今まで、いろいろな夜行列車に乗ったことがありますが、一番思い出に残っている夜行列車はと訊かれたら、寝台特急「あけぼの」と答えるでしょう。

 寝台特急「あけぼの」は、かつて上越線・信越本線・羽越本線・奥羽本線などを経由し、上野と青森を結んでいた列車です。東北本線を北上するのではなく、日本海側を北上するというのが特徴です。

 上野から秋田や青森へ行くのに重宝した夜行列車でしたが、車両の老朽化や新幹線の延伸、速達化などもあり、2014(平成26)年に廃止されています。

 今回は、寝台特急「あけぼの」の乗車記録をお届けします。ここから先は、2009年9月10日(木)~11日(金)に時計の針を戻します。本編中の列車や時刻は、2009年当時のものであり、現在の状況とは大きく異なりますのでご注意ください

 

<本編>

 大学生になって、初めて迎えるサークル旅行の行先は、北海道となりました。集合は12日(土)の朝、札幌駅集合とのこと。

 札幌駅までどうやって行こうか考えた私は、寝台特急「あけぼの」を使うことにした。これを使うと、東北新幹線の始発列車「はやて1号」利用より1時間早く青森に到着できるし、羽越本線や奥羽本線も乗りつぶすことができる。それに、寝台特急で北を目指すというのも面白いじゃない、と考えたのです。

 ということで、夜の上野駅にやってきました。東北本線のホームには、なんとJR西日本の489系が!

 

 この車両は、当時上野と金沢を結ぶ夜行急行「能登」に使用されていたのですが、その前の間合い運用として、「ホームライナー古河3号」にも使用されていたのでした。既にこの後の運用に備えて、「急行」のサイドボードも出していますね(^^;;

 黒磯行き最終列車を見送り、私は地下ホームの13番線へ。「あけぼの」は既に入線し、乗客を迎えていました。ひととおり撮影を済ませて、乗り込みます。先輩と同期が乗っているはずですが、見かけなかった…

 

 

 早速、今回利用する「ゴロンとシート」に乗り込みます。「あけぼの」は8両編成で、客車車両24系が使用されています。7号車はグレードの高いA寝台ソロ、5・6号車はB寝台ソロ、2~4号車は2段ベッドのB寝台、そして1・8号車はゴロンとシートとなっています。

 ゴロンとシートも、2~4号車と同じタイプの2段ベッドが用意されていますが、B寝台と違って枕やシーツなどの備品は一切置かれておらず、寝台の上にまさしく”ごろ寝”することになります。

 

 そのぶん、ゴロンとシートは「寝台」ではなく、「指定席」扱いとなっており、運賃と指定席特急料金だけで利用でき、割安となっています。横になることもできて、しかも料金もお得ということで、今回はゴロンとシートにしたわけです。

 「あけぼの」の時刻表はこちら。

 

 実に12時間以上の長旅です。青森へは朝一番の新幹線を使うより1時間早く到達できます。それ以上に、秋田へは4~5時間早く到達できるので、実際のところは山形県や秋田県への移動のほうがより夜行列車としての効果を発揮します。

 話を戻して、「あけぼの」は21:15、定刻で上野を発車。大勢の通勤客で混雑する列車を横目に、こちらは快走。この列車の車内だけ、ゆったりとした全く別の時間が流れています。

 大宮で1,2人乗ってきて、列車は高崎線を走行していきます。ゴロンとシートはそれなりに埋まっていましたが、マニアっぽい人が多いですね(^^;;;

 桶川で先行の普通列車を追い抜き、列車は快走。このあたりで客室の明かりは消され、車内灯も減灯されます。吹上で籠原行き普通列車を追い抜き、熊谷を通過。このあたりで22時を迎えますが、ホームには人はまばら…

 籠原で前橋行き普通列車を追い抜きます。東京から70kmほど来ていますが、普通列車には通勤客がけっこう乗っていて驚きました。遠距離通勤者も多いんやな…

 倉賀野で八高線の小川町行き最終列車を見かけ、そのあと上野行き最終列車とすれ違った後、「がっくん」とスピードを落として高崎に到着。ここからも数人が乗車しました。

 だんだん沿線の家も少なくなり、外の様子も暗くてわからなくなってきます。梯子を上って上段に上がり、ウインドブレーカーを身体にかけて横になります。

 1:10、2:30と、どこかで運転停車していました。恐らく長岡と新津?場所はわかりませんでした。同乗していた先輩の話では、「長岡で長いこと運転停車していた。夜行列車が集結していた。急行能登の乗客が極端に少なく、空気を運んでいた」そうです。

 寝ては起き、を繰り返し、はっきり目が覚めたのは4:15。あつみ温泉を過ぎたころでした。周囲も起き始めてきたので、私も起きることに。

 ここから鶴岡、余目、酒田と小刻みに停車。外も明るくなってきました。東京の街を出発して、外が真っ暗になっていく中でひと眠りして、目が覚めたらひたすら田んぼの中を走っていて、米どころ東北に来たことを感じさせてくれます。この展開が夜行列車ならではの情緒を感じさせてくれたんですよね~照れ

 象潟には5:41に到着。乗降はゼロでしたが、駅員さんはしっかりスタンバイしていました。

 秋田県に入ると、日本海を望むことができます。朝の光に照らされた日本海を見ながら、ひたすら北上していきます。左前方に飛島(?)も見ながら、街に入って羽後本荘到着。ここから先は立席特急券でB寝台を利用することができるようになっていて、青森への昼行特急も兼任します。

