JR九州は10日、2022年9月23日の西九州新幹線部分開業に伴い、全エリアでダイヤ改正を実施することを発表しました。今回は西九州新幹線を中心に、西九州エリアについて分析します。

220610_september_23rd.pdf (jrkyushu.co.jp)

 

1.西九州新幹線について

(1)概要

 今回のダイヤ改正の最大の肝は、西九州新幹線の部分開業です。西九州新幹線は、博多~長崎を結ぶ予定の新幹線であり、今回は武雄温泉駅(佐賀県)~長崎駅までの部分開業となります。 

 今回の西九州新幹線開業により、新大阪・博多~長崎間は約30分短縮され、博多~長崎は最速1時間20分、新大阪~長崎は最速3時間59分で結ばれます!!

 

(2)運転形態

 運転形態としては、武雄温泉~長崎間は新幹線「かもめ」号、博多~武雄温泉は在来線特急「リレーかもめ」が走り、両者が武雄温泉駅で接続します。階段を使わず、同一ホームで乗り継ぎが可能であり、乗り継ぎ発生による利便性低下が極力抑えられています。

 なお、一部の「みどり」「ハウステンボス」も武雄温泉で新幹線「かもめ」に接続し、それらの列車は「みどり(リレーかもめ)」「ハウステンボス(リレーかもめ)」として運転されます。「かもめ」「リレーかもめ」は1本の列車として運転され、「かもめ」「リレーかもめ」を乗り継ぐ際は、特急券は1枚で発行されます。

 

(3)本数

 本数は武雄温泉~長崎間が44本、新大村~長崎間の区間列車3本の計47本が設定されます。新大村~長崎間の列車は朝に長崎行きが2本、深夜に新大村行き1本設定され、新大村車両基地への入出庫ついでに、大村・諫早~長崎間の通勤通学需要にこたえるものと考えられます。なお運転間隔は朝夕が毎時2本程度、日中は毎時1本程度となります。

 

(4)停車駅・車両

 途中駅は嬉野温泉・新大村・諫早の3駅であり、嬉野温泉は各駅停車タイプのみ停車(2時間に1本程度)、新大村は一部列車のみ停車(1時間に1本程度)、諫早には全列車が停車します。詳細はプレスに記載された時刻表をご覧ください。

 車両は新型車両「N700系S」が使用され、高い居住性・走行性能を備えた車両により運転されます。

 

2.長崎本線

(1)駅名の改称

 長崎本線と佐世保線の分岐駅である「肥前山口」駅が、「江北(こうほく)」駅に改称されます。肥前山口駅が所在する佐賀県江北町が、駅名の改称を以前から要望しており、これにJR九州が応える形となりました。(改称は改正日の9月23日からですが、以後「江北」と記します)

 

(2)運行形態の変更

 西九州新幹線の開業により、博多~長崎を結ぶ在来線特急「かもめ」は全廃となり、特急列車が通るルートも変更となります。これに伴い、以下のような変更があります。

 

①特急「かささぎ」デビュー

 博多~佐賀~肥前鹿島間では、新たに特急「かささぎ」が設定されます。博多~肥前鹿島間7往復、博多~佐賀間で上下3本設定されます。

②江北~肥前鹿島間で普通列車3往復を増発し、江北で特急列車と接続します。①②については、今回の改正により、肥前鹿島が特急が経由するルートから外れてしまうため、その救済の意味もあり、設定されたと考えられます。

③早朝に長崎→諫早間(新線経由・市布回り)に普通列車1本を増発します。この列車は諫早で「かもめ2号」に接続し、長崎市内から博多方面へのアクセスが向上します。

④一部区間の非電化化

 肥前浜~諫早~長崎間は非電化化され、気動車による運行となります。普通列車は江北~肥前浜、肥前浜~諫早、諫早~長崎での運行となり、肥前浜や諫早で乗り換えが発生しますが、原則同一ホームでの乗り換えとすること、朝夕は直通列車を運行することで、利便性を確保するようです。

 

3.佐世保線 特急の高速化

 特急「みどり」上下32本のうち10本が、カーブを高速で通過できる振り子式車両(885系)で運行され、博多~佐世保間の所要時間が最大9分短縮されます。現行の在来特急「かもめ」の運用がなくなり、余剰となる車両を充てるものと思われます。

 佐世保線の江北~武雄温泉間は「リレーかもめ」が走行するため、大町~高橋間の複線化や、地上設備の整備などが実施されました。こうした高速化工事もあり、所要時間短縮に大きくかかわっていると思われます。

 あと、どうでもいい話ですが、885系で運行されている特急は、時刻表上で「白いかもめで運転」「白いソニックで運転」と注釈が入っています。そうすると、9月以降は時刻表上で「白いみどりで運転」と表記されるのでしょうか…??白か緑かどっちやねん、って話ですね(笑)

 

4.大村線

(1)新駅「新大村」「大村車両基地」の2駅が開業します。新大村駅は西九州新幹線との乗り換えが可能です。

(2)快速「シーサイドライナー」の停車駅が変更となります。新大村駅に全列車が停車するほか、通勤時間帯は長崎~諫早間各駅停車となります。

 

5.観光列車

(1)観光特急「36ぷらす3」は、長崎本線の非電化化に伴い、9月19日(月)の運行を最後に月曜ルートの運行が終了となります。そのあとの設定に関しては、決まり次第発表されるようです。

(2)新たな観光列車「ふたつ星4047」が運行されます。午前便は武雄温泉→(長崎本線経由、肥前浜回り)→長崎、午後便は長崎→(大村線・佐世保線経由、早岐回り)→武雄温泉で運行されます。

 

6.まとめ

 いかがでしたでしょうか。部分開業ながら、長崎へのアクセスは大きく向上することになりそうですね。

 なお、西九州新幹線の開業に伴い、当初長崎本線の江北~肥前鹿島~肥前浜~諫早は、「並行在来線」として、JR九州から経営分離され、地元自治体などが出資する第3セクター路線になる予定でした。しかし、沿線自治体である江北町や鹿島市などは費用負担増となるため反発、結局佐賀県や長崎県なども交えた協議の末に、同区間は今後20年ほどは経営分離をせずにJR九州が運行を行い、上下分離方式で維持することとなりました。

 また、肥前鹿島への特急列車の運行も、開業後3年は14本、その後20年も10本は維持することで合意されています。新幹線開業により、負の影響を大きく受けるのは長崎本線の沿線なので、その沿線利用者に対して一定の配慮がなされたのはよいことといえるでしょう。

 西九州新幹線建設をめぐっては、佐賀県を中心に反発も強く、今後の先行きが見通せません。新幹線開業後、乗客流動がどのように推移するかによっても、今後の見通しは大きく変わりそうです。