小田急電鉄5000形5051編成 甲種輸送 令和元年11月1日(金)撮影 | ふなたんのブログ

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川崎重工業兵庫工場で完成した小田急電鉄(以下小田急と略)の新型通勤車5000形5051編成(10連)の甲種鉄道車両輸送が,令和元年10月31日(木)から11月2日(土)にかけて兵庫駅-神戸貨物ターミナル駅-吹田貨物ターミナル駅-松田駅間(山陽本線・東海道本線・御殿場線経由)で運転されました。輸送番号 甲149 甲150

 

川崎重工業兵庫工場はJR山陽本線の兵庫駅から分岐し南下する山陽本線の支線和田岬線の西側に位置します。和田岬線から工場までの引き込み線がつながっています。同工場で製造され甲種輸送で車両を発送する場合は,JR貨物岡山機関区所属で吹田機関区常駐のディーゼル機関車DE10形が単機で工場敷地(引き込み線)まで迎えにきます。甲種輸送車両と連結後,引き込み線から和田岬線を通り兵庫駅まで車両を出線させます。発着は兵庫駅の和田岬線ホームとなり,線路有効長の関係から車両が9両以上の場合は,あらかじめ兵庫工場内で編成を2分割し2日間に分けて神戸貨物ターミナル駅まで輸送します。神戸貨物ターミナル駅到着後,1日目に到着していた車両と2日目に到着した車両を連結し,輸送が行われます。

 

兵庫駅(10:43発)-9892レ-神戸貨物ターミナル駅(10:52~13:16)-8660レ吹田貨物ターミナル駅(14:04~23)-㋵9866レ-京都貨物駅(14:56~16:23)-静岡貨物駅(2:03~20:58)-9868レ-沼津駅(22:04~23:32)-㋵9688レ-松田駅(0:48着)。

 

けん引機関車は,川崎重工業兵庫工場-兵庫駅-神戸貨物ターミナル駅-吹田貨物ターミナル駅間は,JR貨物岡山機関区所属で吹田機関区常駐のDE10形1743号機,吹田貨物ターミナル駅-松田駅間は,JR貨物新鶴見機関区所属のEF65形2074号機がけん引しています。

 

松田駅到着後,御殿場線と小田急小田原線を結ぶ連絡線を通り小田急小田原線の上り線(新宿駅方)に進入し,そこで折返して新松田駅へ入線します。EF65形2074号機が引き続きけん引しました。

この区間は,JR貨物の機関士から交代した小田急の運転士がEF65形を運転しています。小田急の運転士は「車両輸送担当」と呼ばれています。「車両輸送担当」は社内から選抜試験を経て選ばれます。社内選抜試験を経て選ばれた運転士は,海老名で車両輸送担当者による事前教育を受けます。その後,JR貨物東海支社の稲沢機関区で「甲種鉄道車両搬入に伴う同車種転換養成講座」という小田急運転士専用の研修を受けます。この課程に合格すると「車両輸送担当者」として運転を担当する資格を得る事が出来ます。

 

新松田駅でEF65形2074号機を切離し,同駅から小田急線内の輸送は,1000形(未更新車)1065編成(4連)+1053編成(4連)8両がけん引しました。この輸送も「車両輸送担当」の資格が必要です。

 

5000形は,通勤車両8000形・1000形の代替車両として平成31年・令和元年(2019年)度から製造が開始されました。通勤車両では,4000形以来12年ぶりの新形式通勤車両となります。

令和2年(2020年)3月26日から営業運転を開始しました。令和2年度は5編成が投入されます。今後も増備が計画されています。

 

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▲川崎重工業兵庫工場で製造された小田急の新形車両5000形第1編成(5051編成)が甲種鉄道車両輸送で運ばれていきます。

5000形は,平成30年(2017年)3月に完成した小田原線代々木上原駅-登戸駅間の複々線化完成後に初めて新製された通勤車両で,混雑の緩和を実感できるよう「より広く,より快適に」をキーワードに,拡幅車体を採用,車内空間の広さ,明るさ,安心感,優しさを追求,年齢や性別を問わず価値観の変化にとらわれない,乗客の生活に溶け込むようなシンプルかつスピード感を感じられるデザインの通勤車両として製造されました。これまでの通勤車のイメージを一新する車両を目指し設計されています。

 

▲JR貨物岡山機関区所属で吹田機関区に常駐するDE10形1743号機が,川崎重工業兵庫工場から神戸貨物ターミナル駅を経由し,吹田貨物ターミナル駅までけん引します。

駅手前にゆるやかな勾配があり,DE10形は力行しディーゼル機関をふるわせて走行していきます。

 

