89ミリの壁 | たっちゃんの鉄楽切り抜き帳

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「鉄道」を趣味の対象として、さまざまに楽しむ活動を記録するブログです。

 ロシアによるウクライナ侵攻は、終息が見えない状況が続いている。海上輸送ルートを塞がれたウクライナ産の穀物を、鉄道輸送で運んでいる映像がニュースで流れていた。
 穀物を満載にした貨物列車がポーランドとの国境に到着する。しかし、そこから先はそのまま鉄路を進むことが出来ない。軌間(ゲージ)に違いがあるからだ。旧ソ連のウクライナは1524ミリの広軌、ポーランドは1435ミリの標準軌。わずか89ミリの差が、国をまたいだ直通運転を妨げている。この差がなければ、世界的な穀物事情はだいぶ好転していることだろう。
 鉄道の軌間は、建設当時の事情でさまざまな規格が混在している。軌間が異なれば直通運転が出来ないため、我が日本でもさまざまな方法で克服が試みられてきた。日本の場合は、大半が狭軌1067ミリと標準軌1435ミリの違い、つまり368ミリ差の克服だ。
 たぶん、一番有名な例が三線方式。レールを三本敷設し、異なる軌間を共用する。

 画像は小田急電鉄が乗り入れる箱根登山鉄道で、左側の線路が三線になっている。以前は小田原駅と箱根湯本駅の間が三線区間だったが、運用の見直しで現在は入生田車庫から箱根湯本駅までに短縮されている。
 写っている乗り入れ用の赤い1000形電車もまもなく見納めになる。

 続いては、新幹線を在来線へ直通運転する、通称「ミニ新幹線」の例。狭軌の在来線を標準軌に改軌して解決している。しかし、区間によっては狭軌線も必要になることもあり、この画像は奥羽本線の北山形駅構内で、以前の複線を活用して二つの軌間で単線併設し、さらに構内で狭軌が分岐(左沢線)している。
 理想的な解決策は、車両側で軌間を変更するフリーゲージ・トレイン方式だが、研究はされているものの、なかなか実用化は難しいようだ。長崎新幹線への採用が断念された後、研究の続きは近鉄に託されたという報道があったが、その後は音沙汰なしだ。もし実現すれば、京都から吉野への直通特急が運転されるのだろう。
 東京では、かねてから噂になっていた蒲蒲線が実現に向けて動き始めた。東急線と京急線の軌間差をどのように克服するのだろうか。