稲刈り後の田んぼを試作しました。 | 16番ゲージレイアウトのこと..など

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16番ゲージの鉄道模型レイアウト・白縫鉄道川正線の制作記です。

 拙レイアウト、白縫鉄道川正線の季節は冬、終点の筑紫川正は、田んぼに囲まれた町ですから、刈田の製作は必須です。

 刈田と言えば、「摂津鉄道」の坂本さんの作例があまりにも有名です。坂本さんは、ボール紙にミシンで糸を縫い付けて作っておられましたが、この作り方、私にはちょっと無理そうです。

 昭和40年代初頭に発表された坂本さんの記事を始めて読んだのは、昭和40年生まれの私が中学生の頃です。それ以来、もっと簡単な作り方はないものかと思案を続けていましたが、川正線の製作に着手した頃、「鉄道模型趣味」誌で参考になる記事を見つけました。

 2012年12月号(No.844)の軽便際の記事です。”人工芝を利用して表現した稲刈り後の水田”というキャプションとともに、1枚の白黒写真が掲載されていたのです。

 その写真を頼りに、自分なりに製作法を考えて作ってみたのが試作第1号です(下写真)。

16番ゲージレイアウト田んぼ試作1号

 試作第1号の稲株を拡大してみます。

16番ゲージレイアウト田んぼ試作1号拡大

 自分では、なかなか良い感じだと満足していましたが、ある日、久しぶりに坂本さんの記事を読んでしまったことから、田んぼの色合いが、妙に気になり始めたのです。

 試作第1号の色合いは、下写真(by photolibrary)のような、自宅の周りで普通に見かける田んぼを参考にしています。

現在、普通に見られる刈田

 田んぼ全体が、稲わらの色(薄い黄土色)に見えます。それもそのはずで、稲刈りが終わった後、小さく切った稲わらを、田んぼの土に混ぜ込んでいるのです。これを「稲わらのすき込み」と言い、地力を向上させる手法らしいです。

 これに対して、昭和40年代初頭に発表された「摂津鉄道」の田んぼは、地面が黒いのです。坂本さんの製作記事にも、”黒と黄を主に調合したラッカーで塗る”と書かれています。恐らく、下写真(by photolibrary)のような田んぼを表現されたのだろうと思っています。

昔風と思われる刈田

 こうした田んぼの色合いの違いは、「稲わらのすき込み」を行うか、行わないかによるものでしょう。

 坂本さんの作例があることから、時代によって異なるのではないかと考えられます。また、地域性もあるのかもしれません。

 拙レイアウトの設定は、「昭和40年頃の九州の何処か」です。

 昭和40年頃の九州では、「稲わらのすき込み」は行われていたのでしょうか?

 文献を当たってみた結果、一般的には行われていなかっただろう、と判断しました(簡単に書きましたが、文献探しに苦労しました。参考文献は、文末に書いておきます)。

 すき込みに使う稲わらは、コンバインでカットするらしく、農作業が機械化される前は、「稲わらのすき込み」は、一般的ではなかったようです。

 

 さて、そういうことなら、地面を黒くした試作第2号を作らねばなりません。

 まず、人工芝をカットします。

 この人工芝は、試作第1号を作る際に購入したもので、近在のホームセンターを探し回り、細いパイルが密生している製品を見つけ出しました。

16番ゲージレイアウト田んぼ試作2号人工芝カット前

 人工芝のカットには、このハサミを使います。”万能ハサミ”という名称で販売されていました。普通のハサミを使うと、耐え難い指の痛みに襲われます。

万能ハサミ

 カットを終えた状態です。

16番ゲージレイアウト田んぼ試作2号人工芝カット後

 この状態だと、畑の作物みたいですが、白と黄土色のアクリル絵具を、ハブラシで刷り込むように塗ると、一気に田んぼらしさが増してきます。

16番ゲージレイアウト田んぼ試作2号人工芝着色前

 

16番ゲージレイアウト田んぼ試作2号人工芝着色後

 この上に、KATOの”達人芝(冬)”のような、稲わらの色に似た繊維系の素材や、麻紐をほぐして短く切ったものを撒くと、現代の刈田が表現できそうです。

 私の試作第2号は、KATOのターフ(土色ブレンド)と、近くの筑後川から採取してきた砂を混ぜたものを撒くことにします。

KATOターフと筑後川の砂

 マットメディウムの水溶液をスポイトで滴下し、乾燥したら完成です。

16番ゲージレイアウト田んぼ試作2号完成

 おお! 稲株の大きさはオーバースケールですが、作者的には、十分満足できる表現です。

 これで、私の中で燻っていた”田んぼの色問題”が解決しました。

 次は、地形の造成に取り掛かることにしましょう。

 本日も、ご訪問ありがとうございました。

 

参考文献

上出 順一:東北地方における稲わら処理の現状と問題点、農業機械学会誌 38 (3), 418-422, 1976

江口 末馬, 宮原 益次, 大塚 紘雄 :九州地域における土壌の種類,稲わら施用及び温度がベンチオカ-ブによる水稲の薬害変動に及ぼす影響、雑草研究 26 (4), p298-303, 1981-12