▲吹田貨物ターミナル駅でけん引機を交換し,JR貨物新鶴見機関区所属のEF65形2074号機がけん引します。輸送途中に経路の北方貨物線内で線路支障が発生,甲種輸送列車は尼崎駅にて抑止となりました。尼崎駅-吹田貨物ターミナル駅-京都貨物駅間は,所定の時刻から約1時間遅れで運転されました。京都貨物駅での長時間停車を利用し遅れを回復し,京都貨物駅の出発は所定の時刻となりました。

 

東海道本線(JR京都線)西大路駅にて

 

▲約1時間遅れで京都貨物駅へ到着する5000形第1編成(5051編成,画像手前からクハ5450形(Tc2 1号車)5451-デハ5400形(M5)5401-サハ5350形(T3)5351-デハ5300形(M4)5301-デハ5200形(M3)5201-サハ5250形(T2)5251-サハ5150形(T1)5151-デハ5100形(M2)5101-デハ5000形(M1)5001-クハ5050形(Tc1 10号車)5051の10両)の甲種鉄道車両輸送。9866列車。

5000形は,平成31年・令和元(21019)年度にクハ5050形2両,デハ5000形5両,サハ5050形3両が製造され10連固定編成1本が組成されました。電動車(M)5両,付随車(T)5両の5M5Tの10両編成で,自社線内のみの運転用として設計されました。車体幅2,900㎜・裾絞り形状の広幅車体の通勤車両は,昭和57(1982)年に登場した8000形以来37年ぶりとなります。

通勤車両で初めて流線型(スラントノーズ)の前頭形状を採用しました。

 

東海道本線(JR京都線)西大路駅にて

 

▲クハ5050形5051(Tc1) 当車は編成の新宿方先頭に位置する10号車。小田原方に位置する1号車クハ5450形とともに定員は144名。床下に自動列車停止装置(ATS)としてD-ATS-P形装置(Digital Automatic Train Stop Pattern),蓄電池,整流装置などを装備しています。踏切事故などでの衝突に備えて,前面形状は万が一の衝突事故の際,乗務員を保護するための生存空間を残せる構造です。先頭車両と隣接車両の間に特急車両70000形『GSE』と同様の衝撃吸収・乗り上がり防止(アンチクライマ)装置を備えています。

先頭車両は連結面間20,400㎜,車体長20,035㎜となります。

甲種輸送のため機関車の次の位置に連結されるクハ5051の前面窓は,電気機関車の集電装置(パンタグラフ)から飛散する汚れを防止するため,青色のビニールが貼付け(保護処理)られています。側窓に甲種鉄道車両輸送に必要な特大貨物等検査票が貼られ,その横に製造を担当した川崎重工の社名と社章入りの紙を貼付けられています。川崎重工業の方々が製品としての車両に添乗し,輸送中の状態チェックなどを行います。

 

▲デハ5200形5201(M3)。当車は編成中間5号車に位置する電動車。定員155名。床下にVVVFインバータ制御装置,電動空気圧縮機などを装備します。機器構成は2号車のデハ5400形(M5),9号車のデハ5000形(M1)も同様となります。新宿方屋上にシングルアーム式PT-7113-B形集電装置を1基搭載しています。

5000形では集電装置(パンタグラフ)の搭載位置が,小田原方から新宿方に変更されました。

集電装置は,デハ5000形(M1)・5100形(M2)・5200形(M3)・5300形(M4)に各1基搭載されています。

中間車両は連結面間20,000㎜,車体長19,500㎜となります。

今後の可動式ホーム柵の普及に考慮し,車両番号は画像のように車端部の高い位置に標記されています。

 

サハ5250形5251(T2)。当車は編成中間6号車に位置する付随車。床下にサハ5150形(T1)とともに非常時脱出用梯子の格納箱が設置されています。

装飾帯は小田急のシンボルでもある青帯(インペリアルブルー)に細帯のアズブルーを追加,ステンレス仕上げの車体を明るく,軽やかな印象となるよう2色2本線の構成となっています。

客室内は拡幅車体の利点を生かし,室内は視覚的要素を考慮し白色を基調としています。広い空間を演出できるよう天井部は構成面の凹凸を最小限にできるLED式灯具としています。

一般腰掛色を活力となるビタミンカラーである「ビブラントオレンジ」,優先腰掛色は上質な表現となる「ピースブルー」を採用しました。床面をフローリングをイメージする木目調デザインとし,落ち着ける視覚的な効果を考慮しています。

