本来はキハ261系基本番台車の運用だが、前日の宗谷地方の地震のため一部特急列車が運休になったため『はまなす編成』が予定変更代走)が停車する、という珍事がありました。勿論運転停車なので客扱いは当然ありませんでしたが、宗谷本線の兜沼~抜海において線路点検とレール交換のためサロベツ1号は豊富駅で1時間以上の抑止を余儀なくされたのです。
(写真は豊富駅で足止めを食らった『はまなす編成』のサロベツ1号)
 
 
 
レール交換が終了し安全確認が取れたため、サロベツ1号は約73分遅れで運転再開、そのため稚内駅を18:03に発車する名寄行4330D(キハ54 502)と交換するために抜海駅に停車した、というワケでした。同駅において定期旅客列車同士の交換は長らく行われておらず、しかも『はまなす編成』の停車はかなりレアケースでしょう。やはり交換設備を残しておくと、突発的な事情で列車が遅延した場合に役立つ事が実証された形です
(写真は2枚とも6月21日のサロベツ1号・抜海駅停車時に車内より撮影)
 
 
 
抜海駅は1924(大正13)年開業以来の木造駅舎が今も使われているとされていますが、「建物財産標」には「昭和15年」(1940年)と表記されており、もしかすると増改築された時の事かもしれません。
 
 
 
 
宗谷本線(北部)の無人駅が軒並み車掌車改造の『ダルマ駅』に置き換えられていった中で昔ながらの駅舎を残す貴重な存在、なおかつ最果ての厳しい自然環境の中にある事から、当駅は何度も映画やテレビのロケ地になっており、近年では吉永小百合主演の東映映画『北の桜守』(2018年※石北線『白滝駅』に扮して登場)、そして時代を遡ると高倉健主演の東宝映画『南極物語』(1983年)、また小泉今日子主演の大映テレビドラマ(TBS系)『少女に何が起ったか』(1985年)が代表的な作品でしょうか。私は『北の桜守』を鑑賞していませんが、他2作品は子供の頃にリアルタイムで鑑賞(視聴)しており、特に『少女に…』(第1話と第4話に登場)のほうは特に印象に残っています。
(抜海駅舎内には『少女に何が起ったか』のシーンを抜粋した写真が貼られている)
 
 
 
また近年の『秘境駅ブーム』(※私的には道路でアクセスできる抜海駅の事を秘境駅と呼ぶには抵抗あるが)で、少ない普通列車を利用して訪れる鉄道ファンらも少なくなく、5月14日の『花たび そうや』号初回運転日においては同列車から稚内駅で下車後、4330D~4331Dで「抜海返し」をしたと思われる乗り鉄も意外と(?)多く見受けられました(写真はその時のモノではありません)。
 
 
 
 
このように、抜海駅は日常的な利用が僅少でありながらも、稚内市に存在する観光資源としての価値があると思うのですが、そういう発想に至らなかった市長には失望を隠せません。市にとって、抜海駅はそんなに軽い存在なのでしょうか?
勿論、維持管理費の財源は市民の税金ですから、私のような外野がとやかく言う権利は何もありません。一般市民の間に「税金のムダ遣い」という声が上がればそれまでですし。
ちなみに、稚内市公式観光ガイドブック『The Wonders of WAKKANAI 思わずやってみたくなる!稚内の楽しみ方 WOW!50』(2022年発行)には、その50の中に稚内市がロケ地となった先述の映画『北の桜守』と稚内駅の『日本最北端の線路』についての項目がありますが、『日本最北の木造駅舎』抜海駅の事に関しては一切記述がありません。

 
 
 
 
しかし、市民の税金がダメなら同じ宗谷本線に存在する塩狩駅(和寒町)のように寄付を募ったり(私も『花たび そうや』乗車の時に微力ながら募金しました)、全国の鉄道ファンや秘境駅愛好家らからクラウドファンディングなどの方法、そして返礼品を鉄道グッズという形で稚内市がふるさと納税を募る(但し当の稚内市はそこまでヤル気がない?)とか…存続のための資金を集める方法はいくらでもあると思うのですが。他方、「そういう事におカネを集める位だったら他の事に使え!」という意見も確かにあるでしょう。

稚内市民や鉄道ファンなど、各方面で論争になる事が必至な今回の抜海駅廃止問題ですが、今回のケースは「もう要らないから」と地元住民から理解を得られたというワケではないので、私的には「廃駅は仕方ない、やむを得ない」とは言えないんですよ。

 
稚内の市長さん、もう一度考え直して欲しいですね。
 
(※6月21日撮影分以外、本記事中の写真は撮影時期不定で全てイメージです)