阿倍野にあるお寺「正圓寺」が2.6億で競売出品中→関係者全員逮捕

阿倍野にあるお寺「正圓寺」が2.6億で競売出品中→関係者全員逮捕

阿倍野区にある「天下茶屋の聖天さん」こと正圓寺が、驚くべきことに最低価格2.6億円で競売にかけられています。

売却基準価額は3億3295万円となっています。

売却基準価額とは

裁判所が設定する基準価格のこと。この価格から80%以上での価格でしか購入ができない。
今回の場合は2億6636万円からの入札となる

「寺が競売にかけられる」というだけでなかなかのパワーワードなのですが、探ってみるとかなり闇深い事情が見えてきています。

 

きっかけは…

個人ブログでもさらっとお伝えしていましたが、ここの違和感に気づいたのはつい最近のこと。

天下茶屋と昭和町を横切る松虫通を2・3ヶ月に一度通るのですが、以前から全然工事が進んでいない謎の鉄筋コンクリートの建物があるなと思っていました。

気になってGoogleマップで調べても、それが何なのか全く示されておらず、また新しいのに一向に窓がはめ込まれないなど不自然な光景だなと感じていました。

それについて調べてみると、どうも正圓寺というお寺が老人ホームの運営を計画していたところ、資金繰りの問題から支払いができず、建築がストップしている…ということでした。

 

競売の文

今回出ている競売の文献を読んでみると、なかなか闇深そうな事情が書かれていました。

(正圓寺総代)
1 (分筆前の)正圓寺の敷地内に老人施設を建設し、その運営を企図していたところ、資金繰りのトラブルから工事がストップし、約2年半、建築途中のまま放置されています。そのとき、目的土地甲区3番差押債権者(抹消済み)から、寺の財産を一旦他に移したほうが良い旨指南され、そのとおりにしたところ、転売されてしまいました。阿倍野警察署に詐欺事件として告訴し、受理されています。
2 寺の代表役員にかかる仮処分事件については、当方の主張が認められました。
3 一度実力行使で立ち退きを迫られましたが、警察を呼んで収めました。
4 附属建物(符号1)の北東側部分は、C及びDによって鍵を掛けられて不法占拠されています。Cには寺の仕事を手伝ってもらい、寺の役員にもなってもらっていたのですが、住む所がないとのことなので、令和2年10月から、附属建物符号1北東側を使わせていたところ、株式会社ゼフィアに寝返ったので、令和3年3月に役員を辞任させ、同年4月一杯で出ていくことになっていたのですが、原罪に至ります。

出典:「期間入札の公告 令和3年(ケ)第564号」関係人の陳述等

 

・資金繰りトラブルから2年半あのままの状態
・支払いしないので建設会社に差押えられた
・「寺社財産を(他社へ)移したほうがいい」と不動産業者にアドバイスされてその通りにしたら勝手に転売された
・阿倍野警察署に詐欺事件として受理されている(刑事事件へ発展する可能性がある)
・実力行使で立ち退きを迫られた

うーむ、なかなかこれは…

 

 

担当した執行官はこの土地について、以下のような所見を述べています。

正圓寺は、数百年の歴史を有する著名な寺院であり、敷地の地下には遺跡が埋蔵されている可能性もある。目的土地・建物につき所有権を取得したとしても、現に宗教施設としての参拝対象であり、施主・檀家・信者等の利害関係人の反発も予想されることから、利用は困難といわざるを得ない

出典:「期間入札の公告 令和3年(ケ)第564号」執行官の意見

 

追記:全員逮捕

捜査関係者によると、3人は5年前、共謀して、辻見容疑者が代表役員を務める宗教法人所有の土地を、売買の事実がないのに、西村容疑者が関係する会社に売ったように見せかける虚偽の不動産登記を行った疑いがもたれています。

寺の住職を務める辻見容疑者は、寺の敷地内に特別養護老人ホームの建設を進めていましたが資金繰りが悪くなって、建設会社に工事代金を支払えなくなっていました。

辻見容疑者は、建設会社から寺の所有地を差し押さえられることを恐れ、これを免れるため、この土地の所有権が西村容疑者に移ったように見せかけようとしたとみられます。

出典:Yahoo!ニュース/関西テレビ「【独自】寺の住職ら3人逮捕 平安時代に創建の有名寺院「天下茶屋の聖天さん」 虚偽の土地登記申請をした疑い 住職は取材に「お答えすることができません」

住職さんが刑事告発して1年半になりますが、不動産屋とまさか告発した住職さんまで逮捕されました。

容疑は「虚偽の登記申請を行い土地の登記簿を偽造した疑い」としています。

 

現地を見てみる

気になったので、現地を訪れてみました。

こちらがその問題の元であった老人ホームらしき建築物。窓がはめられていない部分が多く、長らくこの姿でストップしています。

何か字が掘ってあったのだとは思いますが、全部削り取られています。

落書き禁止の貼り札があります。名義が株式会社ゼフィアコミュニティという不動産屋さんなっています

…まぁ、その貼り紙もむなしく長らく使われていない建物には落書きがされています。

 

元々この謎の建物が老人ホームだったという点にも驚きですが、まさか運営母体のお寺まで競売にかけられていたなんて…そこにもびっくりでした。

入札は5月18日~24日まで、開札は5月30日、売却決定期日は6月10日となっています。

今回の事件でお寺はいったいどうなっていくのでしょうか。

 

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参考文献

フライデーデジタル『令和の時代にミステリー 大阪「正圓寺」の住職一家3人が蒸発!

アクセスジャーナル記者 山岡俊介の取材メモ『「正圓寺」乗っ取り事件――ついに実力行使へ

不動産競売物件情報サイト『競売物件詳細 大阪地方裁判所本庁 令和03年(ケ)第564号』株式会社日立社会情報サービス




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