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近畿日本鉄道は2022年5月17日、2024年から「シリーズ21」以来の通勤型新形式車両を順次導入すると発表した。

【導入の背景】
近鉄の通勤型電車で最も新しい車両形式は2004年に製造が開始された7020系(1984年に製造が開始された近鉄東大阪線用の7000系の改良型)、最も新しい車両も2008年に製造された9820系(2000年に製造が開始された5820系のオールロングシート仕様)のEH30編成(c#9730以下の6両編成)であり、導入から形式単位では19年、車両単位では15年が経過しています。一方で既存の通勤型電車では昭和40年代(現在の現役最古参は昭和41年製造の「モ8459(製造時:ク8559)」)に製造された約450両が未だ現役で走っており、車両置換えが行われなかった場合には2026年にも製造60年を迎える車両が出現する計算になります。

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[画像]近鉄9820系EH30編成、2008年に同編成が製造されて以来近鉄では特急用車両の製造増備が積極的に勧められ、幹線・支線を問わず多数の経年車が使用され続けている。

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 [画像]1960年代後半〜1970年代前半に製造された近鉄車両の一例(画像は16200系「青の交響曲」)、画像の編成は1974年に製造された通勤型電車「6200系」を改造種車としている。

【「新型車両」の概要】
新型車両のデザイン計画には沿線(奈良県川西町)出身の建築デザイナー「川西康之」率いる建築事務所『イチバンセン』が参加、設計段階では内装インテリアを担当していることが川西康之氏本人のTwitterで告知されています。

[外装]
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2000年代初頭の「シリーズ21」では『アースブラウン・クリスタルホワイト』のツートンカラーである一方、今回の新型車両ではそれ以前に導入された車両の標準色(赤・白)を基調とするカラーリングへと回帰、前面は赤(マルーンレッド)を基調とするブラックフェイス、側面は従来車とは逆の配色とし側面上部と下部にグレー基調の帯が引かれています。また、JR西日本の通勤・近郊型電車で広く採用されている先頭車の「前面転落防止幌」も採用、増解結が頻繁に実施される事例の多い近鉄での安全性確保を図っている。カラーリングが『近鉄バファローズのユニフォームみたい』という声も散見されているが、デザイン検討の過程で「バファローズ」は考慮されていなかったとのこと。
(画像:公式発表を基に作成した前面・側面のイメージ、色については推定)

[内装]
座席は「L/Cカー」と同様にデュアルシートを採用した4ドア通勤車と同等の仕様であり、座席は花柄布地を使用、木目調の車内壁面化粧板と合わせて明るく優しい印象を与えています。また、各車両に2箇所づつ1人掛け座席を配置、座席横のスペースを広く取ることにより大型キャリーケースやベビーカーを利用する旅客が気兼ねなく利用できる環境を整備しています。
 
[システム]
 新型VVVF制御装置を搭載することにより消費電力を従来車比で45%抑制するとともに、ボタン式半自動対応ドアを採用することで空調系の利用効率向上を図っています。また、安全性向上を図るために車内防犯カメラ(乗務員室・運転指令室とカメラ映像を共有可能)、双方向通話型車内インターホン、前面転落防止幌を整備している。

【導入計画は・・・】
本車両の導入計画は、2024年度が4両編成10本(40両)で、初期配置線区として奈良線・京都線・橿原線・天理線で使用されたのちに順次運行範囲を拡大する予定となっている。また、現在の計画では京都市営地下鉄・阪神電気鉄道に対応する無線設備・ATSおよびATC関連設備の搭載計画はないため京都市営地下鉄には非対応、阪神電気鉄道についても近鉄の無線・ATSが使われている桜川駅〜大阪難波駅間の回送運転のみ対応と扱われる予定です。


[近鉄公式発表]