 再び車窓には日本海が広がります。ひたすら日本海を見ながら青森へ向けて北上していきます。この風景もまた、情緒を感じさせてくれて、「あけぼの」の魅力の一つだと思っています。

 

 

 6:24、秋田到着20分前になったところで、車掌から「おはよう放送」が入ります。新屋を抜けると雄物川を渡り、一気に町の中へ入ります。6:44、秋田到着。ホームには高校生が含め、多くの人が列車を待っています。秋田で降りる人、乗る人ともにそこそこいて、乗客が少し入れ替わります。寝台特急で"昼寝"しながら移動するのもいいなぁ照れ照れ自分もやってみたかった…

 この先はこまめに停車。単線かつ朝時間帯で本数も多いので、頻繁に行き違いも行われます。私は買っておいた朝ご飯を食べます。ブルートレインで朝食というのもいいですね♪

 車窓には田んぼが一面に広がります。山形と同じく、秋田も米どころであることを実感できます。

 

 東能代では、五能線回りの普通弘前行きが接続していました。しかし、この弘前行きも駅の待合室にも、高校生でいっぱいでした。時刻は8時前。通学にはちょうどいい時間帯ですよねニコニコ

 列車はさらに内陸へ。天気が少し怪しい…先ほどまでは晴れていたのに、気づけば路面も濡れていました。二ツ井を過ぎて、鷹ノ巣あたりに来たところで、さすがに身体がしんどくなったので寝なおすことに。気づいたら碇ヶ関あたりを走っていました。青森まで55km,もうちょいだーーー

 

 青森県に入ると、リンゴ畑と岩木山に出迎えられます。十数時間ブルートレインに揺られた後に見るこの景色、「ついに青森まできたーーー爆  笑爆  笑爆  笑」という達成感みたいな気持ちを感じました。

 ゆったりと身支度を済ませ、荷物とともに空いた下段へ移動。大鰐温泉でちょこっと人を乗せ、弘前を出て、浪岡で貨物列車と行き違い。大釈迦でも何かと行き違い、長いトンネルを抜けると徐々に家が増え、街へと入っていきます。

 新幹線の駅を大々的に建設中の新青森を通過すると、左へ大きくカーブ。車掌さんから放送が入り、9:56に定刻で青森到着。上野から12時間41分、いやー長旅だったーーーーニコニコニコニコ 

 しかし私は、余韻に浸る間もなく、わずか乗り継ぎ時間5分で函館行き特急「スーパー白鳥95号」に乗り換え。今思えばなんてハードスケジュール…(^^;;

 

<おまけ スーパー白鳥号で北海道へ>

 車両はJR北海道の789系。東京を朝一番で出発してもこの列車に乗ることはできないのですが、それでも自由席は満席…なんとか窓側の席を確保できました。

 青森を出ると、列車は右へ大きくカーブして北上し、青森車両センターの横を通る。いろんな車両がいる中に、運用を離脱した元京浜東北線の209系が”疎開”していた。明らかに場違いな感じ…(^^;;

 列車が進むにつれ、右手に下北半島、右前方には北海道が見えてくる。いよいよ北海道上陸だ、私の心も高鳴っていきます。

 

 蟹田で行き違いと乗務員交代のため運転停車。対向の「スーパー白鳥14号」もけっこう混雑していた。今日は普通の金曜日だが、観光に適した時期だからでしょうか。

 蟹田を出ると、青函トンネルについての解説放送が流れる。テーブルの裏には、青函トンネルの構造と、トンネル入口・竜飛海底駅・最深部・出口通過予定時刻が記された表が貼ってありました。JR北海道の意気込みを感じます。

 いくつかのトンネルを抜け、いよいよ青函トンネル突入!!青函トンネル内は140km/hで爆走するので、「ごーっ」という音がしています。

 10:47に竜飛海底駅を通過。緊急避難のための駅なので、乗降はできませんが、一部列車はトンネル見学ツアー客のために停車する駅です。 ここからは23kmの間、海底部を走ります。トンネル最深部は海面から240mも下、深い…

 北海道側にある吉岡海底駅も猛スピードで通過。この駅でもかつてはトンネル見学ツアーが実施されていましたが、2009年時点では既にツアーは実施されておらず、全列車通過となっていました。

 11:10、青函トンネル脱出。53850mの長いトンネルも、30分ほどで通り抜けてしまいました、速っ!!ついに北海道上陸です!!爆  笑爆  笑爆  笑

 

 トンネルを連続してくぐり、左から江差線が合流すると、木古内到着。普通江差行きが接続してましたが、乗り換えた人はどれほどいたんだろうか…

 ここで白鳥18号と行き違い。札幌発の一番列車から接続を受けている列車とあってか、乗客はけっこう乗っていました。

 木古内からはひたすら海あり山ありの線路を、海岸線沿いに進みます。渡島当別で貨物列車と、上磯の手前の矢不来(やふらい)信号場で白鳥20号と行き違いのため運転停車。特急や貨物列車が走っているため、行き違いも頻繁にありますねぇ…

 上磯を過ぎると、だんだん家や工場が増えてきます。函館の街は右前方にずっと見えていますが、なかなか近づかない…ようやくその姿が大きくなってきました。

 やがて右へ大きくカーブし、函館本線と合流して五稜郭を通過すると、終点の函館に12:05に到着。対向列車の遅れのせいか、3分遅れで到着となったが、問題ないですニコニコ

 この後は函館でちょこっと観光し、普通列車を乗り継ぎながら札幌を目指したのでした。リクエストがあれば、そちらも書きたいと思います。