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ブレーキ音「キキーッ」だけで揉めた? JR貨物 vs JR東海

2022(令和4)年3月の改正では、貨物列車関係で大きな変化が一つありました。EH200というJR貨物の機関車が、JR東海の営業エリア内で本格的に走り始めたのです。

「ブルーサンダー」の愛称を持つEH200。私のようなオッサンは、ブルーサンダーと言われると、SMAPの『青い稲妻』を連想する(笑)

これまではEF64という機関車を2両くっつけて(=重連という)仕事をさせていたところに、EH200が“後継機”として投入された形です。

H級機関車は1両? 2両? 線路使用料の計算で揉める

ただ、EH200自体は別に新しい機関車でもなんでもなく、JR東日本のエリアでは、それこそ十数年前から走っています。それが今回、JR東海エリアでも走り始めたというだけの話で。

JR貨物も、もっと早くEH200を東海エリアに入れたかったようですが、「EH200が走行した場合の線路使用料をどう計算するか?」で、JR東海側となかなか折り合いがつかなかった模様です。

JR貨物は自前の線路をほとんど持たず、JR旅客会社や第三セクター鉄道の線路を借りて、貨物列車を運行しています。その際、通行料として線路使用料を支払うのですが、この金額を決める計算に「機関車の両数」を使います。「機関車1両で引っ張っている貨物列車」と「機関車2両で引っ張っている貨物列車」では、線路使用料の額が違うわけですね。

という話をしたところで、改めてEH200の写真を見てみましょう。この機関車、何両に見えます?

「2両だよね?」と思うでしょうが、さにあらず。少なくともJR貨物の主張では、このタイプの機関車(H級という)は1両なのです。

ところが、それでは納得しなかったのがJR東海。実質的に2両なのに、コイツを1両扱いされたのでは、徴収できる線路使用料(通行料)が減ってしまいます。「そいつは勘弁してくれ」ということで、長年折り合いがつかずに、EH200は東海エリアから締め出されていた(?)ようです。

今回、EH200が晴れて東海エリアを走れるようになったということは、JR貨物「コイツは1両!」vs JR東海「いや2両だろ!」の論争が決着したはず。どういう形で収束したのかは知りませんが(^^;)

スーパーレールカーゴは機関車何両ぶん相当?

「機関車何両ぶん?」という論争は、EH200だけではなくて、他の車両でもあったようです。スーパーレールカーゴのM250系です。

佐川急便の宅配便専用列車として東京~大阪間を走る

このスーパーレールカーゴは、まったく新しいコンセプトの貨物列車です。従来の「機関車が先頭に立って貨車を引っ張る」というスタイルではありません。編成中に電動車ユニットを組み込む形……と書くと難しくなってしまいますが、ようは一般的な電車と同じスタイルで作られた車両です。

つまり機関車を使っていないので、それまで線路使用料計算の基礎としていた「機関車何両ぶん?」が通用しないわけです。あとはもう、どう解釈するかの問題。

そして、やっぱりJR貨物とJR東海との間で主張が分かれます。

JR貨物の言い分。このスーパーレールカーゴは、従来の機関車で引っ張るスタイルの貨物列車よりも、線路に与える負担が小さい。だから線路使用料は安くしてくれ。

これに対するJR東海の言い分。スーパーレールカーゴは、編成の前後に電動車ユニットをつけている。だから、機関車2両分とみなして線路使用料を計算したい。

こんな感じで揉めたようです。

ブレーキ音キキーッ → うるさいから改善してくれ

貨物 vs 東海の昔話は他にもあって……。

みなさんは、「貨物列車が停止する瞬間」を目の前で見たことがありますか? キキーッとけっこう大きなブレーキ音がしますよね。東海側はこれも気に入らなかったらしく、貨物側に改善要求(=もう少し音を小さくしてくれ)を出したと聞いたことがあります。

同じJR旅客会社でも、東日本などはわりとJR貨物に寛容(?)ですが、東海は厳しいなぁという印象があります。私の勝手なイメージかもですが。

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本記事の写真提供 シリウスさん

本記事内の写真は、はてなブロガー・シリウスさんが運営する『新・シリウスの線路際のロマンを求めて 』から拝借しました。写真使用の許可をいただき、ありがとうございました(^^)

『新・シリウスの線路際のロマンを求めて』は、いわゆる鉄道写真の撮影系ブログですが、その特徴は質と量。撮影系ブログは数あれど、これだけの質と量を保っているブログは少ないのでは、と思います。また、ブログのもう一本の柱として「男の料理」記事もあります。量や盛り付け方が、ザ・男の料理という感じです(笑)