2022年3月12日のダイヤ改正によるワンマン運転区間拡大に伴い、東武鉄道のボックスシート車両6050系は、運用の減少や廃車が行われている。一方、西武鉄道のボックスシート車両4000系は、1両の廃車もない。今回は、西武鉄道の鋼製車両で唯一廃車のない4000系について紹介する。

4000系車両(筆者撮影)
4000系に雰囲気が似ている2000系(筆者撮影)

西武4000系は、1988年西武秩父線20周年を節目に、秩父方面の観光輸送と秩父鉄道直通用として、4両固定編成11本が製造された。車体は鋼製で見た目は、2000系や9000系などと似ているが、4000系はテールライトが前照灯下部に設置されていて、ボディーカラーが白と赤、緑、青のライオンズカラーとなっている。ドアの数も2000系や9000系は4か所に対して、4000系は2か所である。車内はドア間がボックスシート、運転台後ろはロングシートになっている。

車内の設備は、飯能方の先頭車にはトイレと自動販売機が設置されている。車内のドアは保温制を向上させるため、半自動できる仕様となっている。

2002年からワンマン運転対応工事が行われた。工事内容は、自動放送装置の設置、自動販売機の撤去、撤去場所を車椅子スペースへ変更、車端部のロングシート変更、車内に防犯カメラの設置が行われた。走行機器は101系の廃車部品の流用をしている。制御装置は抵抗制御。台車も101系で使用されたものとなっている。パンタグラフは登場時、菱形パンタグラフを搭載していたが、2004年から2007年にかけてシングルアームパンタグラフに交換されている。

4000系のボックスシート(筆者撮影)
左側はトイレ、右側の広いスペース奥に自動販売機が設置してあった。(筆者撮影)

4000系の運用は、2020年3月まで土曜祝日のみ池袋発着の列車が運行していたが、途中駅のホームドア設置に伴い、池袋~飯能間の運行は2022年4月現在行っていない。現在は平日、土曜祝日ともに飯能~西武秩父駅間の各駅停車の運用に充てられている。土曜祝日のみ秩父鉄道直通の長瀞・三峰口行きの運用が2往復設定されている。この電車は西武鉄道の定期列車で唯一、分割併合する電車である。また、長瀞発着の電車は各駅停車だが、西武秩父を通過して御花畑駅または、横瀬駅に到着する魅力ある電車である。

西武秩父駅を通過する4000系(筆者撮影)

旅するレストラン「52席の至福」

4000系は11本製造されたうち、1本が観光電車に改造された。車体の塗装が大きく変更され、1号車は芝桜と長瀞の桜がモチーフの春に、2号車は秩父の山の緑がモチーフの夏に、3号車は秩父連山の紅葉がモチーフの秋に、4号車はあしがくぼの氷柱をモチーフの冬の塗装になっている。また、各号車、トランプの「ハート」、「クローバー」、「ダイヤ」、「スペード」の表記が施されている。車内は、1号車は座席を全て撤去した多目的車両に改造された。2号車は、オープンダイニングとなり、座席数が26席のボックスシートに変更、荷棚を撤去し柿渋和紙の天井に変更された。3号車は、キッチンカーになっており、オープンキッチンとバーカウンターが設置されえている。4号車は、オープンダイニングとなり、座席数が26席のボックスシートに変更し、天井に設置されていた荷棚を撤去し西川材の格子天井に変更された。

この列車は、土曜祝日をメインに、池袋~西武秩父または、西武新宿~西武秩父間を昼間の運行のブランチと夕方夜間運行のディナーの2コース運行している。

西武秩父駅に停車中の「52席の至福(筆者撮影)

西武4000系は、1本観光電車に改造されている以外、全編成が製造からオリジナルの状態を保ったまま、今日も運行している。なお、ダイヤ改正ごとに、運行範囲の縮小や4両を2本連結した8両編成の運行も減少している。なので、この記事を読んで4000系でのんびりと秩父方面へ観光してはどうだろうか。

現在所沢駅はホームドア設置に伴い4000系の運行はない(筆者撮影)