「住勤鉄道需要」について

 

これまでの記事では、はじめに「住んでいる人」の鉄道需要について、次に「働きに来ている人」の鉄道需要について検討してきました。

 

以降、このブログにおいては、この2つを合わせた鉄道需要を、「住勤鉄道需要」と呼ぶこととします。

 

もう少し具体的に書くと、次の①~④の移動の回数(トリップ数)を合計したものが、「地域Aの住勤鉄道需要」となります。

 

<「住んでいる人」のトリップ>

  • ① 地域Aに自宅がある人が、鉄道かバスを利用してどこかに出かけるトリップ。
  • ② 地域Aに自宅がある人が、鉄道やバスを利用して自宅に帰ってくるトリップ。

 

<「働きに来ている人」のトリップ>

  • ③ 地域Aに職場がある人が、鉄道やバスを利用して(外出や帰宅のために)職場を出るトリップ。
  • ④ 地域Aに職場がある人が、鉄道やバスを利用して(出勤や帰社のために)職場に来るトリップ。

 

これまでの記事の振り返りとなりますが、この住勤鉄道需要の算出方法は、以下の通りです。

 

平日の住勤鉄道需要

平日の住勤鉄道需要(トリップ/日) =

  0.152 × 14歳以下の人口

 +0.293 × 自営業主・家族従業者の人口

 +1.073 × 正規の職員・従業員の人口

 +1.021 × 派遣社員の人口

 +0.535 × パート・アルバイトの人口

 +0.671 × 役員の人口

 +1.043 × 通学者の人口

 +0.204 × 通学者以外の非就業者・労働力状態不詳の人口

 +0.768 × 事業所の従業者数

 

休日の住勤鉄道需要

休日の住勤鉄道需要(トリップ/日)

  0.197 × 14歳以下の男子人口

 +0.125 × 14歳以下の女子人口

 +0.302 × 15~64歳の男子人口

 +0.332 × 15~64歳の女子人口

 +0.228 × 65~74歳の男子人口

 +0.201 × 65~74歳の女子人口

 +0.180 × 75歳以上の男子人口

 +0.155 × 75歳以上の女子人口

 +0.100 × 事業所の従業者数

 

平日・休日全体の住勤鉄道需要

平日・休日全体の住勤鉄道需要(トリップ/日) =

  11/16 × 平日の住勤鉄道需要

 + 5/16 × 休日の住勤鉄道需要

 

  • 朱色の斜字… 「住んでいる人」の需要を算入するための部分。計算にあたり、国勢調査の人口を代入する。
  • 青色の下線… 「働きに来ている人」の需要を算入するための部分。計算にあたり、経済センサスの従業者数を代入する。

 

 

  埼玉県周辺の住勤鉄道需要の分布

 

ここからは、五次メッシュ単位で算出した住勤鉄道需要を地図化し、どのような地域の鉄道需要が多いと推測されるのかを確認します。

 

人口密度の分布」の地図と「事業所従業者数の分布」の地図の色塗りを、重ね合わせたような分布となります。

 

埼玉県全体の住勤鉄道需要

下の地図は、平日の住勤鉄道需要の分布を示しています。

 

図 平日の住勤鉄道需要の分布

人口は、「政府統計の総合窓口(e-Stat)_統計GIS」が提供する、「2015年国勢調査」(総務省)の5次メッシュ(250mメッシュ)の統計データによる。また、従業者数は、「政府統計の総合窓口(e-Stat)_統計GIS」が提供する、「2014年経済センサス」(経済産業省)の4次メッシュ(500mメッシュ)の統計データによる。

地図は、「政府統計の総合窓口(e-Stat)_統計GIS」の「5次メッシュ(250mメッシュ)」の境界データ、および国土数値情報(国土交通省)の行政区域データ、鉄道データより作成。

面積は、各メッシュの緯度に応じた東西方向・南北方向の距離の近似値から算出。

 

また、下の地図は、平日・休日全体の住勤鉄道需要の分布を示しています。

(2024/1/9追記:計算過程に誤りが見つかったため、画像を差し替えました。)

 

 図 平日・休日全体の住勤鉄道需要

人口は、「政府統計の総合窓口(e-Stat)_統計GIS」が提供する、「2015年国勢調査」(総務省)の5次メッシュ(250mメッシュ)の統計データによる。また、従業者数は、「政府統計の総合窓口(e-Stat)_統計GIS」が提供する、「2014年経済センサス」(経済産業省)の4次メッシュ(500mメッシュ)の統計データによる。

地図は、「政府統計の総合窓口(e-Stat)_統計GIS」の「5次メッシュ(250mメッシュ)」の境界データ、および国土数値情報(国土交通省)の行政区域データ、鉄道データより作成。

面積は、各メッシュの緯度に応じた東西方向・南北方向の距離の近似値から算出。

 

人口密度や事業所従業者数の密度と同様に、県南東部の、鉄道路線沿いに、住勤鉄道需要が多い地域が分布しています。

 

そこで、県南東部を拡大して見てみることにします。

 

埼玉県南東部の住勤鉄道需要

下の地図は、平日の住勤鉄道需要の分布図のうち、埼玉県南東部を拡大したものです。

 

図 平日の住勤鉄道需要の分布(拡大図)

 

 

下の地図は、平日・休日全体の住勤鉄道需要の分布図のうち、埼玉県南東部を拡大したものです。

(2024/1/9追記:計算過程に誤りが見つかったため、画像を差し替えました。)

図 平日・休日全体の住勤鉄道需要の分布(拡大図)

 

人口密度の分布と同様、川口・戸田~浦和~大宮にかけての京浜東北線・埼京線沿線一帯の需要が最も多く、他の鉄道路線沿線の需要も多くなっています。

 

図 人口密度の分布

 

再度、人口密度の分布を確認してみても、色の濃い地域・薄い地域の分布に大きな差はなさそうです。多少、主要駅の周辺の住勤鉄道需要の濃さが、人口密度よりも際立つ程度でしょうか。