荷棚部,袖仕切,車両間の貫通扉に強化ガラスを採用,広々した居住空間を感じられるようになっています。車両間の貫通扉はアシスト付き取手を採用。

各車両に1か所「車いす・ベビーカースペース」を設置(床面にも車いすと親子連れのピクトグラムを表示)。

サービス機器として,各乗降扉上部に車内案内表示器(TVOS)として17インチワイド液晶(LCD)を搭載した表示器を2台搭載,小田急の通勤型車両として初めて1両に4台防犯カメラを配置。

種別行先表示器は,前面種別行先表示器と側面種別行先表示器で構成され,高輝度フルカラーLEDで表示します。

5000形は川崎重工業,日本車輌製造,総合車両製作所(J-TREC)横浜事業所の3社で共同設計,製造が行われています。「川崎重工業のスポット溶接」,「日本車輌製造のブロック工法」,「総合車両製作所のオフセット衝突対策」と各社の強みとなる技術を採り入れました。

 

軸梁軸箱支持方式ボルスタレス空気ばね台車。画像は先頭車両運転台寄りで駐車ブレーキ付きNS-102TA台車。電動車はNS-102台車,付随車はNS-102T台車となります。

台車は特急型車両70000形『GSE』でも実績のある日本車輌製造製のNS台車を採用。この台車は,台車の骨となる台車枠製造の一部にプレス加工を用いることで,従来比約3割の溶接長が削減,溶接部の疲労リスクの削減に寄与し省メンテナンスな台車となっています。下向きに開口部を設けた「コ」の字型のプレス鋼板と,下面のプレス鋼板を組み合わせた構造です。JR東海N700Sで使用されている台車と同じ構造で,クラックが発生しやすい溶接部を少なくする狙いです。

駆動装置低騒音形の駆動装置を採用。波面形状を見直し高速域での歯車の摺動音を低減しています。平行カルダン・WNカップリング継手,ギヤ比は6.31となっています。

 

▲電動車の海側(小田原方に向かって左側)床下に設置されるMAP-194-15V330形VVVFインバータ制御装置。電力回生ブレーキ(純電気ブレーキ制御付),PGセンサレスベクトル制御機能,定速運転機能,抑速機能付き,主回路にはフルSiC(シリコンカーバイド)を適用したVVVFインバータ制御装置1台に対して主電動機接続は4台並列接続×1ユニットとし,機器の共通化と重量の平均化を目的に1両1ユニット方式で統一しています。主電動機は190㎾の全密閉外扇式三相誘導電動機を採用,1000形リニューアル車と同形式とし,機器の共通化を行っています。

補助電源装置はIGBT素子を使用した静止形3レベルインバータで,出力AC440V,260kVA,60Hzの待機二重系を4号車、8号車に2台搭載しています。

電動空気圧縮機は交流駆動・潤滑油が不要のオイルフリーレシプロ式で,静音機器箱内に収納され低騒音化が図られています。

列車情報管理システムはに対応した次世代形車両情報管理装置(N-TIOS N-Train Information Odakyu management System)が初採用されました。各車両に搭載イーサネット伝送による大容量データ通信型となり,基幹伝送路をループ化・二重化により信頼性向上が図られています。各種装置間とはリアルタイムな稼働情報を収集,そのデータをWiMAX装置により伝送可能なシステムとし,地上側で車両状態を把握し,車両不具合時の早期対応,データ分析による状態監視保全(CBM Condition-Based Maintenance)を目指しています。

可動式ホーム柵対応として,停止位置のばらつきを防ぐた列車定位置停止支援装置(TASC Train Automatic Stopping Controiier )車上子を搭載しています。

 

▲クハ5450形5451の前面下部。小田急の連結器は密着連結器ですが,クハ5050形5051とともに機関車と連結するため連結器は並型自動連結器に交換のうえ取付ています。正規の連結器は車内に置かれています。機関車からの空気ブレーキ作動のための空気ブレーキ管の仮設取付・後部標識灯の代わりとなる赤色円板の取付など甲種鉄道車両輸送ならではの光景が見られます。小田急のけん引車1000形は密着連結器に自動連結器のアダプターが装着されます。

搬入車両の連結器は,大野総合車両所または海老名検車区に到着後,交換されます。

 

画像は特記以外,東海道本線(JR神戸線)甲南山手駅にて

 

【参考文献】

・「鉄道ピクトリアル 2020年8月臨時増刊号 【特集】小田急電鉄」(電気車研究会)

・「鉄道ピクトリアル 2020年3月号」(電気車研究会)

・「鉄道ファン 2020年4月号」(交友社)

・「小田急電鉄40年の軌跡」(2021年7月発行 イカロス出版)