はじめに
この記事の所属テーマ「鉄のなぎさ」。それは鉄道と他の分野とが接しあう、いわば「なぎさ」に当たるような事柄のこと。
そんな「鉄のなぎさ」を扱っていくコーナーです。
ブルトレ復活?
2022年6月1日、とある話題が入ってきました。
それは…とある会社が秋田港の24系客車を復活させたい!と表明したというもの。
2015年、コンゴ共和国に輸出するため寝台特急「あけぼの」で使用されていた24系車両27両が秋田港に回送されました。
そのまま輸出されるか…と思っていたら、何かの理由で頓挫したのかそのまま6年間ほど放置されたまま…
2019年ごろには全車線路上に戻されたものの、その後も放置が続いています。
秋田港に留置中の24系客車(画像中央の屋根が灰色で一か所に固まっている車両)。
(2021.9.15 ANA289便機内より)
貴重なブルートレインの車両。それが朽ちるにまかせるままになっているのを惜しんで今回手を挙げる方が現れたのだと思います。
ですが…すでに6年も潮風に当たっている車両。修復可能なのかもわかりませんし、それを運行するとなるとさらなるハードルが…
とても現実的とは思えませんが、さてどうなるでしょうか?
…というのは今回の記事とはあまり関係ないのです。
エゴサしてみたら…
この件に関して皆さんがどんな意見を持っているのか。Twitterで検索してみました。
「ブルトレ」「寝台列車」…で検索してみると、賛成意見と圧倒的な否定意見が…
それはともかくとして、この件だけでなくいろんなツイートが出てきます。
ブルトレ現役時代の写真とか模型とか…
その中で異色を放つものがありました。
それが、「寝台列車ASMR」。
ASMRとは聴覚に訴えかける心地よい音のこと。
確かに規則的なレールのジョイント音は眠気を誘いますからね~
以前私が寝台列車に乗ったときもけっこう気持ちよく眠れた気がします。
北海道クルーズ寝台列車「アルデバラン」
寝台列車のASMRはいろいろあるようなのですが、今回私が注目したのが「いやでんっ!~癒やしの寝台列車「アルデバラン」~」という作品。
なんと舞台は私の大好きな北海道らしいのです。
北斗星・カシオペア・トワイライトエクスプレスの北海道行き3列車をコンプリートするほど寝台列車×北海道の組み合わせが大好きな私。
北海道新幹線開業に伴ってことごとく廃止になってしまったのをいまだに残念に思っているほどです。
あのときの体験を音声作品の中だけでももう一度味わえたなら…
さっそくどんな内容なのか聞いてみることにしました。
まず聞いてみる
鉄道系のASMRを聞くのは初めて。ゆっくり耳を傾けているとまるで本当に列車に乗っているかのような気分です。
そして一緒に旅をしてくれる車掌さん。その吐息が近くに感じられてとても心地良い…
函館駅を出たこの列車。車掌さんによると、函館を出て、道央地方に入ってからは東へと進路を変えて海岸線を進み、オホーツク地方から道北へと進み、今日中に最北端・宗谷岬に向かうのだとか。
ん…今日中?…今日中!?
北海道の広さを体感できる看板(2021.5.9新千歳空港駅にて)
なぜかこの看板が脳裏にちらつきます……
北海道はでっかいどう…
細かいことが気になる…
「難しいことは考えずに」…と言われても細かいことが気になってしまうのが鉄オタの悪い癖。
気になりだすと止まらなくなってしまってまともに聴けなくなってしまいそうなので、ここは徹底的に考察してみたいと思います(?)
※この先は実際の北海道を走っていたら?と仮定して考えていきます。
運行経路
まずは運行経路から。
函館を出て道央地方へ、そこから東へと進路を変えて海岸線沿いを進み、オホーツク地方から道北を通って宗谷岬へ。
まず函館から北上するのなら函館本線を通るしかありません。
本日中に最北端に向かわないといけないので砂原廻りではなく駒ケ岳廻りのはず。
同様の理由で長万部からは海線(室蘭本線)を通るのではないでしょうか?
