シーナリィ工作に着手する前に、地形について考えておくことにします。
上の写真は、当レイアウトの集落部分です。
今はまだ仮置きの状態ですが、この集落部分は、全体的に周辺の田んぼより高くして、屋敷の一軒一軒についても、石垣などで細かな高低差をつける工作を楽しもうと目論んでいました。
地形的に言えば、この集落は、田んぼより高くなった「自然堤防」の上に立地している想定です。田園地帯では、自然堤防の上に集落が立地することが多くあります。
↑自然堤防上の集落
この想定で工作手順を考えていた時、ふと疑問が生じました。
「この地形は、自然地理学的にあり得るのだろうか?」
「そこに自然堤防が存在することに矛盾はないのだろうか?」
一度でもそう思ってしまうと、自然堤防がどんな所に形成されるのか、調べてみないと気が済みません。
そこで、自然堤防の分布がわかる地図はないかなあ、と思って探したところ、見つけました!
国土地理院の「治水地形分類図」がそれです。
治水地形分類図は、治水対策に役立てるため、比較的大きな河川の流域に限って作られた地図で、自然堤防だけでなく、いろんな地形の分布がわかります(治水地形分類図に書かれている地形の一覧へのリンク、同じページの左側にある一覧から地域を選択すると分類図が閲覧できます)。
この分類図を閲覧したところ、我が家の周辺は、段丘面に囲まれていて、近くには、段丘崖もあることがわかりました。
↑我が家の近くの段丘崖
そして、分類図を見ながら思ったのですが、レイアウト制作において、理に適った地形を作るには、自然堤防のような小さな地形の前に、山地や段丘面のような大きな地形の配置を考えた方が良さそうです。(※)
そこで、当レイアウトの、線路が敷かれる前の地形を考えてみました。
将来、駅になる場所は段丘面があったことにします。川正城が築かれる場所は、岩石が取り残された「ビュート」があったことにしましょう。河川も、川正城の堀として利用されることになります。
治水地形分類図を閲覧するきっかけとなった自然堤防については、九州地方の場合(他の地方は詳しく見ていません)、段丘面に隣接して自然堤防が存在することは稀であることがわかりましたので、当レイアウトへの配置を断念しました。
ちなみにビュートは国内にも存在しますが、分かりやすい例はコレです。
↑ビュート(by photolibrary)
↑ビュートを活かして築城された川正城
これは、線路敷設後の地形です。線路の敷設に伴って、山地の一部が切通しになりました。
自然堤防を取りやめたので、当レイアウトの集落は、田んぼと同じレベルの氾濫平野上に立地することになりました。
既に下地を作ってしまった集落内の道路は、切り下げる必要がありそうです。
↑平野上の集落
久留米市内にある平野上の集落を観察すると、水はけの観点からだと思いますが、屋敷の土地は、田んぼより少しだけ高くなっていて、しかも、屋敷ごとに微妙な高さの違いがあります。また、低い石垣で囲まれた屋敷もあります。これなら、最初の思惑を違えることなく、屋敷の高低差作りをじっくり楽しめそうです。
以上、レイアウトの地形を考えてみましたが、本来、地形は、線路敷設の前に、しっかり考えておくべきです。そうすることによって、線路の形にも説得力が生まれると思います。
ところで、私は、この反省を次に活かせるでしょうか?
今後、川正線のような定尺サイズのレイアウトは、もう作れないかもしれませんが、いつの日か、地形に凝った小レイアウトでリベンジしたいですね。
それにしても、鉄道模型レイアウトの製作には、なんと多くの知識が必要なことか。前も書きましたが、正に「趣味の王様」だと思います。
本日も、ご訪問ありがとうございました。
※ 山地や段丘面とて、地理学的には「大きな地形」とは、とても言えません。あくまでレイアウトに配置する場合の考え方です。