そのまま室蘭本線を苫小牧まで進むとそこは道央地方。ここからは東へと進路を変えて海岸線沿いを進むことになっていますが…
海岸線沿いを走るのは日高本線。しかしながら現在の終点である鵡川、および以前の終点の様似まで向かったとしてもそこから先に進むことはできません。
う~ん…
考えた結果、こうすることにしました。
そのまま室蘭本線を進み、北上。
追分から石勝線に入り、新得~根室本線経由で釧路まで。
こうすると釧路の手前で海岸線沿いを走ることになります。
釧路のひとつお隣、東釧路からは釧網本線へ。
一路オホーツク地方の主要都市、網走を目指します。
網走からは道北へ向かうべく石北本線を通って新旭川へ。そこから最北端に向かうには宗谷本線を通るしかありません。
宗谷本線を通って最北端の稚内に到着。ここがゴールとなるはずです。
函館・室蘭・石勝・根室・釧網・石北・宗谷の各線を通って北海道をぐるり1周。
その距離なんと1228.8km!新幹線の東京~博多間よりも長い距離です。
まさにクルーズトレインといえるでしょう。
さて、そんな長距離を1日で進んでしまわないといけません。
1日といってもさすがに24時間というわけには行かないでしょうから、ここは函館出発を6:00、稚内到着を24:00としましょう。
そうすると表定速度は68.3km/h。網走~旭川間の特急大雪4号の表定速度は61.4km/hなのでこれより急がないといけないことになります。
慌ただしい旅になりそうですね。
運行形態
続いてはこの列車の運行形態について。
「貴方様は完全貸切制の豪華寝台列車に乗り、素敵な車掌と共に“素敵な旅”に出かけます」
と説明文にあるので団体臨時列車扱いの臨時列車、いうなればクルーズトレインの「四季島」などと同じ運行形態だと推測されます。
TRAIN SUITE四季島(2020.9.21長野駅にて)
「アルデバラン」は北海道完結の豪華寝台列車。しかもたったひとりのために運行されるとなるとその価値は四季島をはるかに超えるでしょう。
ですが、JR北海道にはそのような列車を走らせる体力はないはず。
となると、ここは他の会社の車両が走っていると考えるべき。
例えば2020年から毎年夏季に北海道に乗り入れている伊豆急行の「THE ROYAL EXPRESS」。
寝台車こそついていないものの、JR北海道へと貸し出され、クルーズ運行を行っています。
THE ROYAL EXPRESS(2020.3.1 伊豆高原駅にて)
また、現在考えられている方法、オープンアクセス方式を用いてJRではない会社が車両の保有・運行ともに行っている可能性もあります。
北海道は魅力的な車窓や観光資源が多くあふれる地。しかしながら過疎地域であることから鉄道経営は難しく、運営者のJR北海道は厳しい経営を強いられ、クルーズトレインまで手が回りません。
そんな中他の会社が列車を運行できるオープンアクセス方式は、様々な問題があるとはいえ、北海道の鉄道の活性化につながると思います。
この「アルデバラン」運行会社もそれに一役買っているのかもしれませんね。
まとめ
オープンアクセス方式で運行され、函館・室蘭・石勝・根室・釧網・石北・宗谷の各線を通り、北海道をぐるっと周遊しながらも急ぎ足で駆け抜けていく…
「アルデバラン」を想像するとこのような結論になりました。
現在道南を走る四季島を除いて寝台車つきの列車が走っていない北海道。ぜひこの「アルデバラン」のような素敵な豪華クルーズトレインが北海道をぐるりとめぐるようになってほしいものですね。
そのためにはまず「THE ROYAL EXPRESS」の試みが軌道に乗ってほしいですが…
それでは。
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